第1115話 魔力溜まりへの対処法
「理由まではわからないんだ。なんのために魔力溜まりを発生させようとしているのか。でも、確実に狙いは魔力溜まりのために、南側に魔物の死骸を置いていたらしいんだ」
破壊神の言いう事だから、全てを信じていいのかは疑問ではあるけど……多分これに関しては間違っていないはず。
というより、それ以外の理由で魔物の死骸をわざわざ持って来る理由がなさそうだ。
「クォンツァイタが必要な理由は、その性質からだね。あの鉱石は魔力を蓄積させるから……つまり、魔力溜まりが発生する前に、空気中にある魔力をクォンツァイタに吸収させられないかと思って。魔物が押し寄せて、今も戦っている状況……魔法だって使うし、もう手遅れなのかもしれないけど」
できれば間に合って欲しい……というか、どれだけの魔力が滞留して、どうやって発生するのかはわからないけど、今はまだ大丈夫なはず。
発生していたらフィリーナがわからないはずないし、シュットラウルさん達にも報告が行くはずだからね。
「クォンツァイタに魔力を……か。だが、王都から運ばれてき物は既に魔力が蓄積された物だったはず」
「それについても、考えがあります。まぁ、どちらもできればという希望込みなんですけど……フィリーナとカイツさんに協力してもらいます」
「フィリーナ殿達に?」
結界を維持するための物だし、王都で魔力を蓄積させた物を順次輸送していたから、センテに来ているクォンツァイタは魔力をいっぱいまで蓄積されている物ばかり。
ただその魔力も、フィリーナ達の協力でどうにかできれば……と思っている。
さすがに、フィリーナ達に相談する時間がなかったので、シュットラウルさんに先に話す事になっているけど。
「蓄積された魔力は、使ってやればなくなるはずです。そして、クォンツァイタは再び周囲の魔力を吸収して蓄積を始める……」
アルネ達が改良したから、多少変わったと言ってもそこはクォンツァイタである事は変わらない。
鉱石として鉱山に埋まっている時から、周囲の魔力を蓄積している事もあるんだから、空気中の魔力を吸収して蓄積させられる事ができるはずだ。
「つまり、そうしてクォンツァイタに空気中の魔力を吸わせる事で、魔力溜まり発生を防ぐという事か」
「はい。向こうの狙いはわかりませんが、魔力溜まりが発生するとマギアプソプションって魔物が集まってきたりと、不都合が多いですから。防ぐに越した事はありません」
他にも、魔法使用が不安定になったりとかだね。
エルサが酔ったような状態になったりは……あれは、俺の魔力が濃かったせいだったか。
まぁ、作物の成長が早いという利点もあるけど、農場にする場所じゃないし、魔物が集まって来る可能性を考えたら街のすぐ近くで魔力溜まりは発生させない方がいい。
「ふむ……すぐに、フィリーナ殿達を呼ぶように。それから……」
「畏まりました……」
執事さんに指示を出してくれるシュットラウルさん。
俺がフィリーナ達に協力をと言ったからだろう……話が早くて助かる。
「お待たせしました……こちら、保管されていたクォンツァイタです」
「ご苦労。――リク殿?」
「はい、ありがとうございます」
少し経って、フィリーナ達を呼ぶ手配をしたんだろう、執事さんがクォンツァイタを持って戻って来る。
これは、先にシュットラウルさんが指示をしていたからだね。
持って来てもらったクォンツァイタを、お礼を言いながら受け取る。
黄色くなっているから、間違いなく満タンまで魔力が蓄積されている物だ。
さらにそこから、モニカさんから聞いたよりも詳しい周辺の状況を聞きながら、フィリーナ達の到着を待つ。
その間に……。
「やっぱり、東側がちょっと不味いですね」
「うむ。門が壊れているのが原因だが……いや、エルサ様がいなければ、もっと不味い状況になっていただろうから、仕方ないのだがな」
「そうですね……」
状況的には、門が壊れている東側はいつ魔物が入り込んでもおかしくなくなっているようだ。
マックスさん達が頑張ってくれているとはいえ、数で負けているのでじりじりと押され始めているとか。
シュットラウルさんも、壊した張本人を責めるつもりはないんだろうけど、頭にくっ付いているエルサがそっぽを向いた気配がした。
「それじゃ、南にいる人達を東側の応援に向かわせられませんか?」
「だがそれだと、南側が手薄になってしまう。魔物の数は東も南もほぼ同じ……すぐにでもなだれ込まれてしまうぞ」
「門を閉めれば、少しは耐えられると思います。あと、俺が南に向かいますから」
「むぅ……リク殿が行ってくれるのなら、なんとかなるか」
「それに、どうせクォンツァイタを持って行くにしても、魔物がいれば邪魔になるますから。まずは 南側の魔物を殲滅します」
クォンツァイタに魔力を吸わせるにしても、人が触れない状態で置いておかないといけないはず。
割れやすい鉱石のため、周囲で戦闘を続けていたら壊れるのは必然……それなら、さっさと魔物を殲滅させてからの方がいいだろうと思う。
「でもそうすると、魔力溜まりが発生してしまわないかしら? 相当な数の魔物だし、殲滅するにしても魔法を使ったら……」
「魔物殲滅して、魔力が霧散する前に迅速にクォンツァイタを配置したら、と思っているんだ。賭けではあるけど……こうするしかないから」
魔物がいる状況では置けないからね。
それに、ヘルサルで魔力溜まりが発生した状況を鑑みると、一定以上の魔力があってもすぐに発生するわけじゃない……と思う。
少なくとも、魔物の死骸から霧散する魔力が空気中に溶けて混ざり合って、そこからしばらく滞留して……という時間があるはずだから。
その猶予で、クォンツァイタで魔力を吸わせればなんとか発生させずに済むか、発生してもすぐに解消できるくらいの魔力になるはず。
……なるといいなぁ。
「そこは仕方ないのだろうな。魔力溜まりが発生しない事を願うしかないか。わかった。それでは、南側の戦力の一部を東に当てよう。残った者は南門まで退避させ、門を閉めさせる。これでいいな?」
「お願いします。門が閉まったら、俺が出て魔物と戦いますから……東に向かう人は多めでもいいと思います。さすがに全員移動というわけにはいきませんけど」
全ての魔物が俺に注目してくれればいいんだけど、そうとは限らないからね。
門に向かう魔物がいないわけじゃないから、そっちはそっちで破られないように防衛してもらわなきゃいけない。
「まぁ、門の内側から破られないようにしばらく耐えるくらいなら、問題ないだろう。割り振りは任せてもらう」
「はい」
これまで長い事防衛して、指揮をしてくれているシュットラウルさんなら、人の割り振りを間違える事はないと思う。
持ち堪えてくれていた実績もあるわけだからね。
「お待たせ、リクが起きたって!?」
「フィリーナ」
あれこれシュットラウルさんと話しているうちに、フィリーナが到着。
飛び込んできたフィリーナの後ろには、疲れた様子のカイツさんもいる。
俺にとっては数日振りだけど、フィリーナ達にとっては数十日ぶり……という久々の再会を喜ぶ暇もなく、すぐにクォンツァイタの事や魔力溜まりの話をした――。
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