第21話 ダメ男
雅男は完全に働かなくなった。家でゴロゴロしているか、たまに出かけたと思っても、パチンコか競馬。そして、その帰りには必ずどこかに飲みに行って、酔っぱらって帰ってきた。
「どうしたの。どうしちゃったの。雅男」
私はそんな家でゴロゴロと無為に過ごす雅男に迫った。
「どうしちゃったのよ」
「うるせぇ」
「前は、自分の仕事が誇りだって言ってたじゃない」
「うるせぇ」
「弱い人たちを、自分と同じように困っている人たちを助けるんだって、それが俺の夢なんだって言ってたじゃない」
「うるせぇー」
雅男が私をキッと鋭く睨んだ。
「また、叩くの。いいわ。叩きなさいよ」
私は負けていなかった。
「酔わなきゃ叩けないの」
私は更に雅男に迫った。
「ううっ」
雅男は呻りながら私を睨みつけていたが、ふいに目を反らすと近くの壁を思いっきり叩いて家から出て行ってしまった。
「・・・」
また飲みに行くのだろう。そして、酔って帰って来てまた私を殴るのだ。
「まっ、女が面倒見だすと、男は働かなくなるな」
マコ姐さんは遠い目をして言った。いつものビルの屋上から見える遠い空の向こうは、オレンジ色の夕暮れから、厚い真っ黒なカーテンのような夕闇にへと変わっていた。
「はあ・・」
「あたしのかつての男たちはみんなそうだった」
「みんな・・、ですか」
「ああ、誰一人として例外はなかったな」
「・・・」
「男なんてもんは本質的にみんなダメ男なんだよ」
「・・・」
「そうできてんだ」
「はあ・・」
「男はどうしようもないね。まっ、それの面倒見ちまう女はもっとどうしようもないんだけどな」
そう言って、遠い目をしたまま自嘲気味にくすりとマコ姐さんは笑った。
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