〈審判の刻〉

 阿鼻叫喚! 清吉を中心に混沌の渦が巨大になっていく!


「ミナソウニグぅ――っ!」

「にばあああああ――っ!」


もはや、返り血まみれの狂った先覚者達とゾンビの違いなど無く なっていた。


――ドン! と、一発の銃声が鳴り響きゾンビだか先覚者が吹き飛んだ!


「観念なさい! 清吉!」 杏音はすぐさま次の火薬を詰め込み清吉に狙いを定めた!


銃声とともに清吉は死体を盾にするとぐちょぐちょになったそれを放り投げ笑いながら言った。


「ウキャキャ! 若い女の想肉だぞクマよ!」 清吉が言うとクマゾンビは杏音に向かって行った!


格さんが素早くクマゾンビに飛び込み強烈なパンチを与えた! が、びくともしない。


「やはり他のゾンビとは訳が違うでござるな……」


「みんな!」 正三達がゾンビを倒しながら駆け寄ってきた。


「ご隠居! 無事で何よりっス!」


「危うく肉になってしまう所だったのだ。皆の者! 先覚者共をこらしめるのだ!」


「ミナ! ソウニク!」 暴走する先覚者達が襲って来た!


トウイチが即座に正三の横を通り過ぎ先覚者達を斬り込んでいく!


賊ゾンビの群れもやってくると助さんは青竜刀で首をはねていった!


――「杏音殿、ゾンビと賊はあの二人に任せて、拙者と共にクマを倒すでござる!」 格さんが言うと杏音は頷く。


格さんは走るとクマゾンビに攻撃を仕掛けた! クマゾンビが勢いよく振りかぶると格さんは後ろに回りこみ羽交い絞めにした!


「今でござる! 杏音殿!」 格さんが叫ぶと杏音がクマゾンビに向かって行った!


格さんはクマゾンビを羽交い絞めにしたまま背中を大きく反らす!


「ゾヴ! ニグゥぅぅぅ」


杏音はクマゾンビの口元に銃口を向け超至近距離でぶっぱなした!


銃声が鳴り響くとクマゾンビの顔は跡形も無く吹き飛んでいた。地面にズドンと倒れこむ体。


「ぬおお! 耳がキーンとするでござる……」 格さんはそう言いながらガッツポーズをした。


「大方片付いたみてえだな。残るはアイツだけか」 トウイチが言うと正三が清吉の元へと歩き出した。


「ハハハ…… 私を殺すか。喰うも殺すも同じ事! お前とオレは一緒さあ!」 清吉は後ずさりしながら言う。


「お前は…… お前は…… 人ではない!」 ダガーが清吉に突き刺さる。

倒れこんだ清吉の傍らにゾンビが噛み付いた……


清吉は口から血を吐きながら弱々しく赤目へと変化していった。


――ズン!


トウイチの仕込刀が清吉の頭を貫通する。


「成長したな正三」


「体が勝手に動いただけさ……」


二人の間に木枯らしが吹く。



――道案内のやつれた二人。絵を描く少年。そしてやつれた村人達が集まって来た。

七人はそれらの片付けを手伝い支度を整える。



「あ、トウイチさんはかまが破れてますよ。縫いますね」 杏音が言った。


「ちっ! いいんだよこのままで! やめろ!」 杏音はお構いなしに嫌がるトウイチの袴を強引に縫い始めた。


「おっ、正三殿! ライバル出現でござるな」


「うらやましい…… ってそんな格さん!」


「のだのだのだ! 余の下着も破れておるぞ! お嬢ちゃん!」 ご隠居が衣類を脱ぎ始めるのを阻止する銀子。


「ハハハ。そろそろ出るっスよ」 助さんが言うと絵を描く少年が寄って来た。


「あんちゃん! これあげる!」 少年は一枚の絵を正三に手渡した。


「うわ! これ僕達!?」 その絵は凛々しく立つ姿の七人の絵であった。


「オイラ岩次郎! 将来有名な絵師になるんだ!」


「ありがとう! 岩次郎。さあ! みんな出発だ!」


 やつれた村人達は力強い目つきで大きく手を振り七人を見送る。

生臭いにおいとともに散っていった先覚者の山村を後にした。


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