第17話-if-

エイリーンの亡骸を抱えたコウルは神社に向かう。


エイリーンのことをエイナールに報告しなければならない。その一心で。


神社に着くが、よく考えたらコウルはそこからの異世界の行き方を知らなかった。


「……」


コウルはただ無言で立ち尽くす。


するとその時だった。光が広がり、コウルの目の前にエイナールが現れる。


「エイナール……様」


「コウル……」


「う、うわあああっ!」


コウルは泣いた。エイナールの前で。泣き続けた。涙が枯れるまで。


「……すみません。みっともないところを」


「いえ……いいのですよ」


コウルはエイナールに、そっとエイリーンの亡骸を渡した。


「ああ、エイリーン……」


「本当にすみませんでした!」


コウルは謝る。それになんの意味がなくとも。


「いいのですよ。コウル。これも運命のひとつですから」


エイナールも涙を流しながら言った。


「運命……なんて……!」


「人の死は運命です。ただ今回がエイリーンの運命だったのです」


コウルは怒りたかった。運命の一言で片付けて欲しくないと。


だが守れなかったのは自分。そう考えると何も言えなかった。


「エイリーンはどうなるのです?」


「人間と同じです。魂となり輪廻の輪をくぐりまた生まれ変わる。それだけです」


「そうですか……」


エイナールはコウルにとてつもないことを聞いた。


「コウル、あなたは死にたいですか」


「!」


「エイリーンの後を追いたいのですか」


コウルはハハッと笑った。


「そうですね、死にたいですよ。死ねるなら。でも……」


コウルはどこからか闇の宝玉を取り出した。


「こいつの問いに答え、力を求めてしまったんです。あの場で大佐に殺されることもできたのに。そして無駄な惨殺もしてしまった。こんな僕にエイリーンを追う資格はありません」


「そうですか……。ではこれからどうするのです?」


「良ければエイナールでゆっくりしたいと思います。許されますか?」


「ええ、あなたが望むなら……」


エイナールは手をかざした。コウルを光が包む。


「これは……」


「コウル……実はエイナールが終わりに近いのです」


「な!?」


「そのためにあなたにお願いがあります。過去へ行きエイリーンとあなた自身を導いて欲しいのです」


「それは一体……」


「いずれわかります。それまでどうか生き続けてください。わかりましたね?」


「エイナール様っ!」


そう言うときにはもうコウルは消えていた。


残されたエイナールも消えていく。


「頼みましたよ。コウル……」




「う、うん? ここは一体……」


「目が覚めたようだね」


そこにいたのは長身、眼鏡をかけた男。


「マスターさん!」


「おや、私のことを知っている? 会ったことがあるかな?」


「え、だってマスターさんは、僕たちに助言をくれて……」


そのときコウルは思い出した。エイナールが言っていたことを。


『過去へ行き導いて欲しい』


(ここは……過去?)


「どうした? 大丈夫かな?」


「は、はい。」


コウルはマスターに事情を説明する。


「なるほど。そんなことが……」


「信じてくれるんですか?」


「もちろんだ。そういうのが私の分野だからね」


「はあ……」


コウルにはよくわからない。


「さて、じゃあ君の名を決めないとね」


「え、名前はコウルですけど」


マスターは首を横に振った。


「別名だよ。過去にきたということは、後々、本人と出会うことになる。その時の名だ」


「名前……」


そして一人の人物を思い浮かべた。


「リヴェナール……」


「ほう?」


「リヴェナール……リヴェルでどうです?」


「いい名前だと思うよ。リヴェル」


こうして過去に来たコウルは、リヴェナール……リヴェルとして新たな生を歩むのだった。

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