第426話 調査の結果を話し合う
その後、なんとかモニカさんに落ち着いてもらい、皆でマギアプソプションの片付け。
戦う事はやる気がなかった皆だけど、片付けくらいは手伝ってもらった。
まぁ、嫌そうな顔ではあったけども……。
戦闘で協力はしなかったから、ルギネさんが怪我をしてしまった事は反省していたらしい。
マギアプソプションの片付けと言っても、あまり大した事はしない。
討伐証明部位の角を切り取り、俺とルギネさんでわける。
横たわっている、残った体は周囲の土をかけて埋めるくらいだ。
見た目がミミズだからなのかはわからないけど、埋めれば畑の養分になる……というのはフィリーナ談。
グリーンタートル程じゃないらしいけどね。
魔力溜まりへの影響も考えたけど、既に魔力が滞っている状態だから、数十体程度じゃ問題はないらしい。
というより、俺が使うくらいの大きな魔法でもなければ、影響は少ないって言われた。
一度できてしまったものだかららしいけど……魔力が多いのも考え物なのかもしれな。
「それでは、私達は先に行く。……本当にまだここに残っているんだな?」
「はい、まだする事がありますから。マギアプソプションを討伐する事が、目的じゃないので」
「……そうか、わかった。Aランクなんだ、他にも重要な依頼があるんだろう。……怪我の治療……ありがとう……」
「いえいえ……」
マギアプソプションの討伐や片付けも終わり、リリーフラワーの皆と別れる。
あちらは、討伐に来たけみたいだしね。
俺達は本来調査が目的なのだから、まだやる事がある。
何故か、話す時に少し頬が赤くなってたルギネさん……怪我が原因で熱が出るという事もあるようだけど、他のパーティメンバーがいるから大丈夫だろう。
怪我そのものは完全に治したんだから、特に心配はいらないだろうと、ヘルサルに帰るリリーフラワーを見送った。
「あらぁ、ルギネ……もしかしてぇ……?」
「もしかしてってなんだ!? 私は男なんぞに……!」
「お姉さまぁ!」
「焦げた肉のようになってる」
賑やかに話しながら、去っていくルギネさん達。
何を話してるか知らないけど、楽しそうで何よりだ。
最後の最後まで、ミームさんの焦げた肉へのこだわりはよくわからなかったけどね。
「さて、色々片付いたようだし……フィリーナ、調査の方はどうだった?」
「私任せなのね……まぁ、知識があるからしょうがないけど。付いて来て良かったわ」
リリーフラワーの皆を見送った後、魔力溜まりから少し離れて適当な場所で座り、話し合いの時間。
魔力溜まりの中にいると、どんな影響があるかわからないし、魔力遮断をしているとはいえ、エルサが魔力酔いしたりするからね。
ちなみに、酔いが覚めて来たのか、さすがにもうむにむに言わなくなって、今は俺の頭にいつも通りくっ付いている。
まだあまり調子は良くないみたいだけどね。
車座になって、まずは調査していたのがどうなったのか、フィリーナに聞く。
俺はもちろんそうだけど、モニカさんやソフィーは当然魔力溜まりに関する知識はない。
作物を育てる土に関しては、モニカさんが多少知識があるようだけど、専門家には勝てないしね。
フィリーナが呟いてたけど、本当に今回一緒に来てくれて助かった。
知識という意味では、長く生きてるエルサがありそうだけど、休んでるからあまり聞ける状態じゃない。
ユノの方はさらに知識がありそうだけど……何かを言う事はないみたいだ。
まぁ、俺の妹という事にしてるから、変に知識があり過ぎるのも不自然だし、もしかしたら知らないのかもしれないけど……元々が神様だからって、なんでも知ってるわけではないしね。
今は、ぐったりしているエルサをつんつんして遊んでる。
「まずは魔力溜まりね。あれだけの魔力が集まったのは初めて見たわ。まぁ、リクが魔法を使った事と、ゴブリンの数を聞けば納得だけど。……もしかしたら、マギアプソプション以外の魔物も呼び寄せる危険があるかもしれないわ」
「マギアプソプション以外にも、魔力溜まりに寄って来る魔物がいるのか?」
「魔物は、その生命活動に魔力を使っている事がほとんどよ。魔法が使えるかどうかに関わらずね。魔力を持つだけで魔法を使う以外は魔力消費しない人間やエルフとは違うの。だから、魔力を求める習性も確認されているわ」
「……ヘルサルに、また魔物が押し寄せて来る可能性があるのかもしれないのね?」
「可能性としては、あると言わざるを得ないわ。ただし、マギアプソプションのように、敏感に魔力を察知する器官がないから、離れた場所から大移動してくる可能性は低いわね。それこそ、目視できるくらいの距離に来なければ、ほとんどの魔物は知る事ができないはずよ」
「それなら……多少は安心だね」
魔力溜まりがある事で、マギアプソプション以外の魔物もおびき寄せ、さらに強く、さらに多くの魔物がヘルサルに来たら大変だ。
また、ゴブリンの時のように防衛戦をしなくちゃいけない。
あの時は皆で協力したし、準備する時間も多少はあった。
けど、今度はそんな時間があるかわからないし、俺達がいるかもわからない。
王都にも援軍を求めたりはするだろうから、エルサに頼んで駆け付ける事はできるだろうけど……間に合うかどうかはその時次第だ。
そして、大量の魔物を倒すとそこに魔力が溜まって……という悪循環にもなる。
けど、フィリーナの言う通り、マギアプソプション以外の魔物が来る可能性が低いのであれば、少しは安心できる。
警戒は、するに越した事はないけどね。
「魔力溜まりを解消する手段は……今の所わからないわ。リクが他の場所に向かって、大きな魔法を使えば可能かもしれないけど……」
「それはできないのだわ」
「エルサ?」
「エルサ様、どうしてですか? 魔法は使用者の魔力と一緒に、自然の魔力を集めて使うもの。使用者の魔力が高い程、集められる魔力も増えて強力な魔法が使えるはずです。リクがあれだけの魔力溜まりを作る魔法を使えるのなら、その分の魔力を集めて他へと放出すれば……」
「だから、それはできないのだわ……」
魔力溜まりが作られるきっかけを作ったのは俺だ。
俺の使った魔法と、大量のゴブリンが消滅した時の、体内にあった魔力の残滓が集まってできたものなはずだ。
フィリーナの案に、ぐったりして俺にくっ付きながら、気だるげな声で否定するエルサ。
魔法の説明をしながら、エルサが否定した事に首を傾げるフィリーナだけど、それにもエルサは重ねて否定した。
「魔力を集めるのなら、可能なの。だけど、リクは魔力を集めないの」
エルサが気だるそうな声を出しているのを見かねてか、ユノが代わりに説明を始めてくれた。
まだ完全に酔いが覚めてないから、話すのも少し辛そうだからね……仕方ない。
……二日酔いかな?
「ユノちゃん、リクが魔力を集めないと言うのはどういう事なの? リクの魔法は確かに強力だけど、あれだけの魔法を周囲から集めて扱えるなんて……まさか、リク自身の魔力だけで、あれなの!?」
「そのまさかなの。リクは信じられないくらいの魔力量なの。それに、リクの使う魔法は、人間やエルフが使う魔法と違って、ドラゴンであるエルサと契約したから使える、ドラゴンの魔法なの。周囲から魔力を集める事はないの」
「あれだけの規模、威力を持った魔法を……自分の魔力だけで……? そんなの人間にできる事じゃないわよ? エルフがどれだけ集まっても、まかなえるかどうか……」
「その感想は正しいの。けど、信じられないかもしれないけど、それが真実なの」
「……あれだけの魔法を使っておいて、魔力が減ったように見えないのはそのせいなのね……成る程ね、道理で私が見てもどれだけの魔力があるのか把握できなかったわけね……」
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