第795話 Sランク冒険者は特別な存在
「まぁ、この国では既にリク君の影響力は計り知れない事になっているから、既にSランクと変わらないようなものだけどね。でも、他国に行ったりリク君の事を知らない場所へ行けば、その影響力はほぼなくなると言ってもいいわ。けどね、Sランクは違うのよ……」
「Sランクというだけで、他に何かあるんですか?」
「冒険者ギルドがやっている、冒険者へのランク付け……その最高ランクなの。場所によっては、ギルドマスターより権限を持つ事だってあるわ。そして、Sランクになった者はその身分や能力が確かなものだと、照明されるの。具体的には、国家間の移動の際にも冒険者カードを見せて、Sランクだと証明するだけで特に調べられる事もなく、ほぼ顔パスに近い状態で入国できるの」
入国審査とか、細かい検査もなく、Sランクというだけでほぼ制限がなくなると考えても良さそうだね。
まぁ、今のところ他国に行ったりする予定はないし、やっぱりSランクになる必要はなさそうだ。
「冒険者ギルドにおいて、これまでSランクになったのは数人程度しかいないわ。そして、実力の方も保証されている……Sランク一人で、どれだけ不利な状況でも戦況を覆す実力を持つ者、とされているわね。もちろん、国家間の戦争での話よ」
「リク様なら、相応しいですね」
「え……さすがに、俺一人で戦況を覆すなんて、無理じゃないかな? そもそも戦争なんてした事すらないし……」
「……キマイラやキュクロップスを数多く倒しておいて、よくそんな事が言えるわね……。正確な数まではわからなかったようだけど、ルジナウムでの戦いは報告されている限り、この国にいる兵士や冒険者全てを投入して、なんとかなるかどうか……だったのよ? それをほとんど一人で壊滅させるんだから、Sランク相応の能力がある事は、確定しているわ」
エルサにも協力してもらったし、終盤はユノも助けてくれたうえ、遠距離からの援護もあったからなぁ……本当にあの時俺一人だったら、やられてしまっていたと思う。
……エルサ曰く、魔力量がさらに増えたとかなんとか言っていたけど、それに関しては言わない方が良さそうだ……おかげで、魔法を使う際の魔力調整が、さらに難しくてまだ慣れていないし。
「ともかく、リク君のSランク昇格に関しては、現在検討している段階ね。まぁ、私だけで決める事じゃないし、時間がかかってしまうだろうけど。Sランクに昇格させるかどうかは、さすがに一国の冒険者ギルドだけでは決められないわ。これから、各地の冒険者ギルドと情報共有、功績の確認、人としての性格や思想などを調べてから……となるわね」
「思想とかも調べられるんですか?」
「まぁね。Sランクになったからって、やたらと好戦的だったりして色んな所で喧嘩や戦争を吹っ掛けられても困るでしょ? とは言っても、こうして私と話したり、リク君と接した事のある人から何気なく聞き出す、というくらいだけど」
性格診断みたいなのが行われるのかと、一瞬考えたけどそうじゃないみたいだ。
まぁ、思想に関しては、冒険者という枠にとらわれない権限や影響力を持つのだと考えたら、調べるのも必要だと思う。
国家間を楽に移動できる事からも、あっちの国で貴族や王族に喧嘩を吹っ掛けて、別の国でまた諍いを起こして……なんて問題のある行動をされても、冒険者ギルドの立場が悪くなってしまうからね。
とは言っても、Aランクになるまでにふるいにかけられるから、その辺りの問題ある性格や好戦的過ぎたりする人は少なくなるらしいけど。
「リク君は、功績だけは十分なんだけど、代わりに冒険者としての実績というか……依頼をこなした数や活動期間が短い分、こちら側の確認にかかる時間が増える見込みね。まぁ、直接接していればある程度分かるにしても、あった事もない人からしたら、そういった記録でしか判断できないのだから、仕方ないわね」
「まぁ、実際冒険者になって、まだ一年も経っていませんからね……そういった記録が少ないのはわかります。地道に依頼をこなす日々……という活動もしていませんし」
「そういう事。だから、Sランクになるかどうかはまだまだ先と考えておいて。ま、ほぼ確実に昇格すると私は見ているけど」
うーん……俺がSランクに相応しいのか、わりと疑問ではあるんだけど。
ともかく、既に検討されている事らしいから、おとなしく結果を待てばいいだけだろう。
実績というか、依頼をこなした数だとかは自分でも少ないのはわかっているから、判断に時間がかかるのもわかるからね……むしろ、今回の話はなかった事に……なんて言われても不思議じゃない。
そんな事を悠長に考えている俺の横では、モニカさん達は俺がもうSランクになったものだと考えて、その時には盛大に宴会でも開こうか……なんて話していたりする。
「あぁそうそう。モニカとソフィーだったわね。そっちの二人も、Bランクの昇格が近いわ」
「え、私達もですか?」
「自分の実力が不足している、とは思わないが……急ですね」
「リク君と同じパーティで、サポートをしているとの判断からよ。Sランクになろうかという冒険者の近くにいる人物が、Cランクだと肩身が狭い思いをするかもってね。まぁ、ソフィーの方は確認したけど、これまで堅実に依頼をこなしていたようだから問題なく。モニカの方は、リクと同じ時期に冒険者になって、経験や実績はちょっと足りないけど……ルジナウムでの活動が評価されているわね」
「ルジナウム……ノイッシュさんかしら?」
「多分そうだね。ユノやエアラハールさんもだけど、調査から魔物が来た際にも、ずっと協力していたから信頼されたんだと思うよ」
急に、マティルデさんからモニカさんやソフィーの、Bランク昇格の話をされる。
フィネさんも話していたけど、二人共頑張っているし、エアラハールさんの訓練も含めて、めきめき力を付けている……さらに、一緒に活動するうえで色々と助けてもらっているから、二人がBランクになるのは妥当だと思うし、相応しいとも思う。
「この二人は、私から見てもBランク相応の能力と人柄を持っていると思います」
「Bランクのフィネから見ても、そう見えるのね。とは言っても、今すぐBランクというわけじゃないの。リク君の近くにいるからと、それだけでランク昇格するというのも他の冒険者からすると納得いかないだろうし……二人共、納得しないでしょ?」
「それは……もちろんです。リクさんの力だけでなく、自分の実力でランク昇格できなければ、喜べません」
「モニカの言う通りです。リクとのパーティである恩恵というのは、確かにあると思いますが……相応しくないのに昇格しても、素直に喜べないどころか、公平な評価とは思えませんから」
「そうよね。そう言う二人だからこそ、Bランク相応の人柄ではあると思うわ。実績としては申し分ないから、もう少し依頼をこなしていけば、自動的にBランクになると思っていていいわよ。もちろん、それはリク君と同じパーティだからではなく、貴女達が正当に評価されたと思って問題ないわ。統括ギルドマスターである、私が保証するわよ」
「「はい!」」
自分達が納得できる昇格をするために、モニカさんとソフィーが揃って力強く頷いた――。
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