第574話 爆発の条件はわからず



 さすがに往復してからすぐ鉱山に入るのは、時間が足りないだろうけど、街中にいる鉱夫さん達に話を聞く時間はあるはずだ。

 フォルガットさんに集めてもらうのでもいいし、酒場に行けば仕事が滞っている今は、ほとんどいつでも鉱夫さん達がいる事が多いわけだし。


「坑道内にできた穴の事はそれでいいとして……問題はエクスブロジオンオーガだな……。なぜ鉱山の中で多く遭遇するようになったのか、未だにわからない。魔物とはいえ生き物だ。自然発生するわけではないしな」

「んーそうだね……これがゴーストのような、エルフの集落を襲っていた魔物なら、わからなくもないんだけど……」


 魔物とは言え生き物。

 当然、ほとんどの魔物は人間と同じく繁殖して数を増やす。

 ゴーストのような、気体というかガスの集合体とも見える魔物なら、自然発生する事があるらしいけど、エクスブロジオンオーガはそうは見えないしね。

 エルフの集落かぁ……。


「以前見た、サマナースケルトンが奥で召喚をしていたりとかは、考えらえれないかな?」

「それはどうだろうな。サマナースケルトンは、エルフの集落で見た時もそうだったが、召喚する魔物を選ぶ事はできないようだ。エクスブロジオンオーガだけというのは、無理だろう」

「そうだよねぇ……うーん。一種類の魔物を決めて召喚っていうのは、できないのかな?」

「私は魔法に詳しくはないが……相当に難しい事だと思うぞ? それこそ、リクのように異常な魔力と魔法があれば別だがな。確か、火の精霊を召喚していただろう?」

「異常って……まぁ、そうなのかもしれないけど。火の精霊かぁ、あれは召喚しようとして召喚したわけじゃないんだけどね。イメージして、発動した魔法が偶然火の精霊を召喚しただけで……。ともかく、エクスブロジオンオーガだけを召喚するのは、現実的じゃないか」


 エルフの集落で見たサマナースケルトンは、確かに選んで召喚しているわけではなかった。

 俺達が見た時は、骨の魔物なのにあまり強い魔物が召喚できなくて舌打ちしていたくらいだしね。

 ……あれ、本当にどうやったんだろう?

 それはともかく、火の精霊召喚は偶然そうなっただけで、意図して召喚したわけじゃない。


 とはいえ、俺が使えるドラゴンの魔法はイメージで具現化する、と言えるのだからもしかしたら魔物を召喚できるのかもしれないけど……。

 変な魔物とか、手に負えない魔物が出て来ても嫌だから、試したりはしないけどね。

 とにかく人間やエルフが使う魔法で、特定の魔物を召喚するというのは難しい事なのかもしれない。

 絶対できないとは言えないだろうけど……これに関しては、魔法に詳しいアルネとかに聞いた方がいいかもしれないな。

 アルネは王城で研究しているから、今すぐ聞けないのが少し残念だ……。


「何かしらの原因があって、エクスブロジオンオーガが大量に発生しているんだろうが……元々、繋がっていない道の先に、エクスブロジオンオーガの巣と言える場所があったからなのかもしれないな」

「そうだね。自然発生しない種類の魔物だろうから、そう考えるのが普通かな。あんまり大きくないから、採掘していた場所ではない所で、少しずつ数を増やして行っていたのかもしれないからね」

「あぁ、そうだな。今までエクスブロジオンオーガがいた場所と、坑道がぶつからなかっただけなのかもしれないからな。そう考えると、今回のことはいずれ起こる事だったか……」

「かもしれないね。もしかしたら、俺達が発見した穴が崩落で開いて、エクスブロジオンオーガが出てきた……とも考えられるし、もしかしたら他の場所で繋がってしまったのかもしれない」

「尚の事、今日発見した穴の先を調べなければいけないな。……何もなかった場合、他の場所を調べないといけないが……」

「それは……できるだけ避けたいね……」


 鉱山は広い……山一つが採掘場となっているのだから当然だけど。

 今回見つけた場所以外に発生原因があるのだとしたら、もっと長い時間調査に充てる必要がありそうだ。

 早く解決したいとも思うから、あの穴の先に原因があって取り除ける物だったらいいんだけど……。


「問題はやはり爆発だな……無理矢理穴を進もうとしても、爆発されるのが怖いな」

「結界で俺達は防げるだろうけど、鉱山には影響が出るかもね……エクスブロジオンオーガを結界で包んで、俺達も……という事はできるだろうし、エクスブロジオンオーガだけを結界で包んで、中で爆発させる事ができればいいんだけど……」

「それには、どうしたら爆発するのかの条件がわかればだな」

「そうだね……」


 穴の中を無理に進もうとしたら、結界を使って俺達自身を包めばいいのだから、危険はなくなる。

 エクスブロジオンオーガに、結界を破る程の力はなさそうだしね。

 ただ、それだけだともしなんらかの条件で爆発されたら、そのまま衝撃が鉱山へと伝わってしまう。

 俺は大した爆発に思えなかった衝撃だけど、ソフィーからしたら相当なものだったらしい。


 大きな怪我をしないけど、少なくとも足を止めて衝撃に備えないといけないくらいなんだから、連続で爆発されたら、崩落が発生してもおかしくない。

 戦った感じ、結界を張って穴の奥へと押し戻すだけで爆発しそうにはないけど……何がどうなるかわからない。

 鉱山を潰すわけにはいかないし、爆発させないために今鉱夫さん達がほとんど採掘ができない状況にまでなっているんだから、俺達が無理をするわけにはいかないしね。

 かといって、エクスブロジオンオーガの爆発に備えて、あちらを結界で包むのも爆発しなければ意味がない。


 さすがに、一緒に同じ結界の中に……というのはこちらが無防備だしで、今のところ打つ手なしだ。

 せめて、エクスブロジオンオーガが爆発する条件がわかれば、何か方法を考えられるかもしれないけどね。


「ソフィーが最初に戦った時は、腕を斬り落としても爆発しなかったよね……」

「そうだな。私はあの時、すぐに爆発する物だと思って、一瞬身構えはしたが……実際には爆発しなかった」

「それだけだと、エクスブロジオンオーガが死を覚悟したら、つまり自分の意思で爆発するんだと思えるんだけどね。頭と首を切り離しても、両方爆発していたし」

「完全に先手で意識を刈り取っても、同様だったな。意識を失っている状態で、意思の力で爆発するのは不可能だろう」

「うん……無意識で、というのも考えられるわけだけど、それだと結局体が切り離されても爆発した原因がわからない。多分、いくつかの条件があるんだと思うけど……」

「これも、鉱夫達に聞いてみるのもいいかもしれないな。私達とは違う視点で、エクスブロジオンオーガを見ているだろう」

「そうだね。うん、色々聞いてみる事にするよ」


 今日戦って見たエクスブロジオンオーガだけど、その爆発する状況を見る限りでは、一つの条件で爆発するというわけじゃなさそうだ。

 意識的に、命の危険を感じたら爆発というのと、無意識であっても爆発するという事。

 さらに、体と頭が切り離されてもそれぞれ爆発する……脳からの信号が途切れたら……という事かな?

 ともあれ、いくつかの条件で爆発するのは間違いない。


 それがわからない限り、今は無理をする事はできないかもね……。

 思わぬ条件で爆発して、鉱山への影響を出すわけにはいかないから――。



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