第81話

「それで、なんだ?」

 騎士団員は隊長と必要な人員を残し撤収し、教師たちは方々に散り発見の一報を伝えに行った。

 三人は教頭以下数名の教師と騎士団員に囲まれてお説教中。親が来るまではこの体制が崩されることはないし、親が来るとこの集団に親が参加する体制に変化するだけ。。

「どうしろって話なんです。それ」

 そして食堂で一つの机を囲み座っている。隊長と学園長、エヴァ、V、ドーリーの5人。

 二人は今までのあらすじを解説していたところだ。

「どうするべきなんでしょか?ってことを聞きたいんです」

「どうするもこうするもなぁ」

 

 ここらへんで機転が利くお役人なら「面倒な部分は見て見ぬふりをする」という対応になるが、彼は違うのでまじめに考えてしまう。


「そうだなぁ。まずあなたが修道会を襲ったこと。話が本当なら確かにこれは無罪だ。吸血鬼との協定前に行われた行為については協定後に罪には問わないことになっている。ただそれを調べるためにしばらく事情を聴くことになるだろう。それにしたって、資料があるかもわからないけど」

 隊長は指を折りながら答える。

「その2、あなたの今後の身の振りようだが、これについてはよく知らない。というより、政治的問題だ。僕の手に負える話ではないから、もっと上の判断を仰ぐことになると思う。そちらに聞いてくれ」

「その3、君があの三人を拘束、監禁したことだが、どうだろうなぁ。本人とご家族が騎士団の手にゆだねるつもりがないなら、まぁ大事にはならないと思う。これが人間同士であれば我々もそういう話で終わらせれないが、あなたは吸血鬼なんだよね?」

「えぇ」

 そう言ってエヴァは笑う。長い牙が見える。吸血鬼のトレードマーク

「美人に笑顔を向けられるのはうれしいね。ただ牙に肉が」

「あら」

 そう言って彼女は恥ずかしそうに口元を隠した。

「吸血鬼で我が国に従属の誓いを立ててない、ということならモンスターと同じ扱いになるから我々は裁判所に突き出すことってことはしない。まぁそう言っても、話が通じってトラブルを起こさなければ特に問題視されることはないから、当事者で話が付けばそれでおしまい、ということになるかな」

 人間以外の生き物でいかなる国の法の加護も受けないという事なら法律上はモンスターになる。

 ただ、モンスターと言っても言葉が話せ人並、場合によっては人以上の知能があるなら気軽に討伐ということはできない。吸血鬼の場合、ちょっとした土地トラブルなどのいざこざは吸血鬼が送られて話し合いで解決するのが基本。その枠から外れて初めて討伐ということになる。

 100年前とは違うのだ。法とあわせて道徳も多少はマシになってる。


「もう少し詳しい話、となると明日以降になる。君達二人は冒険者?」

「えぇ」

「まぁ」

「私が雇ったんです」

 と学園長。事情を説明する。

「なるほどね。まず協力感謝する。で、君たちも詳しい事情を聞きたいから明日来てくれるかな。あとあの三人も来てほしいので、付き添いとして責任者の方」

「私が行きましょう」

 冒険者二人は拒否権がない。

帝国冒険者業組合の決まりで、業務に関係することで騎士団に協力を頼まれた場合は原則冒険者は協力することになっている。

「わかりました。で、エヴァさん、とりあえず今日の所はこれでいいですが、町を出ないでください。と言っても、行く宛、ありますか?」

 そう言われたエヴァはすこし考え、さっき出てきた穴を指さす。

「ですよね。どうしましょうか?」

 そこで学園長が一言。

「我が学園の寮が空いてるはずですから、よろしければそこでどうですか?」

「今更どこでも文句言うつもりはないわ。棺桶も飽きた所よ」

「ではそういうことで、では明日騎士団の事務所、いや、ここにあつまりましょう。目立つといろいろ面倒ですし、殆どの人はここに居ますから。よろしいですか」

 それについてはこの机を囲んでいる人間全員が共通する思い。という訳で明日の昼ここにあつまることになった。


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