死人と話せる電話ボックス
aki
第1話 プロローグ
ある日の夜、森の
車を運転している男性が前の山道を見つめながら少女に話しかけた。
「まいご、もう一度確認しておこう」
男性が話しかけると、まいごと呼ばれた少女は男性を見ながらうなずいた。
「今から行く電話ボックスで死んだ友人と話せるのは本当だ、だが
男性が少女の方を向いて確認する。
「そして、ここからが重要だ。話せるのは1度だけ、話せる時間は10分間だけだ、10分を過ぎると電波が悪くなり
車は暗い山道を登り、だんだんと
「だから、こちらが3年後から電話で話していることを友人に説明している時間はない。電話で話すときは、3年前と同じように普段どおりに伝えたいことや思っていることを話せ。こっちの状況などはすべて
少女はうつむいて、自分のにぎりしめている手を見つめていた。男はそんな少女を見ると顔を
「話すのが難しそうなら今日でなくてもいいんだ。べつの日に
男がそう言うと、少女は首を横に振るう。
「うんうん、大丈夫。伝えたいことは決まってるから。ちゃんと話せるよ、ハカセ。」
少女は明るく話し、不安や緊張する気持ちを抑えているように見える。
「そうか…」
少女の気持ちを確認すると、ハカセと呼ばれた男はうなずき、車の運転に集中した。
男が横の窓を見ると、町の明かりが見渡せるくらいに高いところまで登ってきたのが分かる。下一面に広がった町の明かりの綺麗さに不安な気持ちが少し和らぐようにも感じていた。
しばらく外の景色を見ながら運転をしていると、前方に古びたコテージのような建物がいくつか見えてきた。
そんな古びてしまった家々が並ぶ道を車はさらに奥へと進んでいった。細い入り組んだ道を右に左にと車のハンドルを回し、何度目かの角を曲がったとき、開けた場所に出た。
そこは広場になっており、円に広がった広場には洋風の
また、広場の中央には水がなく、ひび割れが目立つ古い
そして、そんな広場の片隅に二人が目指していた電話ボックスが
暗い中で光る電話ボックスはとても不気味な存在感で、人がいない家や広場のせいでいっそ
男は広場の近くで車を止め、少女とともに車を降りた。
「準備はいいな?」
男はあらためて、隣にいる少女に尋ねた。
少女は黙ってうなずき、電話ボックスを見つめていた。空には雲一つなく、星が輝きつづけ、二人の姿を照らし出していた。
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