第31話:敗北の救助者
開いたドアの先には切迫した様子の男が立っていた。
眼鏡をかけ小太りのまさにオタクといった外見だ。
「「「おかえりなさいませ!ご主人様ー!!」」」
「お、おお、おまえはだれだお!」
猫耳メイド達とその男が同時に声を上げる。少女たちは男の元へ駆け寄っていく。
俺はその少女達を稲妻が大気を切り裂くかのような速さで追い越し、男の背後に回り込み腕を締め上げる。
「あ、あだだだだ!いだいお~~~!」
男は情けない悲鳴を上げている。
「俺は家出をしていなくなっていた少女を探している探偵だ。お前が家出を装って誘拐していた犯人だな?」
「ち、ちがうんだお!話を聞いてほしいんだお!あばっあば!あばばばばば~!!」
電撃を流し込みながら床に男をねじ伏せる。
「妙な真似はすんなよ?少しでも怪しいそぶりを見せたらこのまま殺す」
「わ、わかったお!なにもしないからビリビリだけはやめてくれお~!」
気が付くと俺の目の前にお姫様が立っていた。
両手にはその姿には似つかわしくない物騒なものが握られている・・・包丁だ。
「・・・その人を離して」
お姫様は小さな声でそう呟く。その声は少女の見た目に反して凄まじい迫力があった。
その迫力に気押されてしまう。周りを見ると他の少女達もこちらを睨みつけている。
この部屋では俺一人が敵視されていようだ。
取り押さえている男の思考を探ってみる。
(怖いお・・怖いお・・とりあえず大人しくしていた方が吉だお・・・)
どうやら抵抗をする気はなさそうだ。
「・・・これじゃどっちが悪人だかわかんねぇなぁ・・・」
そういって男を解放してやる。するとお姫様は包丁を落として男の胸へ飛びつく。
他の少女たちも男の元へ群がっていき涙目で男に抱きついている。
「僕は大丈夫だお。みんなは大丈夫かい?」
少女達はうんうん、と頷いている。
「俺はその子たちにはなにもしてねぇ。さっきも言ったとおり俺は行方不明のこの子たちを探しに来た探偵だ。事情を説明してもらおうか」
男は少女達を落ち着かせてこちらを振り向き数回深く深呼吸をし、視線を下に逸らしながら話し始めた。
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