OPT.04

 役割分担をある程度決めた所で、381組は校庭へと連れていかれた。

 そこには、4両の歩兵戦闘車が置かれていた。戦車のような砲塔には、主砲のように突き出た35mm KDE機関砲、砲塔両側に2基の対戦車ミサイル発射機、戦車よりも高い車体――開成重工 89式装甲戦闘車である。

「89FVか。先生、CV-90とかBMP-3とかじゃないんですか」

 義広が愚痴を垂れる。すると彩湖先生が答えた。

「後に自由に選べるようになりますよ。しかし、1年の1学期の内は89式で習熟させる、というのが学園の方針なのです」




 4月 27日、敷島学園 第11分校 演習場。

 そこを、1両の89式装甲戦闘車が駆けていた。ディーゼルエンジンの雄叫びと共に、地面の凹凸で車体が激しく上下する。当然車内の乗員達は激しく揺さぶられ、シートベルトをしているとはいえヘルメットを被った頭をあちこちにぶつける。

 光は揺れる砲塔で赤外線スコープの画面を覗いていた。すると、稜線の向こうに熱源反応があった。ズーム操作、攻撃目標として砲手へとオーバーライドさせる。FPSが得意ということで砲手にさせられた忠実は照準点を目標へと合わせる。

「目標、H21。上級生のIFV(歩兵戦闘車)ね。弾種AP、撃てぇ!」

「発射!」

 忠実は射撃ハンドルのボタンを押し、徹甲弾を選択、ガントリガーを引く。

 35mm KDE機関砲が唸る。しかし、砲口からは何も発射されない。だが、H21歩兵戦闘車の砲塔上部に白旗が掲げられる。

 直後、車内にけたたましい警報音が鳴り響いた。光が赤外線スコープの隣に固定されたディスプレイを見ると、[ホウトウヒダン,セントウフノウ]と表示されていた。

「私と忠実がやられた。義広、下車戦闘。後は頼んだよ」

 砲塔から兵員室へと降りた光が、義広に指示を出した。義広は頷き、シートベルトを外した。そして、内壁に立て掛けて固定していたエレツユダ国製突撃銃・EWI タボールTAR-21を持ち上げた。それに連れて、他のメンバーも各々の銃を手にして立ち上がる。そして、動けなくなった89式装甲戦闘車から降りた。

 タボールTAR-21を手にした義広、使い捨て式対戦車ロケットランチャー・スベンスカエアプレーン AT-4CSを背負ってIMメタル VHS-2を手にした千佳、SL40擲弾銃の付いたリスゴー F90を手にした六郎、ジールサンティ SMAWを背負ってRSIG MCX-PCBを手にした六合華、RAC L86-LSWを手にした清定、ICオードナンス M60E6を手にした濃藍、カラムジン VS-121を背負ってクラグイェヴァツアームズ M85を手にした天狼、ベッセル&コクツェーユス G41A3を手にした信弘が89式装甲戦闘車の後ろに展開、義広の合図で89式装甲戦闘車の陰から飛び出してその辺りの窪みに入った。

「足はやられ、分隊2名、分隊長込みで戦死判定か。幸先暗いな全く」

 六郎が愚痴を垂れる。が、義広は冷静だった。

「それでも上級生のAFV(装甲戦闘車両)1両にソフトスキン(非装甲車両)2両、充分な戦果だ」

「で、どうするのだ副分隊長殿?」

 M60E6汎用機関銃を肩に掛けて座った濃藍が義広に問いかける。

「後方の森林へ後退、ゲリラ戦を仕掛ける。ラコリス ディブクから近くのユニット。我々はIFVを撃破された。ポイントET-7826から7834へ後退する。支援射撃を要請する」

 義広が無線で応援を頼む。すると、回答があった。

〔ラコリス ディブク、こちらティッカー3-3。そちらへ猛スピードで進撃する戦車隊だ。我々では手に追えん〕

「ちょっと待て。それは――」

 そこへ、けたたましいディーゼルエンジンの音が響いた。義広と六合華が窪みから顔を出すと、そこにはエレツユダ国製主戦車・メルカバMk4が隊列を組んで近付いてきていた。

「まずくね?」

「かなりね」

 2人は顔を見合わせる。そして叫んだ。

「走れぇ!」

 8人は窪みから飛び出し、森林目指して走る。しかし、敵戦車隊の内の1両のメルカバMk4が主砲同軸固定のM2HB-QCB重機関銃を発射、8人を攻撃する。


 そして、8人は「戦死」した。

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