漫才『コンビ名』アッチ・コッチ

 


アッチ「どうも、アッチで~す!」


コッチ「どうも、コッチで~す!」


二人「二人合わせて、アッチ・コッチで~す! よろしくお願いしま~す!」


アッチ「こっちがチビのアッチで~す!」


コッチ「こっちがノッポのコッチで~す!」


アッチ「……ん? おい、ちょっと待て」


コッチ「どないしたん?」


アッチ「どないもこないもあるかい。そっちはええわい、こっちのコッチやから。俺はこっちのアッチやで。わかりにくいやないかい」


コッチ「なんでやねん。こっちのアッチ、あっちのコッチ。わかりやすいやないかい」


アッチ「そんなもん、わかりにくいわ」


コッチ「なんでやねん」


アッチ「コッチ(こっち)があっち(アッチ)ですって言ったら、こっちがアッチなんか、コッチがあっちなんか、わからんやないかい」


コッチ「……あ、ほんまや。俺もいま、こんがらがったわ」


アッチ「そやろ? 聴いてるほうは多かれ少なかれ、最低一人はこんがらがるで」


コッチ「そうやな。きょうみたいに客が一人のときもあるからな。最低一人やな」


アッチ「そやろ? コッチがノッポやでって、お前のこと言ったら、こっちにおる俺がノッポになるやないかい」


コッチ「あ、ほんまや」


アッチ「チビの俺が自分のこと言うときに、アッチがチビですって言ったら、あっちにおるお前がチビになるやん」


コッチ「あ、ほんまや。こっちにコッチの俺がおるとは限らへんしな」


アッチ「そやろ? あっちにコッチのお前がおるときもあるやんか?」


コッチ「……そやな」


アッチ「こっちにアッチの俺がおるときもあるやないかい」


コッチ「そやな」


アッチ「そんなときにやで、あっちがコッチです。とか、こっちがアッチです。なんて言うてみぃ、こんがらがるで」


コッチ「ほんまや」


アッチ「いつもコッチがこっちにいてくれたらええけど、そう言うわけにはいかへんやろ?」


コッチ「そうやな。あつちに行くこともあるやろうしな 」


アッチ「そうやろ? そんなときにやで、こっちがアッチです。やら、あっちがコッチです。なんて言うてみぃ。こんがらがるやんけ」


コッチ「そうやな。アッチがあっちにばっかりいるとは限らへんし、コッチがこっちばっかりにおるとも限らへんしな」


アッチ「そうやろ? アッチがこっちにおって、コッチがあっちにおるケースもあるやんけ」


コッチ「ほんまや」


アッチ「アッチもコッチもあっちにおることも想定されるやんけ」


コッチ「確かにな。あり得るな」


アッチ「その逆に、アッチもコッチもこっちにおるちゅう偶然もあるやろう?」


コッチ「そうやな。今みたいに一緒におる場合もあるな」


アッチ「そうやろ? そんなときに、あっちがコッチで、こっちがアッチです。なんて紹介されても、こっちがアッチなのかコッチなのか、あっちがアッチなのかコッチなのか、ほんまにこんがらがるで 」


コッチ「ほんまに。確かにそうやな」


アッチ「ここに、ドッチが入ってみぃ。アッチ、コッチ、ドッチのこんがらがるトリオやで」


コッチ「トリオまでいったら、こんがらがり過ぎやわ。せめてコンビぐらいまでにしてくれな」


アッチ「その上に、ソッチまで入ってみぃ。アッチ、コッチ、ドッチ? ソッチ。って会話が成り立つやんけ」


コッチ「あ、ほんまや。会話が成り立つな。アッチ・コッチ、どっち? そっち。やもんな」


アッチ「そうやろ? ほんま、ややこしいで。でな、相談なんやけど」


コッチ「なんや?」


アッチ「コンビ名、ちゃうのにせえへんか?」


コッチ「ええけど、何にするん?」


アッチ「考えたんやけどな、『イケメン&ウドの大木』にせえへんか?」


コッチ「ええでぇ。俺のほうはパッと見て、そのとおりやから構わへんけど、お前のネーミングは、客が納得せんで」


アッチ「なんでやねん?」


コッチ「チビのお前に、ウドの大木は合わへんやろ」


アッチ「……? もう、ええわ」

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