第577話 情報交換開始
「それで、リクさん達の方はどうなの? 調査は順調に……進んでるんでしょうけど、ちゃんと食べてるの?」
「まぁ、食事をすっぽかそうとすると、エルサがうるさいからね。ちゃんと食べてるよ」
「食べてるのだわー。こっちは問題ないのだわー……一部を除いて、だわ」
「一部? 何かあったの?」
「えーと……」
モニカさんやユノと合流し、お昼には少し早いけど落ち着いて話をという事で、ルジナウムの街にあるカフェレストランのようなお店に入る。
個室というわけじゃないし、聞かれるとまずい話をするわけじゃないので、奥まった席ではあるけど他にもお客さんがちらほらと見える場所で、テーブルを皆で囲むようにして座った。
ちなみに、モニカさん達があらかじめ北門を入った所にある広場で待っていたのは、俺達が今日この街へ連絡のために来るという事を伝えていたからだ。
俺やソフィーの事だから、朝のうちに移動して来ると予想していたらしい。
冒険者ギルドに聞いたり、宿を訪ねたりしようと思っていたんだけど、おかげで手間が省けたね。
テーブルについてから、適当に飲み物を頼みつつ話し始めたけど……モニカさん、なんだかしばらく離れてた親戚の人みたいな事を聞くなぁ。
それだけ、モニカさんがいない俺達の事が心配だったのかもしれないけど。
戦闘とか調査に関しては心配されていないのは……今更か。
食事に関しては、俺もソフィーも、それこそエアラハールさんも、多分何かに集中したり調査をする事を優先し過ぎると疎かにしそうだけど、エルサがいるからね。
腹時計によって、お腹が空くと騒ぎ出すから、食事を忘れたりって言うのはできそうにない。
テーブルに置かれた飲み物を、ユノが傾けて飲みながらモニカさんへの返答をするエルサ。
エルサが引っかかる言い方をしたのは、もしかしなくても俺が酔っ払った事なんだろうけど……。
仕方なく、モニカさんに先日やってしまった事を報告。
俺は記憶にない部分が多いから、ほとんどソフィーとエルサが話していたけど……隠し事ってできないね、ほんと……隠しててもいつかはバレてただろうし。
「成る程……リクさんとお酒は相性が悪いのね。……それにしても、ソフィーに迫るだなんて……私だったら良かったのに……」
「うん? どうかした、モニカさん?」
「はっ! いえ、なんでもないわよ? まぁ、話を聞く限り、リクさんはしばらくお酒を控えた方が良さそうね。酔ったお客さんとかには慣れているけれど、さすがに暴れるリクさんを止めるのは、父さんでも難しそうだし……」
「うん……そうだね。飲まないように気を付けるよ」
何かをボソボソと呟くモニカさんだったけど、よく聞こえなかったので聞き返したら、首を振って誤魔化された。
なんだったんだろう……?
それはともかく、エルサやソフィーとも約束したけど、俺はお酒を飲まない方がいいだろうね……マックスさんでも止められないというのは、大袈裟だとは思うけども。
ともあれ、雑談のような話を終え、お互いに調査を行った事の報告をし合う。
まずは、俺達の方から……。
「その、エクスブロジオンオーガ? 厄介なのね……爆発する条件がはっきりせず、でも爆発はできるだけさせたくない……と」
「爆発するだけなら問題ないんだけどね……場所が鉱山の中だから」
「注意していれば怪我をする程ではないが、結構な衝撃だからな。一体や二体爆発したところで、すぐに悪い事は起きないだろうが……それが続けばどこかで崩落が起こる可能性もある。実際、私達が見つけた穴は崩落した結果、できた穴のようだったしな」
「そうなのね……実際に見ていないからわからないけど、鉱山が崩落すると危険、というのは簡単に想像ができるわ。それに、採掘ができなくなったら国中で影響が出るでしょうしね」
ブハギムノングの鉱山は、アテトリア王国の要所と言えるくらい、国内で一番の鉱山らしい。
当然そんな場所で採掘ができなくなった場合、色んな所で悪い影響が出てしまうだろう。
それこそ、冒険者だけでなく、兵士さん達が使う武具にも鉱山で採掘された金属が使われているだろうしね。
今はまだ、採掘ができなくなってそんなに時間が経っていないようだし、まだエクスブロジオンオーガが確認されていない区画では、注意しながらも採掘が行われているから、表立って問題にはなっていないけど。
調査次第なところはあるんだろうけど、長引いたり、鉱山内全てにエクスブロジオンオーガが出没するようになったりしたら、冒険者ギルドではなく国そのものが動かなければいけない事態になってしまうだろう。
帝国に対して警戒を強めている状況で、これ以上姉さんの考える事を増やしたくないからね……頑張らないと。
……忙しくなり過ぎたら、俺でストレス解消されそうだし。
「今度は私とユノちゃんの方ね……えっと……」
俺達の鉱山調査の話を簡単に終え、モニカさん達の話を始める。
ユノがいるから、魔物と戦う事になっても大丈夫だとは思うけど、もしもの時に結界を使ったりして身を守る方法がモニカさん達にはない。
……そう考えると、エルサを置いて行って結界を使える俺とばらけさせた方がいいんだろうけど……そうしたらそうしたで、移動の問題が出て来るからなぁ……難しい。
鉱山の方では、エクスブロジオンオーガを対処する必要があるため、結界は絶対に必要だしね。
「キマイラ……っていうと、あの……?」
「他にキマイラがいるかは知らないけど、リクさんが以前にも戦った事のあるキマイラよ。ユノちゃんが簡単に倒していたけど……」
「頑張ったの!」
「前も、ユノは遊ぶようにしてキマイラを倒してたからね。それにしても、そんな魔物までいたんだ……」
モニカさん達の方は事前に聞いていた通り、森の端へと魔物が集結するように移動しているのが確認できたそうだ。
調査している途中、移動中のキマイラに遭遇して、ユノが倒したらしいけど……Aランクと言われる魔物もやっぱりいたみたいだ。
以前にもキマイラが街道に出るという事で、討伐の依頼を受けて倒した事がある。
その時、ユノは遊ぶようにしながら軽々とキマイラを斬りして倒していたから、こちらはあまり大きな問題ではないんだろう。
「キマイラじゃと!? あんな魔物も倒しておったのか……現役時代、あの魔物から受けた古傷が今も痛むというのに……」
「……エアラハールさん、押さえてるのは右腕ですけど、そんな傷一切見当たりませんが?」
「気持ちの問題じゃよ。実際に戦って怪我をさせられたのは確かじゃ」
キマイラがいる事に驚いた様子のエアラハールさんは、傷跡すらない右腕を押さえて顔をしかめる。
元Aランクの冒険者だけあって、キマイラとは戦った事があるみたいだけど、大きな怪我はなくて古傷というのも半分冗談のようだ。
「それにしてもキマイラをかのう……通常は、数人のAランクか、Bランクの有望な冒険者が集団で囲んで、ようやく一体を倒すような魔物のはずじゃが、それを一人で倒すとはのう……嬢ちゃん、ワシを軽々と殴り飛ばすだけあって、只者ではないんじゃの……?」
「そうなの、えっへん!」
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