初対面


ガタガタとモービルが雪の中を進み始める。


「険しいですね…マコさんは毎日こんな所でしごとしてるんですか?」


「そうね、確かに寒くて厳しい環境だけど、景色も綺麗だし、もふもふしたフレンズもかわいいし、あんまり苦は無いかなぁ」


針葉樹に雪がどっさり積もっている。

太陽が厚い雲の上に隠されている。


「…シンヤ?何してんだ?」


「うん?あ、いや別に…」


シンヤは座席の下に何かを隠していた。


「コンタクト落としちゃってさ」


「ふーん…危ないから座っとけよ、後で俺も探してやるから…」


「いや、もう見つかったんだ…」


シンヤは何か俺に隠し事をしているんじゃないか?

昨日の夜だって一人でゴソゴソしていた。


「そろそろ着くよー!」


マコさんが手袋をはめる。

息が白く濁り、マコさんの澄んだ瞳に明かりが灯っていく。




ザクザクと雪を踏み締めていくと、そこにはまたログハウスがあった。

丁度フルルちゃんの前の家のような所だった。


「ここがフレンズの住処ね…と言っても元宿舎ね、暖房システムがまだ通ってるから、フレンズたちが勝手に使ってるんだけど」


フレンズの住処といっても至って綺麗だった。

というかホコリひとつない。


「はぇ〜綺麗だなぁ…俺の部屋とは大違いだぜ」


「お前のは汚すぎだ」


「こっちこっち!こっちに二人とも待たせてるから早く来てーっ!」


マコさんが既に廊下の向こう側に行って手を振っている。


相変わらずの無邪気さだ。

シンヤとマサキが走っていって、後から僕が追いかける。


「ここに居るのか…!」


「フフフッ、さあどうぞ!」


マサキがドアを開けようとする。


まてよ…見たことあるな…


突然ドアが勢いよく開き、マサキは思い切りドアにキスした。


「Hey!もう2時間も待たされてるわ!まだなのかしら?!」


「ハクトウワシ、今まさにあなたの前で倒れてるのがあなたの担当の子よ…」


「いっ…てぇ…」


マサキは目をぐるぐるにしている。

シンヤはそのまま中に入っていった。


「お邪魔しまーす…」


「そこ、靴脱ぎなさい」


突然横から声がかかる。

脇にゴミ箱を抱えた真っ白なフレンズがいた。


「あ、はい」


「雪を外で払いなさい!汚れてるじゃないの!ああもうこんなに…」


なにこいつめんどくさ…


「ホッキョクギツネちゃん、この人があなたの担当の子ね!」


「…よろしく…」


清潔感漂うというか清潔感しかないというか清潔感の塊というか…

潔癖感を感じる。なんだそれ。


「Nice to meet you!」


「な、ないすとぅーみーちゅー…」


マサキ…俺の時より激しく打ち付けたな…

病院、行くか?ついてくぞ?


ハクトウワシがマサキのことを助け起こした。


「じゃあ、一通り自己紹介がすんだら早速仕事してもらおうかな!」




「朝ご飯も食べて健康…っと」


紙にひたすらフレンズの健康状態を記録していく。

体内サンドスター濃度の計測などなど。

ハクトウワシもホッキョクギツネも中々の美少女で、街ですれ違ったら目が持ってかれそうなくらいの美人ではある。


だがハクトウワシはシンヤの方に目を持ってかれていた。


「ハクトウワシ?どうした?」


「なんでもないわ…あの人と友達なのね?」


「ああ、なんでだ?」


「別に…」


ハクトウワシの目は、ワシのくせに鳶色に染まっていて、白髪と合わさって外国人のように見える。

こんな寒さの中で2人ともスカートとは…


一方ホッキョクギツネの方は…


「朝ごは「食べました」


「…気分のわ「ありません」


ホッキョクギツネは正座して、シンヤの方に向き直っている。が、サバサバというか何というか…

シンヤ、心を乱されるの巻。


「…まぁ、フレンズと初対面だったらこんなもんですよね…」


「うーん、今年の子たちは去年よりクセが強いみたいだからねー…」


ネットで調べたがどうやらホッキョク(以下略)の方もハクトウワシの方もクセが強い。

ホッキョクギツネは軽度()の潔癖性、ハクトウワシは…ジャスティス狂。

これはもうどこそこのノブが出てきてもおかしくない。


「それじゃああとは自由行動で!」


相変わらずの雑務(雑)


「そ、それじゃあ…何したい…?」


「とりあえず掃き掃除雑巾がけ煤払いゴミ捨て」


雑務…


「ゆ、雪山登りに行くとか…どう?」


「…私飛べるのよね」


何だこの物凄い空気はオワチ。


これは波乱の幕開けか…

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