第1093話 ひらめくリク
「うふふふ、そんな方法があると思っているの? 私は破壊神、リクは人間……神相手にどうこうできると思ってはいけないわ……よっ!」
「っ! エルサ!」
「り、了解したのだわ!」
気を取り直したのかなんなのか、俺達を嘲笑った破壊神は、再び手の平をかざす。
エルサに声をかけ、再び同じように結界と曲面結界で防ぐ体制……。
「ほら、ほら……いつまで持ち堪えるかしら? リクの魔力量が異常でも、無限じゃないわ。あら、これはリクが私の攻撃をしのぐために行った言葉と似ているわね?」
「っ! 無限って言葉だけだろ! くっ!」
衝撃、衝撃、閃光、衝撃、閃光、閃光、衝撃……他に攻撃手段があるのかどうかはわからないけど、衝撃と閃光を混ぜて連発する破壊神に対し、反射鏡と曲面結界を駆使して耐える。
破壊神の言う通り、大量の魔力量があるからと言っても無限じゃない。
アレンジした結界は、通常よりも少し魔力を使うけど誤差の範囲……とはいえ、ずっとこのまま何度も連続して発動していれば、いつか魔力が尽きてしまう。
幸いにも、衝撃の連発は閃光よりも間が空く事と、衝撃から閃光、閃光から衝撃に移る際にほんの少しだけ時間が空くため、なんとか対処できている。
というか、向こうには限界ってないのか?
神だから、なんてふざけた理由かもしれないけど、ある意味納得でもあるか。
「リ、リク、このままじゃ……」
「わかってる、エルサ!」
衝撃の時だけとはいえ、エルサも結界を張って魔力を使っている……体は小さいままだから、多少は余裕があるとしてもそれがいつまで保つか……。
どうにかする方法を考えないと……でも、俺が何をしても神である破壊神に傷を負わせる事はできそうに……待てよ?
さっき、破壊神は神の体は人間とは違うって言っていた。
まぁそれは納得するんだけど……そういえばアルセイス様はユノと違って、神として顕現していた。
それなのに、俺を試した際に思わぬ反撃で痛がっていたっけ。
あの反撃自体、俺がやろうとしてやった事じゃないけど……あの時のって……。
「そういえば……っとと!」
「リク! 油断してたらいけないのだわ!」
「わかってる! けど……」
アルセイス様と会った時の事を思い出していると、衝撃に対する曲面結界が遅れてエルサに叱られた。
危ない危ない……。
なんとか間に合ったけど、一度防げなかったら弾き飛ばされて、さらに追い打ちで閃光なり衝撃なりで魔法を使う猶予がなくなるだろうから、失敗はできない。
確実に、自分の中にあるはずの魔力がじわじわと減っている感覚と、何か有効な反撃手段がないかの考えに集中できず、焦燥感ばかりが募る。
「いつまで防ぎ続けられるか楽しみね! ほら、ほら、ほらぁ!」
連発し続けてハイなっているのか、調子づいている様子の破壊神。
全く攻撃の手を緩める気配がないので、隙を見つける事もできそうにない……。
「アルセイス様の時とは違うけど、結局身動きが取れない状況……って、もしかして?」
ふと頭の中に、アルセイス様と会った時の事、試練を課された時の事が浮かんだ。
状況的には違うけど、あの時確か体の奥底にある塊のようなもの……魔力だったらしいけど、それを絞り出して解放した事で、反撃したようになったんだったっけ。
曲面結界や反射鏡を使い続けてばかりで、動けない状況になって繋がったのかもしれない。
アルセイス様の時は、よくわからない重圧のようなものが圧し掛かっていたけど……。
「……このままだと、ジリ貧だ。ほんの少しでも可能性があるのなら、試してみるしかないか」
「リク、どうしたのだわ!?」
低い可能性ながら、そちらに賭けようと考えて呟く俺に、結界を割られる先から連続使用しているエルサが叫ぶ。
叫ばなくても聞こえるんだけど、結界を張るのに必死だからついつい大きな声を出したんだろう。
「エルサ、もしかしたら駄目かもしれないけど……やってみたい事があるんだ」
「やってみたい事……だわ?」
「失敗したら、きっともう後がない。それでも……」
「何を思いついたのか知らないけどだわ。でも、このままだったら結局後がないのは変わらないのだわ。魔力が切れたらその時点で終わりなのだわ!」
「そうだね……うん」
一切攻撃が止まない破壊神に対し、遅れる事がないよう魔法を使いながらエルサと話す。
上手くいく保証は一切ない。
それどころか、考えそのものが間違っている可能性すらあるけど……エルサは、認めてくれるようだ。
確かに、思いついた事をやっても駄目な可能性が高くても、何もやらなければそもそもがジリ貧状態。
連続で攻撃して来ている破壊神の方は、一切魔力が衰える様子はないので、こちらから何か行動を起こさなければ状況は変わらない。
というか、破壊神の使っている力って魔力なんだろうか……? 話の中で、破壊神の力とか創造神の力とか言っていたから、神力なのかもしれない。
待てよ……? 神力はともかくとして、確か神は世界に対しての干渉力を使うとかなんとか言っていたはず……。
という事は、今のこの状況も、破壊神の行動も全て干渉力を使っている……?
「リク、結局どうするのだわ!?」
「ごめんごめん。うん、もしかしたらいけるかもしれない」
「本当なのだわ?」
「やってみないとわからないのは、変わらないけどね……」
決断をしない俺に、エルサからの叫び声……余裕がなさそうだから、そろそろ魔力切れの限界も近いのかもしれない。
今考えた事が正しければ、さっきまでよりも上手くいく可能性が高い気がする。
干渉力、それは神がこの世界に直接何かをする時に必要な力。
アルセイス様が姿を現した事も、俺への試練も、話をした事ですら干渉力を使うようだった。
力そのものは、時間で回復するような事を言っていたけど、一日や二日でどうにかなるもんじゃない。
だったら、やろうとしている事も含めて、時間をかければ……今の状況を変えれば可能性が見えてくるはず!
エルサや俺の魔力が、どれだけ保つかにもよるけどね。
「エルサ、目いっぱいの魔力で結界を張ってくれ。複数でも、分厚くでもどっちでもいい。ただ一度だけ、一度だけ衝撃に耐えてくれればいいから」
「わ、わかったのだわ。耐えられる保証はないし、もう魔力も残り少ないけどやってみるのだわ。リクに賭けるのだわ」
「頼む。俺が合図を出したら、やってくれ」
「了解したのだわ」
「……何を相談しているのか知らないけど、無駄な事ね。まぁ、人間の悪あがきが見れて楽しいけど」
破壊神に聞かれないよう、声を潜めてエルサに伝える。
たった一度でいい、衝撃を防いでくれれば俺が動く猶予ができる……。
連続でひたすら閃光と衝撃を織り交ぜながら攻撃を続ける破壊神は、こちらが何か話しているかはともかく、楽しそうだ。
やっぱり、攻撃している時はこちらの考えが読めない様子……悪あがきを見るのが楽しいとは、随分と悪役らしい事を。
いやまぁ、破壊神というだけあって、人間から見れば悪人……いや悪神なんだろうけど。
とにかく、やる事を決めて少しの間だけ耐える。
魔法を使いながらも、自分の体内にある魔力に意識を向けて練る、練る、固めてさらに練る……。
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