小説をめぐる日々の雑感

僕凸

2019/08/02(金)

 最近、小説を書きたいという思いがぼんやりと沸き起こっている。今読んでいる小説の面白さに刺激されて、自分でもそういうものが書きたくなった、という感じだ。私はあまり熱心な読書家ではない。小学生の頃には図書室の本を手当たり次第読んだ時期もあるが、中学高校と進むにつれて読む本の数は少なくなっていった。まあ人並みぐらいだろう。大学を休学していた時期に、村上春樹の長編小説のほとんど(『1Q84』以前の全作品)をまとめて読んだことがあって、そこだけ取り出してみれば結構本は読んだと言えるかもしれないが、いかんせん偏っている。村上春樹はいまや世界的な作家ではあるが、ノーベル文学賞を受賞できないのにはやはりそれだけの理由があるだろう。一流の作家ではあっても、作品にどこか文学として不充分なところがある、と選考委員は思っているのかもしれない。

 今読んでいるのは村上春樹の『海辺のカフカ』で、これは村上の長編の中では最も好きな作品だ。これで読むのは三回目になる。読み終わったらまた感想を書くかもしれない。この小説は確かに面白いし、「自分も面白いものを書きたい」という気持ちから私は出発しているわけだが、しかし今小説を書きたいと言っても、村上春樹を目標にするわけにはいかない。村上を目標にして書き上がった小説は、村上文学が乗り越えられなかったものを乗り越えることが必然的にできないからだ。自分が村上春樹を超える存在になれるとは到底思えないが、それでも文学の使命ということを考えたとき、小説について自分で一から考えようというのは、ある意味実直な態度ではないだろうか。

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