第722話 ランク上昇の申請とは
俺がキョトンとしていると、さらに呆れたような諦めたような雰囲気になって、皆から失礼な事を言われているような気がする。
というか、よく考えたらこの場に俺以外の男がいないのか……やっぱり、こういう時に男一人って肩身が狭い気がする。
比べられているコルネリウスとかだと、男ではあるけどなんとなくさらにややこしくなる気がするので、できれば別の人がいて欲しい……エフライムとかが良さそうだなぁ。
微妙に居心地が悪いというか、この話を続けてもいけない気がするので、話を変えた方がいいかもしれない。
「えーっと……そのランク上昇の申請って何? 俺、よくわからないうちにランクが上がったけど、自分から申請なんてしていないはず……」
「「「「あー……」」」」
話を逸らそうと、聞いた覚えのないランク上昇の申請の事を聞いたら、妙に納得した声を漏らされた……しかも今度はフィネさんも一緒にだ。
あれ? 俺が知らないと納得するのって、どうしてだろう?
「……まぁ、リクさんが知らないのも無理はないかしら? 最初は今の私達と変わらない、Cランクだったけど、あれよあれよといううちに今ではAランクだものね」
「そもそも、最初からCランクというのもない事だがな。まぁ、自分から申請をしなくとも、リク程の活躍をしてその実力を多くの人に見せつけたら、冒険者ギルドが放っておくわけがないからな。申請の必要がないというのは、羨ましいと思うべきなのかなんなのか……」
「冒険者じゃない私でも知っているんだけど……まぁ、リクならそうよね。知らなくても問題はない……のは順調にランクが上がっている事が証明しているわ」
「リク様、その……ランク上昇の申請というのは、自分からギルドに申請をして精査してもらい、今のランクから上のランクへ上がれるかどうかを確認する事です。順調に依頼をこなしていれば、Cランクまではほとんど自動で上がるのですけど、その後は自分で申請してランクを上げるのが通常なんです」
「そうなんですか? じゃあ、モニカさん達も申請したらランクが上がる可能性があるんですね」
今まで俺はランクの申請なんてしなくとも、ギルドから直接言われてランクが上がっていた。
まぁ、皆が言っている事を考えると、誰の目から見てもはっきりとした成果を挙げているから、申請するまでもなくランクが上がったという事なんだろう。
さすがに、ヘルサルからエルフの集落、さらに王城での戦闘や、最高勲章をもらっているから自分には不相応だとかは思わないけど……皆からも散々言われてきたからね。
という事は、モニカさん達も今Cランクだから、もしかするとBランクに上がる事もできる可能性があるのかぁ
。
ランクが上がると、受けられる依頼の幅が広がったり、ちゃんと冒険者として活動している証にもなるから、歓迎だ。
大体が、高ランクの魔物討伐や、高ランクの依頼を一緒にやっている気がするけど、それは俺やユノのせいなのが大きいかな。
「ランク上昇の申請をする事で、今までやってきた依頼の成功率や内容を、もう一度ギルドが確認する事になります。もちろん、その実力が足るのかどうかも見られます。そして、もし問題が発見されたら当然申請は却下されますし、場合によっては冒険者の資格剥奪に繋がったりもします」
「まぁ、余程の問題行動をしていると思われなければ、剥奪まではされないわよね。それこそ、犯罪行為とかをしていれば、でしょうね」
「そうだな。厳しく精査されるから、ランクが上である程その人物の人格も認められた事になる。つまりは、信頼できる人間だとの証明だな」
「だから、ランクが高い人物程人格者が多くて、低いランクで低迷している人物程ならず者のような人が増える……とは聞いた事があるわ」
「へぇ~、そうなんだ。だったら、モニカさんもソフィーも信頼できる人物だし、問題なくBランクに上がれそうだよね?」
「……そ、そうね」
ランク判定には厳しい審査があるからこそ、高ランクだから信頼できる人物だという証を冒険者ギルドが出す、というような事か。
もちろん、戦闘や知識なんかの実力が伴っているかどうか、というもあるんだろうけど。
それなら、モニカさんやソフィーは人格的には問題ないし、信頼できる人物で、知識に関しては俺よりあるうえに戦闘はエアラハールさんから訓練されている。
二人ならきっとBランクに上がるのも間違いなしだろうなぁ……と思って話していたら、モニカさんが目を逸らしたけど、どうしたんだろう?
なんとなく、頬が赤いような……? あと、ソフィーやフィリーナはクスクス笑っている。
俺、また何か変な事言ったかなぁ? 二人は信頼できる人達だし、そう思ったから正直に言っただけなんだけど……あれ、でもそういえば……。
「エアラハールさんって、元Aランクの冒険者だけど……人格が認められたって事になるよね?まぁ、悪い人じゃないのはわかっているし、戦闘に関する実力は間違いないけど」
「トラブルを起こしたりは……していたわね。ユノちゃんが止めてくれけど。でもまぁ、あの人は犯罪と言える事をしていないから、問題とは見られなかったんじゃないかしら?」
「そもそも、現役時代はどうだったのか、私達ではわからんからな。若い頃はまともだったのかもしれん」
「……そういうものなんだ」
うーん……女性の体を無差別にしかも許可なく触るのは、日本だとそれこそ痴漢だセクハラだ、と言われて犯罪スレスレどころか、完全に犯罪行為なんだけど……この世界かもしくは国にはそういった法律はないのかもしれない。
……そのうち、姉さん辺りが作りそうではあるけど。
お世話になっているけど、実際にトラブルを起こしている場面にも遭遇しているし、もし法律ができて捕まっても……庇ったりできそうにないね。
多分、エアラハールさんの事だから、その辺りは捕まらないように上手くやる気もするけど――。
ランク上昇の申請の話をしながら、とりあえずはエアラハールさんからの訓練をもう少しやって、自信を持てたら申請をしてみるという事になった。
その後は少しだけ談笑して、そろそろ建物の方へ様子を見に行こうかと思っていた頃、マルクスさんが報告に来てくれた。
「リク様、皆様、先程ヴェンツェル様から聞いたのですが……」
マルクスさんからの報告は、さっきまで話していた兵士に紛れ込んでいる人がいるんじゃないかという事。
さすがに、面と向かってお前は施設の関係者か? とは聞けないので、怪しくない他の兵士さん達からなんとなく聞いたりと、身辺調査に近い状態から始めているらしい。
もしかすると、他の兵士さんにも紛れ込んでいる可能性もあるため、ヴェンツェルさんとマルクスさんで信頼できる人を選別してから調べているので、少しだけ時間がかかりそうだとの事だ。
ヴェンツェルさんが、こういう時に情報を扱うハーロルトさんがいたら……なんていう事を呟いていたらしいけど、ハーロルトさんも王城で仕事が忙しいだろうし、アメリさんの事もあるから仕方がないよね――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます