第33話

 実際はもう少し複雑でしょうもない理由ある。

 競技会の運営も会場の下見を行ったが、基本は騎士団が使う演習場なので騎士団の都合が優先。試作ルートを作って物は試しに、と繰り返し使うのは難しい。

 また運営側もこの競技は初めてで適切なルート設定がわからない。

 そこで普段からこの演習場で訓練を行っている騎士団のメンバーが協力してルートを設定し、それを競技会に渡したという形。


 その際

「この訓練はルートを考える事が一番大事なポイントだろう」

「全くやったことがないし、学生だよ。ルート設定は難易度が高いよ」

というメンバー内部の意見の対立から

「難易度的には最も難しいルート例として提示するので、各自の実力や体力、作戦に応じてルート設定しなおすこと」

という形でルートを設定した。


 それが騎士団上層部に一旦渡され、そこから広報に行き、そして学生競技会との交渉窓口に行き、学生競技会運営の一人がそれを受け取り、競技会運営の上層部で稟議にかけられ承諾され、運営と参加者の交渉窓口の人間まで回ってきた。

 その伝言ゲームの中で「難易度的には最も難しいルートにしたから実力や体力、作戦に応じて難易度を下げるよう」が「騎士団員の中でもこの訓練を行っているメンバーが設定した推奨ルート」ということになった。

 役所仕事ではよくあることだ。


「こりゃ明日はルート設定だな」

「ですね」

 そんな事情は知らない二人だが、そんなことを言って翌日の計画を変更。


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