第18話

 食堂は意外と閑散としていた。食堂のおばちゃん曰く、最近は流行なのか自作の弁当や学外の店に行く生徒が多いのだそうだ。

「弁当はまぁ仕方ないわ。朝早くから起きて自分で作るのは若いのにすごいわよ。でも隣の学校に新しく学食ができてあそこに客を取られてるのよね。設備がきれいだから」

「ここも素敵なところだと思うよ」

 ドーリーはそう言って定食を受け取った。

 確かに随分と古びた内装ではある。冬場に火を入れる暖炉、すすでくすんだ天井、壁には宗教画や壁飾り、木の机に角を取ってない木の椅子、床には赤い絨毯。

 しかし全体的に調和した内装にあわせて上手に改築したおかげで採光も考えられていて、明るく居心地がいい感じを醸している。

 しかし若い女性が好むか、と言われると確かに微妙だなぁ、というのが一番端っこで席を取ったドーリーの考え。


 食堂の定食は確かにおいしかった。肉体労働者のドーリーにしてみると味付けが薄く、量もちょっと少ないかな、と感じるが好みの違いで済ませていい範疇。

 女学園というだけに女が多いのだ。とドーリーは思ったが、そもそも肉体労働者は普通ここでは飯を食わない。ドーリーが異質な存在。

「あら」

 その異質な存在に声をかける生徒が一人、二人。

「どうも、あの時はお世話になりました」

 初日、彼とVを案内してくれた金髪の女子生徒とその連れの赤毛の生徒。

 制服姿に細かな刺繍が入った二人よりも長い袋を肩にかけている。そして勉強道具か何かを詰めた鞄。

「この人が例の冒険者ですか?」

「えぇ、この度この学校で魔法についての講習を行うことになりまして。よろしく」

「へぇ、でも魔法使いって感じじゃないですね。裏稼業やってそう」

「失礼ですよ。ごめんなさい」

「良いよ。そのくらいの方が話しやすいし、実際魔法は使わないおじさんだ。つかうのは君らと同じものさ」

「え?」

「君らのそれは弓だろ?その袋はエルフが弓入れに使ってるやつだと思うが、違うかい?俺も一つ持ってるんだけど、高いから使う気がわかないんだ。破れるともったいないと思ってね」

 そう返したら二人は顔を合わせて

「ここいい?」

といってドーリーの隣に席を取る二人。さすがに失礼じゃないか?と思ったが口には出さない。

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