第824話 クォンツァイタと魔物の核
ルジナウムであった事を、改めてアルネに説明。
俺が触って壊れる前、発見した時にモニカさんが魔力を込めてみた際の状況や、魔物が集まりそうな素振りが観測された事なども伝える。
状況的には、魔物が集まっていた中心に埋まっており、ブハギムノングから魔力が伝わっていくような繋がりも発見したから、あのクォンツァイタが魔物を集めていたのは間違いなさそうだけど、考えながら呟くアルネからは、その事を確信している様子が見て取れた。
「クォンツァイタには、不純物が混じっている事があるのは知っているだろう?」
「うん……まぁ、大体魔物の核な事が多いらしいけど」
「そうだ。どうしてクォンツァイタの内部に魔物の核があるのかまではわからないが……クォンツァイタに吸収されて蓄積された魔力は、内部に不純物……つまり魔物の核があった場合、そちらへ流れるようなんだ。これは、運ばれてきたクォンツァイタの中に核がある物で確認した」
「魔物の核へ魔力が……という事は?」
「自然に、もしくは誰かが放出した魔力を吸収し、それらが魔物の核へと流れて復元されてしまう。さすがに、王城でそんな実験をするわけにはいかないので、完全に復元はしていないが……核が脈動するところまでは確認した。フィリーナにも見てもらって、魔力の流れや蓄積されている位置を調べたが、核へと魔力が向かっているのは間違いないだろう」
おもむろにクォンツァイタに含まれる事の多い不純物、魔物の核について話し始めるアルネ。
何故クォンツァイタに核が内包されているか、という理由はわからないながらも、蓄積された魔力が核へと流れ込んで復元へと向かうのはほぼ間違いないらしい。
そう言えば、フィリーナにクォンツァイタを渡した時にも、俺の魔力を吸収して核が持っていたっていいうのも言っていたっけ。
「それじゃ、フィリーナが先に持って帰って来たクォンツァイタに、俺の魔力が入っていた……というのは……」
「あぁ、あれか。フィリーナから受け取って調べてみたが、間違いなくリクの魔力と思われるものが核へ蓄積されていたな。そして、魔力は十分に与えられていたにも関わらず、核は壊れていた。おそらくだが、今回と同じようリクからの魔力が多過ぎたんだろう。魔物が復元するとはいえ、短期間に大量の魔力を流し込まれてはな……」
「そうなんだね。予想はしていたけど、やっぱりそうだったんだ。じゃあ、あのクォンツァイタが色を持っていなかったのは……?」
「核へと魔力が流れていたから、クォンツァイタそのものは魔力を蓄積していなかったからだろう。不純物が入っている物を調べたが、吸収した魔力が核へと流れるため、クォンツァイタそのものが魔力を蓄積する事はなかった。色がかわらないから、わかりやすかったな。……それと、魔物の核の方はおそらくエクスブロジオンオーガと思われる物だった。まぁ、核そのものを調べる事が少ないから、おそらくとしか言えないが」
クォンツァイタには魔力を吸収して蓄積させる性質があり、その中には魔物の核が入っている事が多い。
そして、魔物の核はクォンツァイタが吸収した魔力を使って復元して……って、それじゃ鉱山に出る魔物って……。
「それなら、鉱山で出る魔物のほとんどがクォンツァイタから復元された……と考える事もできるね。まぁ、さすがに全部じゃないだろうけど」
「そうだな。採掘場所には人が出入りするから、魔力には困らない。魔力のない生き物など存在しないからな。そして、自然の魔力はもっと効率よく魔力を吸収できる……」
「採掘する事で、露出したクォンツァイタが魔力を吸収し……って事かな。それと、やっぱりソフィーの言う通り改めてクォンツァイタを捨ててある場所で割れているのが多かったのは」
「フィリーナがリクから聞いたと言っていたな。おそらく、エクスブロジオンオーガの核を集めるためだろう。クォンツァイタから取り出す際に割ってな。単純に復元するならそのまま魔力を注いで吸収させればいいが、特殊な効果を持たせるためるためだな。復元させる設備にはガラスが使われていたと聞くが、それも魔力が漏れなくするための措置だろう。クォンツァイタの内部にあるのと似た状況にするためだと思う」
やっぱり、捨て場にあったはずのクォンツァイタが割れていたのは、モリーツさんやイオスがやった事だったか……クォンツァイタの内部から、エクスブロジオンオーガの核を取り出すためだろう。
だから、あの鉱山内にあった施設には大量に核があって、多くのエクスブロジオンオーガを復元せられた。
研究をするにも丁度いい魔物だったし、核を集めるにも楽ができたので、ブハギムノングで行われたという事かぁ……。
「だがアルネ、それがルジナウムの魔物を集めるというのと、何か関係があるのか? クォンツァイタは魔物を復元させるための、一種の仕組みのようにしか聞こえなかったが……しかし、あちらは魔物が外から集結していた。復元とは違うぞ?」
「クォンツァイタが魔力を蓄積させる性質を持ったのは、魔物の核が内部にあるからなのか、その性質があるから魔物が核を埋め込んだのか……どちらが先なのかはわからないが、魔物は魔力を好むのは知っているだろう? 特に行動にわかりやすく出るのが、マギアプソプションだったか。ヘルサルに集まっていたとフィリーナから聞いたが」
「魔物は魔力のある物に集まる、というのは聞いた事ある……というより、魔物に関する事を学んだ際には必ず聞かされる内容だな。マギアプソプションは、魔力溜まりに集まる特殊な魔物だが……」
魔物は魔力を求める……かどうかはともかく、好んで魔力がある方へと向かう性質を持っているらしい。
それに関しては、冒険者になる前にマックスさんから教えてもらったし、冒険者になる際の試験にも出た事だ。
その習性があるため、多くの魔力を持つ人間に襲い掛かかる事が多い、という認識だね。
まぁ、目に入った生き物を無差別に襲う魔物もいるから、魔力がすべてではないんだろうけど……でも、人間がそれなりに多くの魔力を保有しているうえ、さらに集団で生活しているからこそ魔物にとっても狙いやすい。
魔力に関してはエルフの方が多いけど、人間の方が数が多くて広い範囲で生活をしているから、遭遇しやすくて襲いやすいし襲われやすい。
魔物の方から探して向かって来る場合もあるからね。
広い範囲で生活していたら、向こうだって見つけやすいだろう。
「特殊な例はともかく、魔物は魔力を感知したらそちらへ向かう事が多い、というのが通説だ。つまり……」
クォンツァイタを使って魔物を集結させた仕組みについて、アルネが仮説を立てて説明を始めた。
それによると、クォンツァイタを今回アルネが研究したように、蓄積した魔力を放出するように施しておいて、地中に埋めて隠す。
アルネの研究と違うのは、その魔力は遠く広く号出されるようになっていたのではないかという事で、魔法の補助をするためとかではなく、ひたすらに蓄積された魔力をそのまま全方位に放出する事もできるだろうという。
そして、範囲が広すぎるため、俺が使っている探知魔法のように薄く広がるため、近くの魔物はともかく遠くにいる魔物では弱い魔物は感知できないから、強力な魔物が集まったのだろうという推測だった――。
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