一章
風の気まぐれ
ヒューヒューと風が吹いた。
やがて、風はある山里にたどり着いた。
どこにでもある冬の集落だと思って、そのまま通り過ぎようとしたとき。
風はふと、つむじ風に耳を澄ませた。静かに耳を傾けてみれば、ゴオーと鳴く
どこからするのだろうか?
風は思わず、辺りを見回した。
細い糸を
しばらくすると。
風はある
ここからか、と小さく呟く。
その邸は、ふもとの集落から少し離れた山の中腹にあった。規模からして領主か豪族の館だろう、質素ながらも立派な門構えである。
風はするすると、迷うことなく邸の敷地に足を踏み入れた。まるで何かに引き寄せられるように、まっすぐと邸の中へ入っていく。
すると。
この上なく美しい
――――
風は思わず舌を巻いた。王宮の
それは、
もっと聞きたい。
そう思った風は、奏者がいるであろう
やがて、目当ての場所に到着した風は、
そのまま、そっと室の中の様子をうかがう。
室には、
対して、
こうして、風はひとしきり室の中の様子を見ると、室の窓から少しだけ離れた。
風は、室のすぐ外にあった木の枝にとまる。そこからは、室の窓がよく見えた。
ちょうど良い。
そう思った風は、しばらくそこに留まることにした。
珍しく、彼の
それに、少しだけの寄り道くらい、許してもらえるだろう。風はあるひとを待たせているが、その待ちびとにも、久しぶりに良い土産話を持っていけそうだから。
そうして風は、数少ない聴衆のひとりとなり、少年の奏でる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます