第32話 AK45Magnam on the street

というわけで、私はふうみん先生からAK45マグナムを預かり、仮ナンバーを取り付け、車検を取得して公道を走れるようにすべく、群馬の志熊自動車まで向かっていた。




関越道の起点がある練馬インターまでは当然街中を走り抜けていたのだが、派手な色とスタイリングのおかげもあってか、非常に視線を感じた。歩道から、対向車から、並走している車から、あらゆる人からびっくりしたような視線を浴びていて、ある意味下手なスーパーカーより注目度満点であったのだ。こうして人々から視線を感じながら走るのは結構気分は悪くない・・・・・のだけれど、それ以上に気になっていることが一つ。


「ク・・・・・クラッチが重たくて左足が死にそう・・・・・。」


そう、強化タイプのクラッチが入っているせいなのかクラッチペダルが非常に重たく、左足がパンパンになりかかっていたのだ。流石に都内の市街地道路ともなると発進と停止をする頻度が高く、その都度踏まなければならないので、中々キツかった。我が愛車のパジェロエボもここまでではなかったので、結構びっくりしたところではあったが、ここで弱っていては先が思いやられる。なんとか根気で市街地を乗り切った。そして目白通りを走り抜け、遂に関越道へとアクセスした。 流れに乗るためにギアを3速にキープしたまま、少しグッとアクセルを踏み込むと2500回転辺りからブーストが立ち上がり、そのままワープしそうな勢いで強烈な加速が始まった。


「おおおお~~!!!?」


窓の外に流れる景色があっという間に溶けてゆき、スピードメーターの針はグングン昇っていった。ある程度その実力の片鱗を確認した後、すぐにギアをトップギアに入れそのまま巡行することにした。


と、ここまで書くと気難し気なように聞こえるかもしれないが、重いクラッチと若干絞られ気味の後方視界を除けば普通の2代目パジェロと何ら変わらないので、基本的にはパジェロの良さの一つである見切りの良さも健在だし、程よい高さのアイポイントもそのままで乗りやすい車なのであった。ロングベースなので、ホイールベースも長く安定感が高くて高速を長距離ひた走っていても疲れずにいられた。 改めてどんな仕様でも、パジェロは人に優しくて運転しやすい車だなあ・・・・と感心しきりであった。


そのままノンストップで埼玉を越え、群馬に入り、そのまま赤城インターまでノンストップで走り抜けてしまった。高速を降りた後、流石に一回は休憩を挟もうということで大胡のグリーンフラワー牧場に立ち寄り、名物のソフトクリームを食べて、缶コーヒーを飲んでリフレッシュする。濃厚な味わいのソフトクリームをついばみながら、ブラックのコーヒーを喉に流し込む・・・・この上なくリラックスできるひと時であった。その後はすぐに山道を下り、志熊自動車へ直で向かった。案の定、志熊社長は乗りつけるや否やAK45マグナムをじっと凝視していた。


「はあ~・・・・・こりゃ凄いね・・・・・。まさか日本にもあったとは。 最近知り合ったばかりなんだっけ?その人とは」


「ええまあ・・・・そんな感じです。彼女も私に負けず劣らずのパジェロ好きの子なんです。多分部品もなくて大変だとは思いますが、多分その子も今後ともお世話になると思うので、どうか、是非よろしくお願いします。」


私は軽く頭を下げた。


「おう、任しとけ。リっちゃんの知り合いとあっちゃ断れんな。車も状態は悪くなさそうだし、一週間もあれば仕上がると思う。できたら、また連絡入れるよ。」


「はい!お願いします!」


そういうと志熊社長はサムズアップしながらウインクして応えてみせた。


その後は志熊社長に最寄り駅まで送ってもらい、そのまま電車に乗って家路に着いた。


ふうみん先生のAK45マグナムの公道復帰、私も自分の事のようにドキドキしていた。


続く。


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