第8話 死が行われる

何故自殺は行われ、まかり通るのか。答えは単純明快にして、実に明瞭にその上極めて明確だ。受動的に生まれ出ずるから、規定された天命に則って、受動的に死んでしまうから、生死が定められたものと考えるから。だから人は、自分の人生が、運命にならないよう、自分の固有の意思が働くように、自らの命をたつ。自分で死ぬのだから、受動的ではない。そういう理屈に基づいて、自殺する。運命を否定し、受動を否定するために。ないしは能動的であるために、自分自身を規定されないために。リアルはメルヘンチックであって然るべきかもしれないが、実際問題そうではない。だからこそ、邂逅を運命と語るのは、まったくばか臭い。ひいては、人生の事柄すべてにつけて運命論をのたまうのは、もっとひどい。神の意思だとか、仏の加護だとか。そういう類いのまやかし物におもねって、自動の意思を受動された運命だと錯覚するきらいは、嫌いだから、そして死ぬ。自殺者とは、神に反旗を翻す反逆者だ。

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