第19話 アレス総団長と魔弾の女神

リイエンはレインの報告の事とサーカスであるデットリングとピエロから

得た情報を電話先の男に話した。

「・・・なるほど、良く分かった。

騎士狩りの標的であるフーガ副団長とそれを助けに行った

レインの命がこのままだと危険だという事か」

「えぇ、そこで申し訳ないのですが、

どうにかそちらから腕の立つ聖騎士を

派遣していただけないでしょうか?」

「・・・サーカスか、確か奴らは優先討伐対象になっていたな。

俺が行って助けてやりたいとこだが、

ここからだとどれだけ飛ばしても2日ぐらいかかっちまうなぁ、

ん?ちょっと待っていてくれ確か・・・」

何かを思い出したように一度会話が途切れ電話から大きな笑い声が聞こえた。

「どうしました?アレス総団長」

「いやぁ悪い悪い、今ふと思い出してな。

あいつが間に合ってくれれば、

レインとフーガ副団長なら多分心配ないだろうよ!」

レオの言葉に電話越しで不思議そうな顔をしたリイエンが問いかける

「サーカスの連中2人相手に勝てる聖騎士ですか、

それほどの実力者となると第1課の方ですか?」

レオは大きく笑い勿体ぶりながら

「いやぁ、今はウチの団員じゃないんだがな元1課の

・・・魔弾の女神がちょうど任務でエイン国にいるはずだ、

それも確か南の方に行くと言ってたはずだ」

魔弾の女神と言う言葉を聞いて電話越しのリイエンが

目を見開き驚きの表情を見せた。

「魔弾の女神!?まさかアリア・ウェインですか?」

「あぁ!そうだ、アリアの事だよ。

どうだ!!あいつなら心配ないだろ?」

「えぇ、納得がいきました。

アリアさんなら確かに問題ないでしょう。

それに私や貴方や他の誰かが助けに行くより、

レイン君の師であるアリアさんが助けに行った方が

レイン君にとってもいいでしょう」

「あぁ確かにそうだな!

安心してくれアリアの方には俺からレインとフーガ副団長を

援護しサーカスの2人を仕留めるようにすぐにでも伝えておこう」

レオの快い気遣いに感謝の言葉を伝えるリイエンだが

疑問に思っていたことをレオに問う

「ありがとうございます。

ですがアリアさんも忙しい身でしょう間に合いますかね?」

リイエンの疑問に対しレオは大きく笑いながら答える

「どうだかな?でもレインが危機だと分かればあいつは

どんな場所だろうと飛んでいくだろうよ!」

電話をしているリイエンも珍しく声に出し笑う

「確かにそうですね。

では連絡の方はお願いします。

久々にお話しできてよかったです」

「あぁ俺も話せてよかった。

それに立場的にもお互い忙しい身だ気にする事はないさ、

次はお互い顔を合わせて話しが出来るといいな!」

「えぇ、そうですね。

アレス総団長も無理はせずお体にお気を付けて、では失礼します」

「あぁ」

レオはリイエンに別れを告げ電話を切る

(・・・レイン君、本当に君は運がいいのか悪いのか。

まさかアリア・ウェインが手を貸してくれるとは

これで先手を打たれた我々にも勝機が回ってきた。

サーカス・・・そちらが本気で騎士狩りを行うなら、

こちらも本気で狩りに行きます)


レオはリイエンとの電話が終わった後、

約束通りすぐにアリアと呼ばれていた女性の元に電話をかけた。


ーエイン国・エイノト山 山頂ー

「ここは見晴らしがいいな、

今日は天気も良いしなんだかいいことが起こりそうだ」

山頂に吹くそよ風に打たれ髪を抑える一人の女性は山頂から街を見下ろして微笑む

彼女こそレオとリイエンが電話で話していたアリア・ウェイン当人である。

そよ風になびく長く綺麗に輝く金色の髪を左手で抑え

透き通るような白い肌に澄んだ青い瞳で街を見下ろす

その姿はまさに女神の様であるが、

漆黒のドレスと右肩から掛けた大きな長方形のガンケースは

女神の様な姿には少しだけ不釣り合いであった。

心地よいそよ風の音をかき消すように通信機の音が鳴る

「・・・ん?連絡?誰からだろう」

右肩に掛かっているガンケースを足元に置くと

ガンケースの中から通信機を取り出し手に取って呟く

「なんだレオからか、行く前に任務だって言ったのに

今度は一体どんな無茶振りな用件を言ってくるのやら」

やれやれとした表情をしながら通信機を

インカムに繋ぎ電話に出ると慌てた様子のレオが

「アリアか!!今どこにいるんだ!?」

とアリアに問い詰めるように声を上げる

「ちょ・・・声が大きいって、何なの?いきなり」

レオはリイエンに聞いた情報と騎士狩りの事、

レインが危機だということを急ぎでアリアに伝えた

「そう、レインがサーカスの奴らとね」

「あぁ・・・と言う事なんだが白銀騎士団のリイエン副団長の頼みで、

悪いんだが2人をどうにか援護してやってはくれないか?」

レオの唐突な頼みごとに微笑みながら、

もちろんとばかりに即答で返事をする

「分かったわ、まかせて。

ここからだとレインのいるイリール街まで1時間もしないうちに着くわ。

サーカスが相手だと聞いたらレインがじっとしている訳がない、

まぁそれに可愛い弟子のためだからね」

「悪いなそれでお前の方の任務は大丈夫なのか?」

ガンケースを閉じ肩に掛け山を下ろうと準備する

「ちょうどなのかしら?私の標的もレインのいる

イリール街の方へ行ったみたいだから丁度いいわ」

「そうか、引き受けてくれてありがとな。

お前の標的も強敵だろうが気を付けてな!」

「・・・えぇ、ありがとう。

じゃぁちょっと可愛い弟子を助けに行ってくるよ」

電話を終えるとアリアはエイノト山の山頂を背にし、

大きいガンケースを背負いながら急ぎ足で山を下りレインのいる

イリール街へと脚を進める。

(レインすぐに行くから私が行くまで無理しないで、絶対死ぬんじゃないよ!)

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