第80話 君たちの故郷へ。

ある木曜日の事。私はふーりん先生と待ち合わせをしたコンビニの駐車場に3代目パジェロで現れていた。 なんでも、今日はふーりん先生が取材場所として「ある場所」に行くこととなり、私もその場所によかったら一緒に行きましょうよ!・・・という提案を受け、その場所にずっと行ってみたかった私は二つ返事でその提案を快諾した次第だ。


まだまだ温かいボンネットに手を付きながらコーヒーを啜っていると、何やら遠くから見覚えのある車の音が聞こえてきた。軽快なV6サウンドを響かせ、銀色のボディを朝日に光らせ、コンパクトでグラマラスなヤマネコはこちらの隣に並んできた。 そう、ふーみん先生のコレクションの一台だ。



「ふうふう・・・・お、お待たせしました・・・・・今朝、ちょっと寝坊しちゃって」


息が切れそうな様子でふーりん先生は運転席から降りてきた。


「いえいえ!全然大丈夫ですよ。私も割と着いて間もなかったですから。 今朝ご飯取ってたところです」


「なるほど・・・・そうでしたか! それならよかったです。・・・・すいません、私も朝ご飯買ってきていいですか・・・? 私も家出る時ご飯抜いちゃってたので。」


「どうぞどうぞ! 全然行ってきちゃって大丈夫です!お待ちしてますから」


そう言うと、ふーりん先生はありがとうございます!ちょっと行ってきますね!と言って小走りでコンビニの中へ入っていった。


ふーりん先生が買い物をしている最中、私はふーりん先生が乗りつけた愛猫をまじまじと見ていた。


今日ふーりん先生が乗りつけてきたのは、三菱パジェロの3代目モデルショートにあった特別仕様車、「パリダカレプリカ」だった。


このパリダカレプリカは、2000年1月27日から3月までの期間限定で受注生産されていた特別仕様車で、ベースの各ショートのグレードに対して、篠塚建次郎選手が2000年のパリダカで戦ったマシンと同じカラーリングが施され、専用マッドフラップと篠塚建次郎さんの直筆サイン色紙が付いた、正にパリダカパジェロファンには堪らないモデルになっていた。


期間限定という事もあって、その販売台数は一説によると数台レベルではないか?という噂さえあるほどだ。


ちなみにふーりん先生の所有するパリダカレプリカは、どうやら3.5リッターV6ガソリンのスーパーエクシードグレードがベースの様であったが、フロントシートはレカロのセミバケットシートに変えられている他、サスペンションとマフラーは激レアなラリーアート(三菱のモータースポーツ部門)製のものが装着されているという、中々にスポーティーな仕上がりになっていた。


私が代車で借りている3代目ロングと並んだこの景色・・・・・これはたまらんなあ・・・と思いながら見入っていると、ふーりん先生が戻ってきていたようだった。


「ふふっ。わたしの秘蔵のコレクション、いいでしょ? 久しぶりに動かしたいと思ってこれにしちゃいました!」


「堪らなすぎますって!! ほんっとうにカッコいいですもんこれ・・・・」


私も思わず興奮気味に答えてしまった。


ここからまたパジェロ談義が広がっていき・・・かけていたが、今日は取材という名目もあり、そろそろ出なきゃいけない時間になっていたので、私たちはぼちぼち出発することにした。


銀の二台の三代目パジェロは、二台仲良く隊列を組んで、高速道路へと駆けだした。


続く。

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