裏第5話:あの人の正体を私は知りたい

慧さんは苦笑いしていた。


今回の依頼の顛末を尋ねたのだけれど、はっきりとした答えが返ってこなかった。


「いや、その、なんていうのかな、ははは・・・」


そう言ってなんとか取り繕ろうとしていたけれど、苦し紛れで言っているというのはわかってしまう。


「放火事件もどうなったんでしょうね?犯人は見つかってないみたいですけど、二日間犯行はないみたいですし」


「そ、そうだな。俺に顔を見られたと思ってなりを潜めてるのかもな」


やっぱり誤魔化してる。普段なら思っていることをはっきりと言ってくれるはずだけど、この二つの件については違うみたい。


彼と出会ってから一週間足らず、それでも確信していることがあった。


岩﨑慧という人物は人を傷つけるような嘘をつかない。少なくとも私には―


私は彼が優しい心の持ち主なのだと確信してる。


でも彼はそれを絶対に認めない気がするけれど。


私に知られたくないことがあれば嘘をついてしまえばいいのに彼はそうしない。


はっきりとした事情を言えないのには深い理由があるのだと思う。


無理に聞き出すことはしたくはなかった。でも彼の秘密を知りたいと思ってしまった。


彼はほんとに不思議な人。いつも驚かされてばかりで、いつも助けられてばかりで―


でも時々彼はとても寂しそうな顔をしている。


そのままどこかに消えてしまうのではないかと思えるぐらいに。


だから私は彼の事を知りたかった。その寂しそうな顔の理由を知りたかった。


そうすれば今度は私が彼の助けになれるかも、しれない。


いつかその時が来たら、彼に聞いてみたい。




     ・・・と。

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