第34話:サドントラックアタック
2月4日14時30分頃、今日は近くのショッピングモールに来ている。
仕事の依頼が一段落したので杏莉さんから休みを取るように勧められたのだ。
とはいえ自宅でのんびりという気分でもなかったので杏莉さんに予定を聞いてみた。
すると買い物に出かけるとの事だったので荷物持ちを買って出たわけだ。
一応、デートと呼べる状況だろうか。
11時30分頃に到着し、一通り中を見て回る。その後は施設内にあるレストランで外食をした。久しぶりに外食をしたが、普段口にしている杏莉さんの料理のほうが美味しいと感じてしまった。
そして今は日用品や食料品を見て回っている。
今のところ荷物は皆無だがこれからが本番だろうか。
2時間後、買い物を終え家路につく。結局そこまで大量に買い込むような事はなかった。
俺が両手に中ぐらいの袋を持ち歩いている。
「すいません、せっかくの休みなのに私の用事に付き合わせてしまって」
「いいんだよ。どうせ家に居たってゲームして一日終わっちゃうし。いつも料理作ってもらってるお礼ってことでさ」
他愛のない話をしながら事務所の近くの大通りを歩き続ける。
するとその時、前方にトラックが走っているのが見えた。だが様子がおかしい。
トラックは次第にスピードを増していき俺たちのいる歩道へと進路を移す。
まずい、このままでは―
俺は目を見開き意識を集中させる。
すると周りの景色がビデオのスロー再生のようにゆっくりと流れ始める。
緊急事態に備えて考案していた意識を集中させることによって思考速度を加速させる魔法だ。
運転手は眠っている。車はこちらへ向かってくる。
なんとかしてこの状況を切り抜けなければ。
トラックが俺たちを跳ね飛ばしそうになる。
あまり人前で魔法を使いたくなかったのだがやむを得ず、強く念じてトラックの軌道を反らす。
トラックは急激に進路をかえ車道に戻り、暫く進んだところで停車した。運転手は目を覚まし驚き慌てふためいている。
平日の昼過ぎだったからか、歩道には俺たち以外には人はおらず、車の通りも少なかったおかげで大騒ぎになるような事態は回避できた。
「あ・・・」
杏莉さんが驚いて氷のように固まってしまっている。
「杏莉さん、大丈夫か?」
「あっ・・・は、はい」
俺たちは足早に事務所へと向かった。
自宅に着くなり杏莉さんはその場にペタンと腰を下ろしてしまう。
「大丈夫か?怪我とかしてないよな?」
「え・・・と・・・だいじょぶです。今になって腰が抜けてしまったみたいで」
「まぁそりゃそうなるか。危ないところだったしな」
「・・・車が、私たちを避けるみたいに動いてくれたから・・・」
「そ、そうだな。あれがなけりゃ二人ともお陀仏だったかもなぁ」
「・・・慧さんはケガしてませんか?」
「ん?俺はピンピンしてるぞ」
「・・・なんというか、全然驚いてないですね・・・」
「え?いや、なんていうかな。驚きすぎて普通になったって感じかな、はは・・・」
「・・・そうですか、とにかくお互い助かってよかったです」
そこまで話すと杏莉さんが立ち上がる。大分落ち着くことができたらしい。
よろよろと歩きながらソファに向かう。俺もその後に続きソファへ腰かける。
しばしの間静寂が流れる。流石に露骨すぎただろうか。
もしかすると杏莉さんに魔法の存在を気づかれているかもしれない。
なにかを考えるように下を向きながら杏莉さんが話し始めた。
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