第38話

 魔法使いと言えば杖だ。


 これは帝国でも広く知られている典型的なイメージだが、その一方で杖を使わない魔法使いもたくさんいる。

 そもそも魔法使いが何か杖をもって魔法を唱える基本的な目的は「魔法の狙いを付ける際の補助。照準器」だ。これを使うというのは魔法発動に関する負担を減少させることであり、結果として魔法を発動させやすくなる事つながる。

 逆に言ってしまえば別に杖を持ってなくても魔法は使えるし、杖以外の物でも使いやすければなんでもいい。

 例えば商人や医者であれば指輪などのアクセサリー、学校の先生だと定規や筆などの文房具を使う人もいるし、剣や短剣、矢や弓を杖の代わりにして、近接戦闘と魔法の両方を行う冒険者や騎士団員もいる。


 その中でも杖は特殊な加工を行うことで魔法発動の負担を特に減らすなど、魔法使いにとってうれしい特典を追加していることが多いので魔法を使う専門職では珍重される。

 また学生は

「魔法使いはやっぱり杖だよな」

と購入する、もしくは周りの人間がプレゼントする。それか学校指定の割高な杖を買わされる。そういう扱い。

 Vも学生の頃一本買った(買わされた)ものがあるがさすがにほかの冒険者が持っているものと比べると安っぽいしあえて使うほどのメリットはない、かといって今からあえて専門的杖を買う必要もない。というわけでVは杖を使わないスタイル。


 ただ、Vの物欲はVの思考と違い

「一本位は人に見せて恥ずかしくない杖が欲しい。できたら僕は魔法使いだと人に自慢できるような奴を買いたい」

と常々主張している。実際の物欲の主張に負けてたまに魔法の道具に関する専門店を覗いている。

 が目の前の三バカが振り回している学校指定の量産品(これでもかなり高額の品とは専門店冷やかし歴が長いVの査定)ではなく、専門の魔法使いが使うような物になると結構な値段がするのだ。生活に余裕があるわけでもないのに見栄のために買うのは、と二の足を踏む毎日。



 このVの物欲は魔法使いにかけられた呪いみたいな物だ。

 杖を使わない魔法使いはたくさんいるが、杖を持ってない魔法使いというのはかなりすくない。

 みんな1本くらいはいい杖を持ってる。

 もったいない、傷つけたくないと使わずどっかに飾ってあるか仕舞ってあることが多いが。

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