夢の扉のそのサキは

ネオン

第1話

最近、僕は毎日『扉』の夢を見る。

この夢を初めて見たのは数ヶ月前。

最初は2、3日同じ夢を見て、不思議な事もあるんだなぁ、と思った。

けどそれが、1週間、2週間も続くと、少し気味が悪いと思い始めた。

普通、夢の内容は全く覚えていないのに、はっきりと覚えている事もあいまって不気味さを増している。

しかし、1ヶ月過ぎる頃には、今日の扉はどこに繋がってるのかな、と楽しみに思い始めていた。

夢に出て来る扉はどれを開けるかによって繋がっている場所が変わるんだ。

だいたい自分の全く知らない場所に出る。

現実には存在しないであろう場所や実際に行ったら呼吸できなくて死んでしまう宇宙や海の中など様々だ。

これがとっても面白い。

また、日によって扉の数は変わる。

1つしかない時もあれば5つある時もある。

今までで一番数が多かったのは10個。

流石に多すぎだろ、と思った。

でも、たくさん扉があっても一回の夢で行けるのはひとつだけ、だからいつもとっても悩む。

悩む原因はもう1つ、全部の色や柄が違うからだ。

単色の扉や派手な柄の扉、透けている扉もあった。


夢の内容ははっきり覚えているのに、この夢から覚める時の事だけははっきりと覚えていない。

夢から覚める時の事を思い出そうとすると急に記憶にもやがかかってしまう。

忘れてはいけない事のような気がするのに。

忘れてしまったらこの夢から出られなくなるような気がするのに。

あともう1つ絶対に守らなければいけない事があるような気もするんだ。

思い出さなきゃならないとは思うけど何故か全く思い出せない。


そしてこの前、今までになかったことが起きた。

いつも扉がある場所に1つも扉がなかったのだ。

扉がないその場所はただの真っ白な空間。

終わりなく永遠に続く空間。

その時は、久しぶりに夢に恐怖を感じた。

なぜか、この夢から出られないような気がしたからだ。

いつもどこに行ったとしてもちゃんと現実に戻ってきているのに…

その日は、目覚められたことに心底ホッとした。

けれど、この虚無な空間に行ってしまった事はこの一度きりだった。

そのおかげで僕はこの事をだんだん忘れてしまっていった。

この異変は絶対に忘れてはいけなかったのに…

忘れなかったらこんな事は起きなかったかもしれない…

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