第571話 戦闘はあっさり終了
「おっと! あまり考え込み過ぎてもいけないね。はぁっ! とにかく今は、こいつらを倒そう……ふっ!」
考えに耽りそうになって、エクスブロジオンオーガが体当たりして来るのに危うく当たりそうになってしまった。
多分、当たっても少し衝撃が来るだけかもしれないけど、それでも訓練の一環としては減点だからね、気を付けないと。
考え込むのは後にする事にして、とにかく今は目の前にいるエクスブロジオンオーガを倒す事に専念した。
一応、爆発する瞬間を観察するのだけは、忘れずにしていたけど。
「……よし、全部終わりかな」
最後の一体に突き刺した剣を引き戻し、爆発した後消えていくのを確認して、結界を解除する。
全て突きだけで倒すのは、苦労したというよりも、自由に剣が使えない窮屈さで精神的にちょっと辛かったかなと思う。
勢いのまま、突きの後に剣を払ったりとかできないもんなぁ……。
変な角度で硬い物に当たったりしたら、それだけで剣が折れてしまいそうだし。
「終わったようじゃの。……向こうも終わったか」
「そうみたいですね。――お疲れ、ソフィー。大丈夫だった?」
結界が解けた事と、俺がエクスブロジオンオーガを全て倒した事を確認して、通路からエアラハールさんが戻ってくる。
俺に声をかけながら、別の通路へと視線を送ったエアラハールさん。
そちらからは、特に怪我をしている様子もない無事なソフィーが、頭にくっ付いているエルサを撫でながらこちらへと歩いて来ていた。
見た目は何もなさそうだけど、労いの言葉と無事の確認は忘れない。
「リクもお疲れ。倒す事自体は特に問題はなかったな。やはり、爆発するのが少し面倒だ。それだけで吹き飛ばされたり、怪我をする程ではないにしろ、否応にも動きは止められる。その間、他のエクスブロジオンオーガの攻撃をなんとかいなさなければいけないしな」
「そう? 動きは特に止まる程じゃなかったと思うけど……」
「それはリクじゃからじゃ。大方、ほとんど衝撃も感じておらんじゃろ? 普通は衝撃に耐えるよう動きを止めたり備えたりするもんじゃ。ワシは直接戦っておらんからはっきりとは言えんが、結界の外から見ていた限りでは、足を踏ん張っておらんと押されて倒れかねんくらいじゃったぞ?」
「そうなんですか……? うーん、大して衝撃がなかったように思うんですけど……」
「まぁ、剣すらも素手で受け止めるリクだからな。そう感じてしまってもおかしくないだろう。ともかく、途中からは体の一部を切り離すようにして倒していた。どうやら、体が別れると威力が低くなるようだからな。……いや、分散されると言った方が正しいか?」
どうやら、エクスブロジオンオーガの爆発が全然大した事がないと思っていたのは、俺だけらしい。
うーん……確かに俺の近くで爆発したエクスブロジオンオーガの衝撃は、本当に鉱山への影響があるのか疑問に感じるくらいのような気がしていたけど……どうやら、俺の感覚がおかしかっただけらしい。
多分、剣を素手で受けてもなんともなかったりするおかげで、体感する衝撃が弱く感じていたみたいだ。
衝撃に耐えるため、ソフィーの動きが止まるくらいだとか、エアラハールさんが言う通りなら、確かに鉱山内で爆発させるのは危険だね。
衝撃が伝わって、どこかで崩落が起こってもおかしくない。
雪山で大声を出して、その振動で雪崩が起きるようなもの……かな?
まぁ、そこまで刺激に弱いという程じゃないだろうけども。
「体が別れると衝撃が分散される……か」
「爆発するその物が小さく別れるのじゃ。それも道理じゃの」
エアラハールさんの言う通り、一つだった体が二つに別れてそれぞれが爆発するのだから、威力が分散されるのも頷ける。
ソフィーの方も、数体のいエクスブロジオンオーガを相手にしていたようで、戦いながらそんな事を実践していたらしい。
突きばかりをしていて、一辺倒な戦いになっていた俺とは違うなぁ……剣を折らないためでもあるんだけど。
ともあれ、ソフィーが確認したように体の一部を斬り放しても、両方爆発するのは間違いないようだ。
最初にソフィーが戦った時のように、頭と胴体が切り離されても両方爆発したのは、偶然ではないという事。
それと、俺が目の前で見ていた事だけど、完全に絶命して意識がなくなっても爆発した事から、意思だけで爆発を決定しているわけじゃないのか……。
腕を切り離しても爆発せず、残った腕で攻撃して来ようともしていたから、エクスブロジオンオーガの意思が全く関係ないというわけではないんだろうけども……うーむ……。
「リク、考え込むのもいいがの。とりあえず出るのが先じゃないかの?」
「随分、時間が経っているようにも感じる。空が見えないから……今がどれくらいなのかはわからないが……」
「あ、そうですね。とにかく、あの穴をエクスブロジオンオーガが通るのは確認できましたし……向こう側に今はいけないんですから、帰って考えましょうか」
「そうじゃ。何もここで答えを出さなくとも良い。それこそ、誰かと話して答えに辿り着く事もあるからの。無理をすれば、向こうへは行けるじゃろうが……今はそういう時じゃないからの。なに、調査を一日で終わらせないといけない、というわけでもないからの。こういうのは焦っても結果は出ないものじゃ」
「はい。帰って確認をしながら皆で考えます」
「お腹が空いたのだわー!」
「ははは、エルサも騒ぎ始めた事ですしね。早く帰りましょう」
「うむ、それが良いじゃろう」
「……モフモフは素晴らしいが、頭で騒ぎ始めると、周囲への警戒が薄れるな」
エアラハールさんとソフィーから、ひとまず鉱山を出る事を提案される。
確かに、随分時間が経っているようにも思うから、一度引き揚げた方がいいかもしれないね。
空が見えないから、今がどれくらいの時間か正確にはわからないし……外に出たらまだあまり時間が経っていなかったとか、逆に深夜になっていた、という事になっていてもおかしくない。
とはいえ、まだエルサの腹時計が騒ぎ出していないから、大丈夫かな……と、エアラハールさんの助言に従い、引き返すように移動を開始しながら考えたところで、エルサが騒ぎ始めた。
丁度、夕食くらいの時間になったらしいな。
ソフィーは、エルサが頭にくっ付いた状態で騒ぐ事に戸惑いつつ、来る時よりも少し早めに歩いて外へと向かった。
……エルサが騒ぐと、頭にくっ付いている事もあって、耳に近いから結構うるさく聞こえるんだよね。
しかも、その声のおかげで周囲を警戒しようとしても、集中できないだろうし……。
まぁ、来た時よりも早く移動しているし、後ろからエクスブロジオンオーガが追いついて来るなんてことはないだろうし、先頭の俺やエアラハールさんが警戒しているからね。
さっき結構な数を倒した事もあってか、他にエクスブロジオンオーガと遭遇する事もなく、鉱山の外へと出られた。
鉱山の外に出ると、完全に日が落ちて真っ暗だったけど、エルサの腹時計が正確なおかげで予想とのズレはほとんどなかった。
少し遅めだけど……大体夕食の時間には戻れたようだね――。
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