第10話 センテの街に到着
休憩からしばらくたち、再び馬車に揺られる。
ロジーナやレッタさん親子、ハンスさんやソフィーさんと他愛もない会話をしてお尻の痛みをごまかしつつ、ようやくセンテの街に到着する。
「皆様お疲れ様です。センテの街に到着しました」
御者の人からの声で、皆それぞれ馬車から降りて行く。
「ここがセンテかー」
門から入ってすぐの場所で馬車を降り、街並みを見渡す。
建物はヘルサルと大差はないが、あちらよりも少し人通りは少ないようだ。
けど、野菜交易の中心となる街だけあってか、荷物を載せていると思われる馬車や木箱等の荷物を持っている人が多く見られる。
さて、問屋はどこかな、と。
「リクお兄ちゃん、またねー」
「リクさん、それでは」
「リクさん、冒険者になる時にはギルドへ来て下さい」
「何か買う物があれば私の店へ来て下さいね」
それぞれに声を掛けられ、それに返しつつ知り合った人達と別れる。
特に話をしていない何人かはそのまま別れた。
さて、モタモタしてたら日が暮れそうだ、問屋へと急ごう。
マックスさんから渡された問屋の場所が書いてある物をみつつ、道を進み始める。
「西門から街中心へ向かって真っ直ぐ、しばらく歩いた後、野菜を売っている露店の広場に出てその広場の真ん中あたりから右の道へ入り、次の角を左へいって3軒目のお店……と」
歩き始めて数十分、お尻の痛みもなくなった頃、1軒の店の前に辿り着く。
ホルザラの店、ね。
ここで間違いないようだ。
入口横に置いてある看板で店名を見て、間違えてない事を確認した後、ドアを開けて店に入る。
「すみませーん」
「……いらっしゃいませ」
店には入ってすぐカウンターがあり、そこに小さな女の子がいた。
奥には木箱に溢れるように詰め込まれている野菜が見える。
「えっと、マックスさんからの使いで来たんだけど、店主さんはいるかな?」
娘さんかな?ロジーナよりは大きく見えるけど、いって中学生くらいの子が店番をしていた。
「……私が店主のホルザラ……」
「え?えっと……失礼しました!てっきり……」
「いい、慣れてるから。こう見えても私は……やっぱり歳は内緒……」
一体いくつなんだろう……どうみても子供にしか見えない……
慣れてるって事はいつも間違えられてるのか。
「すみません、歳は聞きません。俺はリクといいます。マックスさんのお使いできました。こちらマックスさんからです」
「……ん」
マックスさんからの手紙を渡し、それを読む事しばらく。
「……わかった、次に卸す野菜の量はここに書いてある通りにする」
「はい、それでお願いします。」
「……やっぱりあの野菜の量は間違い、おかしいと思った」
「わかるんですか?」
「……ええ、いつもの量の半分しかなかった。客が少なくなって店が危なくなったのかと少し心配した」
「そうですか。獅子亭の方は毎日お客さんでいっぱいで、人手が足りないくらいですよ」
「そう……リクがお使いに来るって事は、獅子亭で働いてるの?」
「はい。働かせてもらってます。」
「……ようやく人を入れる気になった。人手が足らないくせに、新しい人を入れなかったのに」
「そうなんですか?でも俺が入っても人手が足りてるって程じゃないので、まだこれから増やすんじゃないですか?」
「……それはわからない。けど、今まで人を入れなかったマックスが人を入れた……それだけ店が繁盛してるって事は良い事」
「そうですね、毎日いっぱいお客さんが来てくれるので、少しくらいきつくても嬉しい悲鳴ってやつですよ」
等々、しばらく話し込んでいた。
何か、静かにちょうどいいテンションで話す人だなぁ、話しやすい人だ。
「それじゃあ仕入れの件、よろしくお願いします」
「……わかった。予定通りの日に野菜を持って行く」
要件を済ませて、店を出る。
結構話し込んでいたせいか、もうほとんど日が落ちで辺りは暗くなって来ている。
「完全に暗くなる前に宿に行かないと」
えっと、ホルザラの店を出て左に行って…………と説明通りの道を少し早めに歩いて行く。
初めて来た街で暗い中さまようわけにはいかないからね。
迷子にでもなったらヘルサルの街の時のように途方に暮れそうだ、実際ほとんど日も暮れてるし。
「ここか」
ついた宿は三階建ての小綺麗な所だった。
「いらっしゃい」
中に入ると、恰幅のいいおばさんが受付をしていた。
「マックスさんの紹介で来ました」
「あーマックスさんとこの。はいはい、何泊するんだい?」
んー、明日はちょっとこの街を見て歩きたいから、明後日帰るとして。
「2泊でお願いします」
「はい、かしこまりました。料金は銀貨16枚ね」
「はい」
「確かに。それじゃこれが部屋の鍵ね。部屋は二階の一番奥が空いてるから」
部屋の場所等の説明を受け、部屋へと向かう。
夕食と朝食は隣にある食堂にこの宿に泊まってる事を言うと半額で食べられるそうだ。
風呂等はないから、部屋にお湯を用意してもらい、布で体を拭く。
説明を受けながら、ここでもホルザラさんと同じく、俺が獅子亭で働いてる事に少し驚かれた。
今までどれだけ人を入れたがらなかったんだろう、マックスさん達……。
「ふー、ようやく一息、かな」
部屋はベッドと小さい机があるくらいの簡素な部屋だった。
掃除が行き届いていて綺麗な部屋に入り、机の上に剣と鞄を置いて、ベッドへ座る。
「明日は街を見て回るから、今日は早めに休もう。初めての馬車で疲れてるし」
ちょうど晩飯時だ、隣の食堂で晩飯を食べて、体を拭いてさっぱりしたらすぐに寝ようと決める。
部屋を出て隣の食堂に入り、宿に泊まっている事を告げて注文する。
「はいよ、野菜の煮込みスープだ」
食堂のおじさんが持ってきた野菜スープを食べようとした時、思い出す。
マックスさんに貰ったパンがまだ残ってた……
明日の朝ごはん……まではもたないな、きっと。
せっかく作ってもらったのに、捨てるのも気が引ける……仕方ない。
鞄からパンを取り出し、煮込みスープと一緒に少し硬くなったパンを食べていく。
スープのおかげで、時間が経って硬くなったパンは気にならなかったが、大きくて量が多い。
今度作ってもらうときは、量の加減をマックスさんにしてもらおう。
かなり苦しかったが、何とか食べられた……動くのがしんどい……。
とはいえさすがに食べ終わった後延々と席の一つを占領し続けられない、食堂は今が一番忙しいのか、後から後から客が入ってくる。
何とか立ち上がり、ゆっくりと動いて支払いを済ませ、宿へと帰った。
「おかえり、なんだい?食べ過ぎたのかい?」
「ははは、ちょっと調子に乗ってしまって……」
おばちゃんに入り口で少し呆れられたけど、笑ってごまかしながら部屋へと帰る。
「駄目だ、もう動けない」
すぐさまベッドへと倒れ込み、そのまま寝る事にする。
というより、満腹、疲れ、眠気でもう動きたくない……。
1日くらい体を拭かなくても大丈夫だよね?明日起きたらすぐに綺麗にするからさ。
誰かに言い訳のような事考えつつ、そのまま眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます