第573話 ソフィーと会議中



「うーん……地図には、ソフィーが行った別の道は書かれていないし、穴の事もないね」

「やはりそうだな。確か、あの道はこちらへ向かっていたから……穴はこちらだな」

「うん。えっと……この穴の奥には……んー、まだ採掘が本格的じゃない場所なのかな? 広い空間になっているように見えるだけで、何もないね」


 休憩したり、エクスブロジオンオーガと戦った広場から、ソフィーが少しだけ奥へ行った道と、崩れて出来たと思われる穴の位置を確認する。

 どちらも地図には記されてはいない、というのは、記憶と実際に見た場所を照らし合わせて確認済みだ。

 穴の奥がどこに繋がっているかを地図で確かめてみたけど、その先は地図には何も書きこまれておらず、ぽっかりと広い空間が開いているように見える。

 近くを通る道は、他にあるんだけど……穴の奥へ回り込めるような道はなさそうだ。


「リク、これは空間ではないんじゃないのか?」

「あーそうか。近くを道が通ってはいるけど、何も採掘されてなくて、穴も開いて鳴ければ道もない場所……という事だね」


 俺が空間と思った場所は、ソフィーに指摘されて改めてじっくり見ると、手つかずの場所だったようだ。

 つまり、その場所には空間があるとかではなく、ただ土や鉱石があるだけ……隙間すらない山の一角というわけだね。

 周囲を道が通っているように書かれているから、そこが空間のようにぽっかり空いているように見えただけかぁ。

 考えてみれば、そこに至る道もないんだから、空間に成る程採掘できるわけないよね。


「だとしたら、あの穴の奥は何があるのか、さらに気になるね……」

「そうだな。地図には何もない場所どころか、道すらないただの山の一部だ。だが、エクスブロジオンオーガがそちらから来たのは確かに見たからな。地図にはなくとも、何かがあるのは間違いない」

「まぁ、ただ他の道に通じているだけ、という可能性もあるけどね」

「そうだな。しかしそれなら、わざわざエクスブロジオンオーガが通る理由がわからないな。狭い道を好む習性とかがあるのであれば別だが……」

「うん……習性とかを調べるのは難しそうだから、そこはわからないね」


 わざわざあの穴を通らなくても、他の道を通れば俺達がいた広場に来れるのは、地図を見ればわかる。

 地図に記されていない道も、ソフィーが少し奥へ行っただけで、何処まで伸びているのかははっきりとしないけど、地図と照らし合わせてみれば、他の道へと繋がっていそうだしね。

 エクスブロジオンオーガが、何を考えて鉱山内を移動しているのか……狭い道を好むとかの理由がなければ、あの穴を通る動機がわからない。

 結局どちらもわからないけど、何かがあの穴にはあるのだろうと思う。

 本当に他の道に繋がっているだけの穴、という可能性も否定できないんだけどね。


「これは、やっぱりあの穴を通って見るのが一番早いかな?」

「だろうな。だが、エクスブロジオンオーガが通っていただから、私達が這ってでも移動している時に、遭遇すると、こちらは何もできないだろう」

「そうだね……うーん……」

「リクはまだしも、私やエアラハールさんは危険だな。無防備でエクスブロジオンオーガから攻撃される事になる。まぁ、狭いので道具を使う余裕は向こうにもないだろうがな」

「いや、俺も危ないとは思うんだけどね。どちらにしても、エクスブロジオンオーガが来ないとわかっているか、安全が確保されないと難しいかな……」

「とりあえず、明日……は、モニカの様子を見に行くんだったな」

「うん。昨日は無理だろうけど、今日は向こうも調査を始めているだろうからね。一応、確認しておいた方がいいだろうし」


 穴を無防備で通るのは、エクスブロジオンオーガにやられ放題になるという事だから、危険だ。

 かといって、他に穴の向こう側へ通じる道がなさそうでもある……。

 魔法を使えばどうにか倒して進む事もできるだろうけど、結界以外は禁じられているし、這ってしか進めないくらいの場所で、攻撃するための魔法を使ったら、鉱山にどういう影響が出るかわからないしね。

 最悪、エクスブロジオンオーガの爆発ではなく、俺の魔法で崩落……なんて事もあり得る。


 どうしようかと考えを巡らせていると、ソフィーが明日の予定を確認。

 向こうの進捗を確認する事と、様子を見る事、俺達の方からも状況を伝えるという事にしているから、明日は移動するため、鉱山内の調査は一旦中断する。

 パーティを別けて、別々の場所でそれぞれ依頼を……というのは初めてだから、情報交換をちゃんとしようと決めたからね。

 それに、エルサのおかげで移動にあまり時間がかからないから、というのも理由だ。


「そうだな。モニカとユノなら、無茶な事はしないと思うが、一応様子を見るのは大事だろう。だとしたら……帰って来てから、一度鉱夫組合に話を聞きにいかないか?」

「鉱夫組合って事は、フォルガットさんに?」

「あの人でなくとも、鉱夫達に聞けば、何か情報が得られるかもしれないからな。実際に地図だけでなく鉱山内を見ているのは鉱夫達だ。もしかしたら、地図には書かれていなくとも、何か知っている事があるかもしれない」

「……確かに。うーん、それじゃ、ルジナウムの街でモニカさん達と情報交換をして、戻ってきたら鉱夫組合に行こう」

「わかった。よくよく考えてみれば、私達はこの鉱山に入るのは初めてだ。広い鉱山なのに、地図はあるとしても、知らない事が多過ぎる」

「そうだね。もう少し鉱夫さん達から話を聞いてから入った方が良かったかも……?」

「まぁ、実際に入って自分の目で見ると言う事も大事だから、話を聞いて回る事だけに時間を割くのが駄目だとは言えないがな」

「……両方大事って事だね」


 酒場の店主さんも、鉱夫の人から話を聞いたって言ってた。

 ソフィーも言っているように、実際自分で見て判断という事も大事なんだろうけど、聴き取りも重要なんだろう。

 今回は偶然事前に情報を得られたおかげで、怪しい場所を発見できたけど、何も知らないまま闇雲に鉱山内部を調べていたんじゃ、時間があっても全然足りない。

 数日でどうこうというわけではないけど、エクスブロジオンオーガをなんとかしないと、鉱夫さん達やこの街への影響がどんどん出る事になってしまうしね。


 かと言って、鉱夫組合の組合長であるフォルガットさんは、どうしてエクスブロジオンオーガが発生したかの原因を知らないようだったし……話しを聞いているだけでは解決の糸口はつかめない。

 結局のところ実際に調べるのと、人から話を聞く事のバランスが大事なんだろうと思う……難しいけど。

 情報が大事というのは、エアラハールさんからも言われていた事だし、次に鉱山へと入る前に話を聞いておこう。

 エルサに乗れば、ルジナウムの街との往復もそんなに時間がかからないだろうから、様子を見て帰って来てから、また組合で話を聞くくらいが丁度いいかもしれないね――。



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