第29話 アノ王子サマと再会②
「え……ほかにも、なにかあるんですか」
「付き合っていたんだよ、俺たち。三ヶ月ぐらいだけど」
「~~~~~~~~~~! またまた、冗談ですよね。類くん、過去にお付き合いしたことないって言っていますよ」
「それは、『女の子』と、でしょ」
「でも、この作品の作者は、そういう倒錯的思考は絶対拒否、断固拒否だって!」
「例外もある、ってこと。信じられない? ルイさんって、耳を触ってくる癖あるよね。あれ、俺が仕込んだの」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
「お互いの部屋に泊まりに行ったり、旅行に出かけたり。楽しかったよ。お互い、気が多くて、飽きっぽいから続かなかったけど」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
「あっはっは、さくらさんってほんと、嘘がつけない人だね、かわいい。ま、過去のひとときだから。詳しく聞きたいななら話すけど、気にしないで」
気にしないでって言われても……気になる!
確かに、類は同性にも好かれる。
イップクだって否定しているもののあやしいし、壮馬マネージャーも類の魅力は認めている。スタイリストのミノルだって類を狙っていた。武蔵社長は女装が趣味だし。三人で、とか言っていたの、そういう意味?
となると……類が、真冬と? まじで?
「あ、さくらだ! なにやってんだお前こんなところで、浮気? 密会か?」
面倒な人に見つかってしまった、イップクだった。
「こんにちは、イップクさん。お店を見に来たら、偶然真冬さんにお会いしたの。類くんが店長を務めているお店で、密会なんてするわけないでしょ」
「いや、お前はふわふわゆるゆるだから」
「な……!」
失礼にもほどがある。
「あおいちゃんはどうしたんだよ」
「玲とデート。ふたりきりがいいって。ついてこないでって言われた」
「腹いせにデートか」
「違います。吉祥寺店見学です」
「新宿店のほうが近いだろ」
「『メンチカツのさとう』で、ついでにお肉を買って帰るの!」
「まさか、すき焼き? だったらオレも! 昨日はおでんだったもんな、ちょうどいいな! それとも焼き肉か? ヨダレが、ふふっ」
「二日連続で、たかるとか……」
しかも、妄想ですき焼きとか、ないよ。ょうどいいって、なにが?
「お肉代ぐらい、オレが出す。えーと、類一家・玲さん・オレ、五人分、一万円ぐらい?」
ごそごそと、イップクはポケットからお財布を出した。
「そんなに高いのは買いません。しかも、お金は要りません。きょ、今日は家族ごはん。昨日、にぎやかだったし、イップクさんは冷蔵庫におでんがあるでしょ」
イップクを止めるために、ほかの人を誘いたい。けれど、真冬は無理……今の話を聞いた直後に、おうちごはんに誘うなんて度量は、さくらにはなかった。
「ちぇっ、ケチ。さくらのケチ」
ごちそうしたのに、なぜ罵倒される? もう、いや。イップク、ほんとにいや。
「俺はそろそろ函館に戻るから、残念だな。かわいいって評判の、娘さんにも会いたかった」
さ……誘ってない、よ? でも、これから吉祥寺店で働くとなると、会うことも増えるかもしれない。とほほ。
い……いや。というか、類に真実を聞くまで、信じない! 真冬の冗談かもしれないし!
「イップクさん、しばらく私、あっちのカフェにいます。類くんの手が空いたら、それとなく伝えてください。真冬さん、お店の案内をありがとうございました!」
「さくらさん、俺もコーヒーを飲むよ。もうちょっと、お話ししよ? よかったら、カフェじゃなくてホテルへ行かない?」
「大変申し訳ないのですが、今の会話の流れだと、これ以上真冬さんとはお話しできません。心が狭くてごめんなさい」
丁寧にさくらが頭を下げ、五秒。心が落ち着くのを待つ。こんな事態、類の妻なら受けて当然。だいじょうぶ。揺れない。過去は過去。
「ぶはははhっはhっはっはあははあっはあはあああ! さくらさんって、からかうとほんとにおもしろいね!」
笑い声に、驚いて顔を上げると真冬はおなかをおさえて笑っていた。
「え……、まさか今の……」
「もちろんうっそ。嘘嘘嘘! じょーだんだよ。ルイさんの癖とか、見ればすぐに分かるし、モデルをしていたんだし、いろいろと個人情報もオープンでしょ」
「オレも、類の秘密を知っているぜ! 右太ももの内側に、ほくろがみっつ並んでいるってこと。オリオン座の三つ星みたいで、案外かわいくて萌えた~♡」
「は? い、イップクさんまで? そんなことを? それ、私のだいすきなほくろなんだけど!」
「写真集に載っていただけだ。実際には、目にしていない」
あ……、なんだ写真集かっ……て、おい、イップクよ! 『北澤ルイ』写真集を見たのか、買ったのか!
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