第26話 『紅のくノ一』といつメン合流

そのまま、美都の4CとユリのシビックRは連なって大黒パーキングエリアへと入っていった。


駐車スペースに二台並んで止まった後、私と美都は4Cから降り立ったのだが、そこで


「「なんで凛子(ちゃん)があの車の横に乗ってるのよ!!」」


と少しムッとしたような口調で迫られた。なので、私は何故美都の4Cの横に乗ることになったのか、訳を話した。バッテリー上がりを起こした時に救援したこと、その後誘われて美都の家に行って、「お礼」として4Cの横に乗ることになったこと・・・・・・とか。


とりあえず、二人は納得したようだった。


「なるほどねえ・・・そんなことがあったんだ・・・・。どんな接点があって、その4C乗ってたんだろう?って思ってたからさ。」


「そうよ。なんでアンタが『紅のくノ一』の横に乗ってたんだか気になってたんだから。 まさかアンタのとこの事務所のタレントの子が正体だとは思わなかったわ。」



「紅のくノ一・・・・?何それ?」


ユリから聞いた話によると、どうやら首都高の走り屋界隈ではかなり美都の4Cは有名らしく、忍者のように素早くコーナーを駆け抜け、あっという間にぶっちぎられて視界から消えてしまうさまと、赤いボディカラー、そして美都が女性だったことからその通り名が付いたらしい。・・・・・・ユリの時といい、どうして首都高の走り屋はこうも通り名をつけたがるのか・・・・・・。


「・・・・・・ってそんなことはどうでもいいのよ。その美都って子、なんで凛子の後ろにずっと隠れてんのよ。ツラ拝ませなさいよ!」


すると美都は凛子の後ろからチラと顔を出しながら、


「・・・・・このクルクルヘヤー・・・・恐い・・・・。篠塚さん・・・・・この人チンピラ?」


「誰がチンピラじゃゴルァ!?い い か ら ツ ラ 見 せ ろ っ て 言 っ て ん の。」


こ、こええ・・・・・。流石の私も軽く引きかけるレベルの権幕でユリは美都を掴みかかりにいかんとばかりに私の後ろにいる美都に迫った。


美都の方に振り替えると物凄いビクビクしながら怯えていたので、とりあえず私は助け船を出すことにした。


「ま、まあユリ・・・・。そこまで興奮しなくても・・・・。 とりあえず、お互い自己紹介してみたらいいんじゃないかしら!ね!?」



「・・・・・・それもそうね。名乗りもせずズケズケいった私も悪かったわ。私は的場ユリ、さっきのシビック乗りよ。よろしくね。」


「あ、私はこのチンピラシビック乗りと凛子ちゃんの友達の白洲莉緒よ。同じ事務所のタレントで車好き同士、仲良くしましょ。よろしくね。」


「あ・・・・・えと・・・・・私は二階堂・・・・美都・・・・・よ、よろしく。」


軽く自己紹介をして握手を交わし、とりあえずは和やかな雰囲気になった。


その後は、互いに車の見せ合いっこをして、軽い雑談を交えた。 いつも通りたどたどしい口調の美都であったが、やはり同じ車好き同士、馬があったようで、莉緒ともユリとも、会話を楽しんでいたようだった。美都ちゃんも馴染んでくれてよかった。


その後美都がトイレに行くため席を外した後、ユリがそっと耳打ちしてきた。


「・・・・あの子、テレビでチラッと見たことがあったくらいだけど本当にあんなたどたどしい口調なのね・・・・・。キャラづくりなのかと思ってた。」


「そうなのよね~。・・・・どういうわけか走ってるときはよくしゃべるんだけどね~。それもユリに負けないくらいベラベラと。」


「ええ!?そうなの?? あんな静かな子が? ハンドルを握ると変わるってやつなのかな・・・・。」


「多分ねえ・・・・。そういえば、確かに運転上手かったわ。切れ味抜群で車の特性を上手く引き出してる感じだったわ。立ち上がりがちょっと粗削りだったけど。」


「なんかどことなくユリの走り方に似てる感じかしら。」


「ああ~確かに。思いきりいいけど詰めが甘いとこなんかそうね。」


「ふ~~ん・・・・そうなんか・・・・・。」


ユリは少し複雑気な表情をしていた。暫く待つと、美都がトイレから戻ってきた。



「・・・・お待たせ。」


「おお~、美都ちゃんお帰りなさい! さて、美都ちゃん戻ったし今日はお開き・・・・」


と、私が言いかけたその時、


「・・・・ねえ。チンピラシビックの人。少し勝負してみない?」


と美都は言った。


「「「え・・・・・・?えええ??」」」


4人の間が一瞬凍り付いた。



続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る