第570話 穴から来るエクスブロジオンオーガ
「……出てきた出てきた」
穴が狭いので、わらわらと……という程ではないけど、次々とエクスブロジオンオーガが出てきている。
ツルハシを持っているのは、二体くらいなようで、残りのエクスブロジオンオーガは何も持っていないのがほとんどだ。
まぁさすがに、鉱山内とは言え、無限に捨てられた道具があるわけじゃないしね。
一体目が出て来てしばらく待つと、次々と出て来ていたエクスブロジオンオーガが止まった。
多分、あれが最後の一体だったんだろうな……えっと……。
穴から出てきたエクスブロジオンオーガは、十五体程。
オーガにしては小さめの体とはいえ、広場にはそこまで余裕があるわけでもないので、穴から出てきて先に出てきた方に体をぶつけたりしている。
さすがに、広場が狭く感じるね。
押し出されるようにして、何体かのエクスブロジオンオーガがソフィーの向かった方へ行こうとするが、結界に顔や体をぶつけて驚いていた。
多分、何か声を上げていたんだろうけど、俺のいる方も結界で塞いでいるので何も聞こえない。
その他のエクスブロジオンオーガは、もう一つの道……俺がいる方へ向かったり、結界に阻まれた奴らは、何かの異常を感じたのか、今出てきた穴へと戻ろう足を向けていた……そろそろだね。
「……結界!」
「ギギィ!?」
「ギ!?」
「ギィ!?」
瞬時に結界を解いて、広場へと躍り出ながら、自分とエクスブロジオンオーガを包むように結界を発動。
急に出てきた人間……俺に対して驚いた声を上げていたエクスブロジオンオーガだが、すぐに身構えてこちらへと襲い掛かろうとしている。
とはいえ、力はそれなりに強くても動きの鈍い魔物……結界を発動させた後、俺が剣を抜くのに十分過ぎる程の隙があった。
とりあえず、十五体のエクスブロージオンは全て結界内に閉じ込めたから、後は数を減らしていくだけだね……!
「ギィ!」
「おっと……危ない危ない。剣で受けちゃダメだった……」
まず襲い掛かってきたエクスブロジオンオーガの一体。
ツルハシを振り下ろして来たそいつから、剣を持ち上げそうになって途中で気付き、すぐに空いている壁の方へ飛んで避けた。
無意識に剣で受けようと思ったけど、あんなのを受けたら、ツルハシも剣も両方壊れてしまうからね。
訓練も兼ねているんだから、油断せず集中しないと……!
「剣筋を意識して……とは言っても、隙間が少ない……かな?」
剣を折らないように剣筋を意識する事は大事だけど、エクスブロジオンオーガが多いせいで広場には周防ペースがかなり少ない。
向こうの身長が低いおかげで、俺の頭から上の空間はガラガラに空いているけど……だからと言って、振り下ろすだけので全て終わるわけじゃない。
道具を頭上に構えているのもいるし、頭を狙うのは基本ではあるけど当然その場所は、魔物も変わらず硬い場所。
そんば部位ばかりを攻撃していては、剣の耐久力も心配になって来るからね。
……折らないように気を付けるなら、一番の狙いどころはお腹辺りかな。
そうなると、横から剣を振らないといけなくなるけど……エクスブロジオンオーガがひしめき合っている状況では、満足に触れるとは思えない。
別の奴が邪魔をしたり……という事もあるしね。
どうするか……こうして考えている間も、少しずつエクスブロジオンオーガがこちらへと近付いて来ている。
幸いというか、一応壁を背にしているおかげで後ろからという事はないんだけど、それでも完全に逃げ道は塞がれているような状況だ。
……逃げるつもりはないけどね。
人間が俺一人だと考えているからか、数が多い事で優位に立っていると考えているエクスブロジオンオーガは、突出して一体が襲い掛かったりはせず、じりじりと包囲網を狭めてくる。
もう少し最初に、混乱させてやるような行動をした方が良かったかも……と考えても遅い。
とにかく、剣を折らずに目の前にいるエクスブロジオンオーガを倒す方法を考えないと……。
「……そうだね。振ると剣を使う場所を多くとるのなら、最小限の動きにするしかないか……」
もしかすると、エアラハールさんは俺がいずれこう考えると思って、この剣を使わせたんだろうか……?
いや、考え過ぎだとは思うけど。
無駄な動きを省き、最小限の動きで最大限の効果を発揮する……俺にはまだ、エアラハールさんの動きを再現する事はできない。
なら、剣を使ううえで一番最小限の動きであり、直線的な動きでもあって、防ぐ事も難しい使い方をしたらいい。
「よし! まずは、一番近いお前からだ……っ!」
「ギ!?」
壁を背にして動きを止めていた俺が、急に動き出した事に驚いた様子のエクスブロジオンオーガ。
包囲網を狭めて来ていたうちの一体、俺の右側から一歩から二歩程度近い奴に狙いを定めて、剣を構える。
すぐに足へと力を込めて突撃。
驚いていた事と、俺自身ここまで早く動けたのか……? と思うくらいの速度でエクスブロジオンオーガへと肉薄し、そのままの勢いで剣を真っ直ぐ両手で持ったまま突き出す。
そのまま剣は、何に遮られる事もなくエクスブロジオンオーガの胸辺りに突き刺さり、こちらを見ていた目は白目になって倒した事を確認。
そこまで狙ったわけじゃないけど、偶然にも心臓部分とかそれに近い場所に深々と突き刺さったおかげだろう。
「おっと……」
そのままでは危ないと、すぐに剣を引いて突き刺さっていたエクスブロジオンオーガの体から抜き去る。
瞬間、一瞬だけほんのり赤みが増したエクスブロジオンオーガの体が、爆発四散する。
相変わらず、爆発する威力は大きくないけど、剣を突き刺したままだと折れてしまいかねないからね。
……気を付けないと。
「ギギィ!?」
「ギ! ギギ!」
「ギィ! ギィギィ!」
爆発はエクスブロジオンオーガの意思と関係する……という予想を覆すように、完全に意識がなくなったはずなのに爆発した。
そんな事を考えている間に、俺を強敵と認めたのか、ジリジリと包囲網を狭めて来ていたエクスブロジオンオーガ達が、俺へと向かって道具や腕を振り上げて襲い掛かってきた!
動き自体は遅いので、冷静に見て避けながら、確実に突きを放って倒し、数を減らしていく。
先程と同じように、突きさされたエクスブロジオンオーガは、ある程度の深手を負うと爆発するため、剣を突き刺しても動きを止めず、すぐに剣を引く事を忘れないよう気を付けた。
「やっぱり、意識のあるなしに関係なく、爆発してるかぁ……っと。はっ!」
数が減った事で、少し余裕が出てきため、エクスブロジオンオーガの攻撃を避けながら突きを放つという動作をしながらも、状況を観察して考えながら呟く。
ほとんどお腹から胸辺りを一突きで、爆発をしているから……さっきソフィーが腕を斬り落としたりという事はしておらず、全く同じ状況というわけではない。
けど、時折心臓辺りの一突きで、完全に絶命したはずのエクスブロジオンオーガが爆発するのを見て、引き金が意思だけが関係しているわけではないのかなと思う。
もしかしたら、自分の意思とは別に、こうなったら爆発する……というような条件が設定されているような……?
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