第22話
東の大陸に飛び立った二人。
その飛行道中は何事もなく、無事についた。
「西の寒い砂漠、北の氷の大地ときたから、この大陸は暖かく感じるね」
「はい」
二人の前には数多の山。
「山が多いね」
「今回はこの山の中に神具があるはずです」
二人はまず、山登りの準備をするため、ちょうど麓にあった町に寄る。
「少年少女。何しに山登りに行くんだ?」
店で山登り準備をしていると、店員が聞いてくる。
「神具を探しに」
「神具? ああ、あれかあ」
「知ってるんですか?」
「この町では割りと有名だよ。『神具を求める者は神山を訪れよ』ってね。ただ……」
「ただ?」
店員が声を潜めて言う。
「神具を探しに行って戻ってきた者はいないんだ」
二人は緊張した。
「で、でもエイリーンいるから大丈夫だよね?」
「も、もちろんです。女神見習いの力を見せます」
二人はまず宿に泊まる。そして朝一で山登りに向かった。
二人は山を越え、神山を目指す。
だが山ひとつ越えるのも当然キツい。二人は休憩を取りながら少しづつ山を越えていく。
「神山、まだ先?」
「まだまだ先ですね……」
いくら準備していても、キツいものはキツい。
二人は神山につく前に、山中で一泊する。
そして次の日。
「霧が酷いね……」
「道はわかりますが、気をつけていきましょう」
二人は霧に注意しながら、ゆっくり進む。
そしてついに神山へついた。
「ここが神山……」
神山と言うだけあって、そこは神々しい雰囲気が漂う。
二人は神山の霧の中を進む。
「おかしいですね……。この山に入ってから方向感覚がつかめません」
「えっ」
エイリーンの感覚を頼りにしていたコウルは驚く。
女神見習いのエイリーンの感覚を狂わせるとは、さすが神山と言ったところか。
「大丈夫です。たぶんこっちです」
エイリーンに合わせコウルはついていく。
「あっ」
エイリーンが突然つまずく。
「大丈夫、エイリーン?」
「は、はい……。きゃっ!」
つまずいた足元を見て、エイリーンは驚いた。人が倒れている。
「だ、大丈夫ですか?」
コウルは倒れている人に声をかける。
「う、ううっ……」
息はある。だが話せるほどではないようだ。
「エイリーン治療を」
「任せてください。ですが……」
エイリーンが指差す。よく見ると死屍累々のごとく、人が倒れている。
「これは一体……」
コウルが周りを見渡した時だった。
「誰だっ!」
コウルは一つの影に反応する。
「グゴゴ……。我の気配に気づいたか」
「モンスター!」
コウルは剣を抜いて聞いた。
「この人たちはお前の仕業なのか?」
モンスターは笑いながら言う。
「グゴゴ。ここには、神具があると聞いた人間どもがくるからな。我の食事にはもってこいの場所だ」
「何だって……!」
コウルは剣を構える。
「許さない。お前はここで倒す!」
コウルの一撃。それをモンスターはかわすと、霧に混じるように消えていく。
「待てっ!」
コウルはモンスターを追おうとするが、エイリーンが制止する。
「ダメです、コウル! 迂闊に追ったら霧で迷ってしまいます!」
「あ、ああ。そうだね。ありがーー」
いつの間にか、エイリーンの後ろにモンスターの影が。
「エイリーン、伏せてっ!」
コウルは魔力弾を飛ばす。だがモンスターは再び霧に紛れて消える。
「なるほど。この霧に紛れて、今までの人たちを襲っていたのか」
確信する。しかしコウルも、モンスターの気配を追えない。
「くっ……」
「こうなったらわたしが……!」
エイリーンが治療をやめ立ち上がり、魔力を集中する。
「やっ!」
魔力の波動が周りに衝撃を与える。
「グゴッ!?」
モンスターが怯み姿を現す。
「今だっ!」
コウルは出現したモンスターに剣の一撃を叩き込んだ。
「グガアアアッ!」
モンスターが倒れる。
「ふう……」
コウルが剣を下ろした時だった。
「コウル、後ろです!」
「えっーーぐっ!」
モンスターの一撃をコウルは喰らう。
「なっ……今、倒したはずなのに?」
「グゴゴ。我の弟を倒すとは予想外だったぞ」
「弟!?」
そして思い返す。確かに、モンスターが消えてから反対側に回るにしては、やけに早かった。
「そうか……。最初から二体で襲っていたのか」
「でもそれなら、先ほどの魔力の波動を受けているはずですが」
「グゴゴ。ちょうど貴様らの言う神具の洞窟が近くにあるのよ。我はそこに隠れていたのよ」
二人が反応する。
「グゴゴ、だが貴様らは神具にたどり着けん。我がここで……うん?」
「神具があるなら……」
「はい。ここで止まるわけにはいきません」
二人の息が合う。コウルは一瞬で女神聖剣を呼び寄せていた。
「はっ!」
聖剣を構えた神速の一撃。モンスターはいつの間にか斬られていた。
「バ、バカな……」
モンスターが倒れる。周りは今度こそ何もいない。
「じゃあ、治療を続けますね」
「うん」
エイリーンが皆を治療し終わる頃には辺りが暗くなっていた。
「あんたら、助かったよ。ありがとう」
回復した人たちはお礼を言いながら去っていく。
「神具を見にきたんじゃないのかな?」
「モンスターに襲われて懲りたのでは?」
二人は辺りを探る。するとモンスターの言ったとおり、すぐに神具は見つかった。
「これが……」
「はい。神具の盾です」
二人はおそるおそる手に取る。特に罠などは作動しない。声もしない。
「特に試練とかはないね?」
「この山自体が試練のようなものだったのかもしれません」
二人はほっとして、神具の盾をしまう。
「ここから帰るのが大変だね……」
「飛んでいきますか?」
エイリーンが翼を展開する。
「いやいや、いつもエイリーンに頼って飛んでたらいけないよ。ただでさえ、大陸を渡るときは頼ってるのに」
「そうですか?」
翼をしまうと、二人はゆっくりと山を越え、降りていく。
麓の村に戻ると店員が呼んでくる
「少年少女、お疲れさん。他の奴らを助けたそうじゃないか」
「ええ、まあ」
コウルはうなずくと、店員は近づき小声で聞いた。
「……で、神具はあったのかい?」
二人はわかりやすく笑うと。
「秘密です」
と言って、村を去るのだった。
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