第35話

 食堂


 相変わらず何が違うのかよくわからない日替わり定食。

「ダメかしら」

「おいしいですよ。でもまぁ、若い子女の子がこれで喜ぶとはちょっと」

「正直に言えば、昨日の日替わり定食と何が違うのかわからないんだよな」

 4日も通いこんだ珍しい客人に対して、食堂のおばちゃん達が定食の感想を聞いて、二人は正直にそう答えた。


「学食だからしかたないわ。客の取り合いなんてめったにないもの」

 偶然一緒にいた学園長はそう口をはさむ。というより学園長にまた誘われて三人で食堂に来たから、一つ外のお客様の意見でもと聞かれた形。

「それに予算もなかなか出せないのよ」

 何をするにも金が要る。しかも置いといても客が勝手に入る学食、味が落ちた訳でもなく何か問題が起きた訳でもない、生徒の流行で客足が遠のいたというだけじゃ予算はでない。

「なにかいいアイディアないかしら?」

「営業時間を伸ばすとか」

「とりあえず生徒が食堂に来る策がいいでしょうね」

 そんな適当なコメントをして、3人は席についた。


 学園長とVと比べてドーリーは早めに食事を終える。学園長とVは何か難しいこと、具体的にはモンスターの分布とダンジョンについて喋りながら食事していた。

 それに対して口を挟めないドーリーは適当に相槌をうちながら、ドーリーは本を開く。

 弓の認定試験のための本だ。講習の合間や帰宅してからなど、時間の合間をみて読み進めている。

「あら、あなた、なにか試験でも受けるの?」

 それを見た学園長の言葉。

「えぇ、弓の認定試験なんですが、紙の方で一回落ちましてね。二回目に向けての対策です」

「へぇ、器用そうなのに。前のテストはあるからしら?」

 ドーリーはなんだろう、とは思ったが本に挟んでいた先日返却された講習のテストを渡す。あえて隠すものでもないと思っているし、相手は学校の先生。見せれば何かコメントを貰えるかも知れない。

 それを一通り読んで

「見事なまでにひっかけ問題にひっかかてるわね。細かい言葉の言い回しとか、ちょっとした解釈の問題ね。これ問題文を流し読みする子がよくひっかかるのよ。一回答えを書いたら、もう一回読み直して答えを見直しなさい。で終わったらまた頭から見直すの。3回くらいやれば大丈夫だと思うわ」

 そんなアドバイスをした。


 ドーリーとしては何か反論しようかとも思ったが

「わかりました。気を付けます」

 派遣先のトップ、年上、学校の先生となると反論する言葉はない。それに人間ができている。助言は大人しく聞くという男。

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