第2話 女の子は神様?



「……ん……」

「気が付いた?」


 目を開ける。

 何か白い世界にいた。

 見たことのない世界に立ってるんだけど……。

 ここはどこだ?

 俺、トラックに轢かれたんだよな……


「危ないとこだったね?」


 危ないとこ?トラックに轢かれたた後で危ないも何もないじゃないか。


「轢かれてないよ?」


 え?だって……俺……トラックの前に走り込んで……。

 それで……。


「そうだね、危ない事するなぁ」


 危ない事って言われても……あの子を助けるにはそうするぐらいしかなかったと思うけど……。


「あの状況じゃあそうかもね。でも、人間があのスピードと大きさのトラックに轢かれたら死んじゃうよ?」


 まぁ、確かにあれはもう助かる見込みないだろうなぁ。


「ほんとにね」


 って、ちょっと待て。


「うん?」


 俺は誰と喋ってるんだ?


「私と」


 私?えーっと。

 視線を少しだけ下げてみると、そこには助けたはずの女の子がいた。

 あれ?何で俺と一緒にいるんだ?ここは天国とかそういうとこかなーとか思ってたけど。


「残念、天国じゃないよ。あと、喋ってるって言っても君は声を出してないけどね?」


 そう言われれば……さっきから声に対して頭の中で考えてるだけだな。


「うん、君の考えてる事を読んでるからね」


 女の子は微笑みながらそう言うが、俺の考えを読む?どうやって?そんな事出来るわけないじゃないか。


「んー、出来るものは出来るんだからいーの」


 軽く言ってくるが、そんな事できるわけないし……。

 でも確かに今声を出さなくても会話ができてるな。

 何でそんな事ができるんだ?


「まぁ、神だしね」


 え……?神?


「うん」


 神様なの?


「うん」


 何で?


「えっと……何でと言われても、神だから……としか言えないよ……」


 ちょっと困った顔をしてるけど、ほんとに神様?


「そうだよ?」


 ……んー.

 まぁ、何でもいいか。


「え?いいの?」


 おう、神様だとか言われても正直わかんねぇし、別に信じる信じないとか関係なしに今目の前にいて、こうやって変なやり方の会話が出来てるしな。


「ふーん、面白いね」


 面白いか?まぁ、いいか。

 ただ、考えてる事が読めるってのはあんま気持ち良いもんじゃないな。


「そう、じゃあやめる」


 え?やめれるの?


「今、感覚を一つ切ったから、これでもう考えは読めないよ」


 そうか、もう読まれてないのか。

 結構簡単に切り替えられるんだな。


「……」


 こっちを見ながらニコニコしてるけど、 話さなくなったな、何でだ?

 あ、そうか、声出さないと向こうには伝わらないか。


「えっと、ここはどこなんだ?俺、死んだんだっけ?」

「ここは神の御所、まぁ普通の人が住んでるとことは違って、神々が住む場所だね」


 ……えーっと……。


「あと、死んでないよ?」

「え?だって……」


 俺、トラックに轢かれたんだよな?

 確かに俺はトラックの前に走り込んだはず……。


「死んでたらこの場所にも来てないからね。魂だけになって意識もなく、次に産まれる時まで世界を彷徨ってるから」

「じゃあさっきのトラックは?夢かなんかなのか?」


「トラックはちゃんといたよ。あの場所で走っていたし、何事もなく通過して行ったよ」 


 どういう事だ?


「んーっとね、女の子を助けようとしたじゃない?」

「ああ」

「あれね、私なんだけど」

「まぁあの時見たまんまの姿だからそれはなんとなくわかるが」

「その、私を助けようとして人が死んじゃうなんて悲しいから、ここに転移させたんだ」

「転移……」


 何かアニメとかで聞いた事のある言葉だな、確か別の場所に瞬間的に移動するとかだったか。


「そんな事が出来るなら、俺の行動は無駄だった?か?」

「ううん、そんな事ない。私あの時はれっきとした人間だったから、トラックに轢かれたら死んじゃう」

「神なのに?」

「神でも、現世に存在するためには人間とほぼ同じ体になるから。自分を転移させたり、トラックに轢かれても平気なんて事はないんだ。だから助かったよ」

「もし助けなかったら?」

「死んじゃう。神でもあの時の体は人間だから、死んじゃって神としても消滅しちゃうとこだったの。だからありがとう」


 そうか、まぁ俺の行動が無駄じゃなかったんなら良かった。

 嬉しそうな顔をしてる女の子を見てれば、落ち込む事もないか。

 無駄死にとかじゃなくて良かったぁ。


「というか、何で神様があんな場所にいたんだ?」

「面白そうだったから!」

「面白そう?」

「うん、だってここにいたってやる事ほとんどないし、何も面白い事ないから」

「そうかぁ」


 神様が面白がってそういう行動を取っていいのだろうか?

 いいんだろうなぁ、実際にそうしてるんだし。


「それで?俺はこれからどうなるんだ?まさか神様を助けたから神様になれるってわけでもないだろ?」

「まぁね、人間から神になれる事なんてそうそうないから、違うよ」


 そうそうないって事は、なくはないのか。

 まぁ、俺は別に神様になりたいわけじゃないからどうでもいいけど、つまらなさそうだし。


「えっとね、私を助けてくれた代わりに死ぬのはちょっと嫌かなって思って。」 


 ちょっとなのか……。


「だからあなたを助けたんだけど……」

「だけど?」

「私、神は神でもあなたの世界の神じゃないの」

「え?という事は、別の世界って事?」

「うん、だからね、転移させたのはいいんだけど、あなたを元の世界に戻すことはできないの」

「……」

「あっちの世界にはあっちの世界の神様がいる。ほんとは干渉しちゃ駄目なんだけど、今回は私の存在がかかってたから、特別に転移できたの。でもほんとはしちゃ駄目なことだから、転移で強制的に呼ぶことは出来ても、戻すことは出来ないの。二度目の干渉になっちゃうから」


 んー、帰れないのか……。


「帰れない場合、どうなるんだ?ずっとここにいるのか?」

「ここには長くいられないの。ここは神のための場所だから。ここに神でもない人間がいると、段々記憶が曖昧になって、意識も少しずつなくなって、魂がすり減って行って、最後には消滅しちゃうから」

「何か危ないとこだなぁ」

「神にとっては居心地がいいから、危なくはないんだけどね」

「ここにいられない、元の世界にも帰れないとなると、どうすればいいんだ?」

「私の世界に移動してもらう事になるね」

「俺がいた世界とは違うのか?」

「だいぶ違うよ。あっちは科学が発達した世界だけど、こっちは科学なんてあんまりない。その代わりに魔法があるかな」 

「魔法……か」


 何か、ラノベとかアニメとかで見た世界のようなとこなのかな?

 というかこれって、よくある設定とか言われてる異世界転移なのか?

 そんなに詳しいわけじゃないけど、多少はラノベを読んだりしたことはある。

 同級生にそういうの詳しいのがいたっけなぁ。

 たまに面白そうなのは借りて読んでたけど。

 あ、そういえばあいつに借りた本、まだ返してなかったっけ……。



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