第1092話 衝撃の対処法も編み出す
「……光の性質を利用したってわけね」
今は何もしていないため、俺の考えを読んだらしい破壊神。
少し悔しそうに見えて、ちょっとだけ優越感……これで、一つだけだけど向こうの攻撃に対処できるようになった。
まぁ、こちらの攻撃が一切通用しないのだから、一つ防いだところでではあるんだけどね。
「ちょっと試させてもらおうかしら……?」
「っ! 反射鏡!」
再び、無造作にこちらへと指先を向ける破壊神に、光が放たれるよりも早く頭の中で鳴り響く警告。
すぐさま先程と同じ魔法……結界をアレンジした反射鏡を発動。
「一度は曲げられても、続けてはどうかしら?」
「それは少ししんどいけど、なんとかなる!」
破壊神から再び放たれた閃光は、先程よりも俺から離れた場所を通過する……さっきよりも、曲げる事できた。
さらに、閃光を連続で放つ破壊神に対し、こちらも連続で反射鏡を発動。
一度閃光を曲げたら、その時点で反射鏡の魔法が光の高熱でほぼ破壊されるから、その都度発動して対処するしかない……どうやら、分厚くした内部もちょっと工夫して光を曲げやすくしているため、強度が結界よりも低いみたいだ。
まぁ、思い付きで全てが上手くいくわけでもなし、閃光を対処できるようになっただけでも儲けものと考えておこう。
「どわっ! だわっ! ちょ、危ないのだわ!」
「さすがに、細かくどの方向に曲げるかなんて考えている余裕がないから、俺の後ろにいた方がいいよエルサ。っと!」
俺には当たらないけど、あちこちに曲がる閃光が近くを通過したエルサが驚きの声を上げて、こちらに抗議。
どういう形にしたらどの方向に曲がるか、なんて今計算している余裕はないし、そもそもそこまで得意な分野じゃない。
さすがにそちらにまで気を配っている余裕はないから、後ろに隠れているよう促す。
その間にも、続く閃光の連発に対処するため、反射鏡を連続で展開。
……俺がさっき避けていた時よりも、連射の速度が速い気がする。
もしかすると、手加減していたのかもしれない。
「わ、わかったのだわ。だわぁ! ちょっと尻尾が焦げたのだわぁ!」
危機感からか、いつもと違って素早く飛んで移動するエルサ……途中で曲がった閃光がかすったらしく、尻尾の先が焦げたようだ。
エルサのモフモフを焦がすなんて、許せない……! と思っても、こちらから反撃をする余裕はないんだけどね。
「……本当に、無意味のようね」
「少なくとも、これでもう俺には当たらないようになった」
「そうみたいね。はぁ、イメージを具現化する魔法体系と、異常な魔力量が組み合わさると本当に面倒だわ」
しばらく閃光を連射していた破壊神が、唐突に手を降ろして攻撃の手を緩める。
だからといって、何も手がない状況でこちらからといけないのが悔しいところだけど。
溜め息を吐きつつ、やれやれと首を振りながら話す破壊神……結界もそうだけど、反射鏡もそれなりに魔力を使うからね。
多分俺以外だと、使えても一度か二度が精一杯だと思う。
「ほんと、創造神……ユノは面倒な仕組みを創ったものだわ。人間がその力を越えた魔法を操れるようにするなんて。それでも、リクがいなければ大して問題ではなかったのかもしれないけど……」
ドラゴンとの契約、それでエルサと同じくイメージする事で魔法を使えるようになる……というのは、ドラゴンを創った創造神であるユノが作った仕組み。
確かに、魔力は本来契約したドラゴンから供与されるものらしいけど、それ以上の魔力がある俺と組み合わさる事で、想定以上の効果になるのかもしれない。
「でも、それならそれでこちらもやり方を変えればいい事よ。こんな風にね」
再び、無造作に手をこちらに向ける破壊神だけど、今度は手を平をかざすようにしている。
指先からは閃光、手の平からは……結界を壊した衝撃か!
「そっちも、一応対策は練っているよ! エルサは奥に結界を、こちらは……曲面結界!」
「わ、わかったのだわ! 結界!」
「無駄だってわからないのかしら? ほら……!」
軽々と結界を破壊した衝撃だけど、だからといって絶対に止められないわけじゃない……はず!
そう思って、エルサに声をかけて後ろから結界を張ってもらいつつ、俺は自分の近くに反射鏡とはまた違うアレンジした結界を張った。
そして、ほくそ笑む破壊神の手から衝撃が放たれる……。
「……なんとか、止められた……かな?」
「ど、どうして……」
「こ、こちらには影響がなかったのだわ。結界は確かに壊れたのにだわ」
エルサの張った結界は、先程と同じようにあっさりとガラスのような音を立てて割れたけど、俺の張った結界はかろうじて残っている。
結界に守られた俺達の周辺は、衝撃の余波で地面がえぐられていたりしているけど、俺や後ろのエルサには何も影響はない。
手をこちらに向けたままの破壊神は、閃光が逸らされた時と同じような……いや、それ以上に驚いている様子で、エルサも声からして驚きを隠せないようだった。
「今のだって、無限に力が加えられるわけじゃない。当然何かに当たれば威力は減衰するし、受け流す事だってできるはずだからね」
破壊神の衝撃はおそらく、圧縮した空気をとてつもない勢いで射出する事で、とんでもない威力を出すもの……に近い気がする。
一か八かではあったけど、なんとか思った通りに行ったみたいだ。
空気のようなものなら、どれだけ勢いがあっても何かにぶつかれば勢いは弱まるし、そもそも元が不定形……エルサの結界で多少威力を弱められた後、俺が張ったアレンジの曲面結界で受け流してようやく、といった感じだ。
曲面結界は反射鏡と違い、ハウス化に使ったドーム状の結界とほぼ同じで、俺達の前方を覆うように展開、さらに一番衝撃を受ける中心部を厚くするようイメージした。
強化された結界にぶち当たった衝撃は、曲面によって分散されて威力を著しく落としたから、結界を壊す事なく周囲に破壊をもたらしながら消滅。
最初、見せるためだけに破壊神が結界を壊した時から、考えていた事だ……何かで斬りつけたり、重い物理的な何かがというわけではない、というのは結界が破壊された感覚と、壁に穴を開けた様子でわかたからね。
閃光の時と同じように、半分以上賭けの部分はあったけどどうしようもなく圧倒的な破壊神が相手だから、むしろそれなりに可能性がありそうなだけマシってものだ。
……ほんと、立て続けに上手くいって良かった……なんて、こっそり安心して息を漏らしたりもしたけど。
「成る程……考えたわね。本当に厄介だわ。でもむしろ、絶対にここで破壊するべきだと思わせてくれるわね」
「破壊はされたくないんだけど……」
「ど、どうするのだわリク?」
「どうするも何も、なんとかしないといけないだけだよエルサ。……なんとかする方法も、まだわかんないけど」
結局、破壊神の攻撃を何とか凌ぐ方法ができただけで、どうこうする方策なんてない。
逃げるにしても、次元を切り離して疑似的な神の御所となっているこの場所から、元の洞窟に戻る方法なんてわかんないし。
破壊神にはこちらの攻撃が一切通用せず、もしかしたら向こうは他にも何かやってくるかもしれない。
どう考えても、俺達に分はない状況だ――。
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