物研のあきら先輩
まるろー
その1
たしか俺が小5の時だったかな?中一のあきくんっていう女みたいなやつに数学を教えてもらってた。髪も長いし背も低いし声も高いし、ほんとに女みたいだった。でも絡み方だけは男っぽくて優しくて、お兄ちゃんみたいな存在だった。彼の父は物理学者だったそうだ。その影響で数学が得意だそうだ。あきくんは教えるのも上手くて小5が終わる頃には二次方程式が解けるようになっていた。ただ二次方程式を教えてもらっている途中言われた言葉にとてもショックを受け6年の二学期まで俺は不登校になってしまった。彼は「中一が終わったら親の都合で僕も一緒に海外に住まないといけないんだ。」と、俺に言った。
高校の入学式の朝、そんなことを思い出していた。それ以降の中学校生活とかは特に面白みもなく、あまり記憶に残ってない。覚えているとすればここに入るために勉強したことくらいかな?ここの高校の物理学研究部は有名でもしかしたらあきくんがいるかもと思ったからだ。
式とホームルームが終わったあとは物理学研究部、略して物研の部室へと直行した。____________
「我が物研へようこそ!!私のことはあきら先輩とでも呼んでくれたまえ!」
部室のドアに手をかけた瞬間これだ。俺が開けるよりも早くドアが勝手に開いてこんなことを言われたら誰だってびっくりするだろう。
「やあ、君は入部希望生かい?どっちにしろとりあえず入った入った。」
僕は動揺しながらも言われるがままに部室に入った。どうやらこの先輩は典型的な可愛いと言われる声や顔をしているにも関わらず変人のようだ。と、この時点で決めつけてしまった。
「君、コーヒーは飲めるかい?」
と聞かれたので、砂糖があれば飲めると伝えた。とりあえず落ち着いて周りを観察してみるとこの部は物理実験室を部室として使っているらしいことがわかった。
しばらく部室を見回していたら先輩が戻ってきた。そして俺の前には黒い液体が入ったビーカーと白い粉末が入ったシャーレが置かれていた。どうやらさっきの決めつけは正しいようだ。
「どうぞ飲んでください....」
「あのー、先輩。色々ツッコミたいのですが、、、」
「どうかしましたか....?」
ちょっと情報が混乱してるからまとめよう。うん、落ち着こう俺。まず怪しい液体と粉末。そして何故か口調と声量が大幅に変わった先輩。2つだけでもうキャパオーバーなんですが、、、、、
「まず、この液体と粉はなんなんですか、、、?」
「なにって、コーヒーと砂糖ですよ...?」
「なんでビーカーとシャーレに?」
「この教室、食器がないので化学部から借りてるんです...」
「はぁ、、、ではもうひとついいですか?」
「なんでしょう...?」
「なぜそんなに口調が変わってるんですか?」
「なぜってこれが普段の私ですけど...?」
「じゃあ最初のあれはなんだったんですか?びっくりしたじゃないですか!?」
「あー、私張り切りすぎてキャラ崩壊してたみたいですね....」
キャラ崩壊って...なんなんだこの先輩。
「とりあえず今日は入部届け出して帰っちゃって大丈夫です...」
そう言われたので素直に入部届けを書いて帰ることにした。
「また明日、放課後に部室に来てくださいね...」
明日からの高校生活はどうなる事やら。
そしてやっぱりあきくんはいなくて、いたのはあきら先輩。
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