予感

 目を覚ました時から、何かの予感がしている。刺激的な夢を見た影響とかそういうことではなくて(そもそも私はあまり夢を見ない)、ただただ何かの予感がする。心臓がいつもより少し強く鼓動する。頭が冴え、しゃきっと起き上がることができる。トイレで用を足し、洗面所で顔を洗う。冷蔵庫からパンを出してトーストして食べる。部屋の隅で寝ている猫のマロのために餌を準備する。パジャマから着替えて、出かける用意をする。ぐるっと部屋の中を見回す。変わったところはない。マロの毛並みを優しくなぞり、小さな声で行ってきますと言う。ドアを開け、外に出る。部屋の鍵を閉め、廊下を渡り、階段を降りる。道路に出て二、三歩歩いてから、ふとアパートの方を振り返ってみる。晴れた空の下では、その灰色の建物は余計にくすんで見える。前に向き直り、朝の爽やかな空気を肌に感じながら歩く。近所の家の庭にはエニシダの花が咲いている。交差点で信号を待っているあいだ、澄んだ初夏の空を眺める。ぽつぽつと雲が浮かんでいる。信号が青に変わり、横断歩道を渡ろうとしたとき、トラックが信号を無視して突っ込んでくる。私は車に轢かれて死んだ。

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