ブラック吹奏楽部

月村 縁(つきむら ゆかり)

四月 《1》

ーーーーーーー"超"弱小校の宮本中学校。

唯一県大会へ出場しているのは陸上部だけ。

もとより、吹奏楽部には県大会出場なんて

夢のまた夢だった。


春は来た、私には向かずに。

ーーー今では遠い黒き時代。

彼奴あやつはもう居なくなった。死んだ


朝が来る前に私はなにか無いかと焦る。

焦りに焦り、そして無いのだ。


ーーーーーーー無。それこそ真実である。


私の名は谷原 岬。

至って普通の阿呆バカだ。

パートはサックス。アルトサックス。


セカンドだ。


セカンドは、敗者、つまり上手くないやつのやるパートだと思っている。

ソロも、メロディーも全て持っていく、ファーストは魔王のような絶対的な存在であった。


コンクールの楽譜が配られた。

あ、あ、あ、

私はセカンドでは無い。

見捨てられた訳では無いと安心を一瞬した。


ファーストも、セカンドも無い平等な楽譜。


ソロは、先輩に持ってかれた。


桜は今、散った。


後輩がピアノをやっているけど、多分来年辺りは私はステージには上がって居ない、屍となっているだろうと予想がついた。


今は唯、傍観するだけの殺人鬼になるしか、暇の潰し方が無いのだ。


タイムLINEの投稿に「さよなら、平成。」と打ち終わった。



そして、消した。


向日葵の咲く夏はまだ来ない。


当分先の話だ。

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