第25話 夜景ドライブのその先には・・・
「・・・じゃあ、乗って。」
美都は鍵を操作し、4Cの鍵をアンロックした。
こうして近くで4Cを見てみると、全長はかなりコンパクトなのに横幅はワイド(なんと幅はパジェロエボとほぼ同じ)でメリハリのあるグラマラスなボディラインに思わず見入ってしまった。小さいながらも風格満点でコンパクトスーパーカーと言っていい感じであった。
ガレージスペースへと降り立った私は美都の4Cの助手席側に寄り、ドアノブを引き、その助手席へ足を滑り込ませた。車高が低く、サイドシル(乗り口)が太いのでかなり屈みながら、脚を広げて乗り込んだのだが、その時「グギっっ」と私の腰が悲鳴を上げた。
「ヴっっっ!?」
思わず変な声が出てしまった。ここまで車高がべったり低い車に乗るのは久しぶりだったので腰をやってしまったのだ。もうちょっと若い頃ならこれくらい捻っても大丈夫だったはずなのに・・・・なんてことを考えながら痛みに悶える私を見かねた美都はこちらに駆け寄ってきた。
「あ・・・えと・・・・・大丈夫・・・・?」
「だ、大丈夫よ。あハハハハ。」
痛みに歪む顔でどうにかニカっと笑って見せ、とりあえずは助手席に収まった。
そう?・・・と美都は首を傾げながら反応すると、そのまま運転席に乗り込んだ。
4Cのインテリアはエレガントなエクステリアとは裏腹に、レーシングカーのようなタイト感強めな空間だった。サイドシルはカーボン素材の素地がむき出しだし、華やかな装飾なんてものは皆無。計器類や操作系は全てドライバー側に向けられていて、パジェロとは違った路線でとても機能的でスパルタンな印象を持った。
「じゃあ、エンジンかけるね。」
そういうと美都はキーシリンダーに鍵を差し込み、捻り、4Cの心臓に火を入れた。
静かなセルモーターの音とは裏腹に、背後からエンジンの獰猛なサウンドが響き渡っていた。あまり遮音材が入ってないのか、音も振動もかなりダイレクトに入ってきていた。
ボボボボと1750ccとは思えない野太い排気音が響く中、美都はシフトスイッチを操作し、ガレージから4Cを解き放った。
下道を暫く走っていたのだが、中々に乗り心地は堅くて締まっていてインテリアの印象を裏切らない、スパルタンな乗り心地であった。アイポイント(目線)も凄く低いし、まるでゴーカートか何かに乗ってるかのような感じだった。最近だとユリのシビックRの横にも乗ったが、乗用車ベースでかなり快適性も担保された上で強烈な速さを持っていたシビックRとは違って、こちらはストイックで、いい意味でメカメカしくて荒々しい、そんな印象であった。
暫くすると首都高の料金所が見えてきた。すると美都は手元のスイッチ類を操作しながらこう呟いた。「ちょーっと飛ばすけどごめんね~。」
・・・・なんか前のユリの時と同じ流れじゃねえかこれ・・・・・。
料金所のゲートを潜ると、一気にシフトダウンし回転を上げ、一気に加速した・・・・!!!
ウオオオオーーーーーーンボフっウオオオオオンと激しいレーシングカーのようなサウンドを響かせながら4Cは強烈な加速Gと共に一気に車速を上げていった。
「うあああああああ!!!??」
と私が絶叫しているさなか、美都はテンション高めに車の解説をし始めた。
「ノーマルの4Cは240馬力なんだけどね、この車はコンピューターとマフラーやってあって335馬力出てるの! 車重も1100キロくらいしかないし、脚も完璧にやってあるし、格上だろうがなんだろうが喰えるよ!!」
得意げに言いながら、4Cを自由自在に操る美都は普段の天然オーラなんてものは何処かに置いてきてしまっていたようだった。狭く、血管のように張り巡らされた首都高のコーナー群を鋭く速く、4Cは駆け抜けた。あらゆる車をすり抜け、かわし、只々ハイペースで攻め込んでいた。
正直夜景なんて楽しんでる余裕あんのか?って感じだが、そのままドライブは続いた。
しばらくして、なんか見覚えのある車に追いついた。白いボディに巨大なウイング・・・・。
「なんだ?こいつも走り屋っぽい感じか? なんでもいいけど、とっとと抜くか。」
美都がつぶやくとそのままその白い車を抜きにかかった・・・・がその車もペースを上げて抜ききれない。
「っくそおお・・・・なんだこいつ。中々速いじゃん。」
そう言いつつも、次のコーナーで白い車に並びかかった。すると中には・・・・やはりいた。車内のユリと莉緒と二人ともに目が合った。
「「「あっ」」」
・・・・・・そのまま4CとユリのFK8シビックタイプRは連なって駆け抜けていった。
続く。
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