第32話
「なんでですか?」
「これ、沼を超えたり丘を越えたりするルートじゃないですか。騎士団でもなきゃ進みませんよ。こんなルート」
「えっと、そうなんですか」
「もしかしてお前らこの地図を読めないのか?」
ドーリーとVは少しあきれ顔。
田舎ではそもそも紙は貴重品だし、地図がなくとも目印をたてるなどして土地トラブルは対応できる。なので農業の計画を立てる村長クラスでもなければ地図を読む技能はあまり活躍しない。都会の場合シンボルとなる建物が多いし公共の交通機関も多いので、地図を見なくても大体の場所が把握できたりする。
都会であれ田舎であれ、旅行者や商人などは地図を読む技能が求められるし、見知らぬ土地の家や目的地を知るために地図を読めれば活躍するが、その場合でも「この道を進めばどこに着くか」を知る必要があるのであり「道から外れた森の中に何があるか」「うちの標高はどのくらい」などを知る必要あんまりなく、むしろあると見にくい。
なのでそう言った目的に合わせて帝国発行の精密な地図を簡易化、目的別に特化した地図が民間で安く出回っている。帝都で「地図」といった場合この地図を指すのが普通。
Vやドーリー、彼女たちが見ている地図は騎士団や建築関係者、冒険者など一部の専門家しか使わない。この地図を読める人は首都でも読める人は少数派に分類される。
つまり二人が例外というだけ。彼女たちが不勉強という訳ではない。
「こんな地図の読み方なんで学校でならいませんよ!!」
「自慢気に話されてもなぁ」
「でも実際そうなんです。私たちも運営の方からこれを渡されたんですが、何がなんだかわからなくて。ほかの参加者も大体そんな感じでしたよ」
先輩と後輩の抗議は一理あるし、それは帝都の民大半の意見でもある。
「言われてみれば、なんで競技会の運営はこんな地図を使うんだろうな?学生だとわからないだろうに。それにルートの難易度も高いしさ。確かにこれは俺もいやだよ」
二人の抗議を受けてドーリも意見を変えた。
「どうせ騎士団から借りた地図を使って図面上でルート作成したとかじゃないですか」
それに対してVはそんなことを答えた。
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