17話「洞窟」

カルス村を出て、サント王国を目指す。その途中、村で聞いた通りの洞窟がある。ここを避けて王国へ行くのは無理そうなので、中へ入る。


 あの瘴気まみれのとこと違い、割と明るい。というのも、冒険者か王国の兵士かの誰かが作ったのか、あちこちに松明が設置されている。ここの生き物たちは火が怖いのか、松明を倒そうとした痕跡はない。明るい暗いなど今の俺には関係無いが。


 しばらく進むと狼っぽい獣族が群れをなしてやってくる。「鑑定」でステータスを見る。と、一匹の平均レベルは5。それが7体か匹いる。召喚されたばかりのクラスメイト1人では敵わないレベルだな。

 固有技能は特に珍しいものは無いな、なら軽くひねるか。そう思い、戦闘態勢に入る。


 「脳のリミッター70%解除」


 この程度の奴らなら、100%もいらない。地面を蹴り、接近した狼どもに足刀蹴りを放つ。蹴りをまともにくらった狼は声もなく落ち、蹴りの衝撃波で周りの狼も吹き飛んで壁に叩きつけられる。残りの狼たちは低く唸りながら俺から逃げていった。俺に立ち向かってくる獣や魔物は基本こうやって相手するが、逃げてくれるなら放っとこう。いちいち殺すのめんどいし。


 その後、巨大ヤスデや蝙蝠、ネズミなど様々な種の生物が出てきて、いずれも適当に倒したり無視したりした。

 時間的に、今洞窟内をうろついている人って俺しかいないみたいだ。洞窟入った時も、その後しばらく進んでも全く人と遭遇しない。完全に貸し切り気分になっていた。


 だから、松明に照らされた先に人骨が転がっていたことに軽く驚いた。さっきから人がいないのはそういうことなのか。

 その先を進むと、死体がいくつか転がっていた。中には強そうな防具を着た男の死体もあり、レベル20以上はありそうな奴らの死体をちらほら見かけた。

 どれも鋭利な刃物で抉られたような傷跡が見られる。モンストールが紛れているのか?と推測するが、犯人は全く分からない。いずれにせよレベル30以上の魔物かモンストールがうろついていそうだ。


 さらに奥へ進むと、先程までの明るさが無くなった。壁を見ると、松明が消されたような痕が見られた。故意に消したっぽいな。相手は暗闇でも目が利くタイプか。

 「夜目」を発動して、周りを注意深く見て進んでいると、同時に発動していた「気配感知」に何かが引っかかった。30m以内だ、近いぞ。

 相手に敢えて聞こえるよう足音を立てながら、気配がする方へ。徐々に姿があらわになる。



 「っ...!...誰!?」


 と女の声がする。件の殺人犯は女だったのか。そしてようやく姿がはっきりと見えた。

 肩に届くくらいの長さの赤い髪をし、身に着けているものは薄汚れた布服の女は、振り返りこちらを見据える。

 そして彼女の足元には―洞窟に生息する生物たちの死体がたくさん転がっている。どれもレベル10はありそうな奴らだ。だが、俺は彼女の口元に注目していた。

 彼女の口周りは血で真っ赤だった。さらに彼女の両手には肉片らしきものがあった。この格好と状況を見るからにして...


 「まさか、ここの生物を食ってたのか...!?」

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