ゼロから始めるあの町の作り方(上巻 下巻)付録にスヤスヤクリスタル
「さあさ、久しぶりに屋外からスタートの異世界テレパシーショッピング、ご紹介しますのはナナ=ビンテージと」
「クーヘンだよー!」
「さてクーヘン君、今回の商品は過去最大、なんと町の作り方を販売したいと思います」
「町? 領主になるってこと?」
「いえいえ、あなただけの町を作るための手引書、ゼロから始めるあの町の作り方上下巻セットのご紹介です!」
「ほーん。それで、こんなとこ来たの?」
「はい実はそうなんです。後ろ、見えますでしょうか。中々大きな町が見えますね」
「町? ただのガラクタの束じゃないの?」
「いやいや、中々立派な町だよ? 人口はおおよそ六千人、王都と穀倉地帯とを結ぶ要所で、歴史は浅いものの出入りの多い活気溢れる場所なんですよ?」
「うっそだぁ。ただあり合わせのもの束ねただけでシナジーもなければグッドスタッフ名乗れるほどのカードパワーもない、小学生が持ってるカード全部入れた指定最低枚数無意味に大幅オーバーな紙束じゃないか」
「んーー、何言ってるか所々わからないけど、おおよそ言いたいことはわかると思います。それでこの程度の町なのか、そうみなさまも同じ考えではないでしょうか」
「だってそうじゃん。どこ行ったってラーメン屋ないし、カードショップないし、コンサートだってどこも洋楽やらないしさ。娯楽なんか奴隷いじめとエロい店ばっかで、しかもブスばっか。あいつら生きてる価値ないよ」
「はい、異世界に来ての不便、わかります。田舎でのスローライフや冒険途中ならまだしも、一番栄えてるという王都ですらこんなものかとがっかりなさった経験は誰しもあると思います。ですがそれでも町の材料にはなります! あれを使って一週間で新たな町を作って見せます!」
「そんな、できるの?」
「できます! やります! その説明のため、ちょっとあそこまで行ってみましょう。エイ!」
ジャンプ!
チャクチ!
「はい町まで来ました」
「ドクターのチート便利」
「クーヘン君、人のチートをバラすのはマナー違反だよ」
「ごめんなさい」
ビ!
「それはさておき、ご覧下さい、わかりますでしょうか、町の境界線にそってぐるりと、魔方陣が描かれ囲っていますね」
「ほんとだ。随分と複雑な呪文みたいだね」
「はい、上巻は町の側の作り方を中心に書かれてまして、ちょっと開いてみますが、見てください。大きな字にわかりやすい絵! これを一ページ目からその通りに実行していけば町ができるのです!」
「ほんとー?」
「ほんとです! 証拠の映像をどうぞ!」
「あ、ヤスダ君だ!」
「はいかなり高速で回してますが、日の出日の入りで時間経過はわかると思います。あぁやって本の通りに魔方陣を描いていますね」
「あ、サボってる」
「サボってもいいんです! この本、本気で急げば一日で終わる内容です! それを無理せずやるための一週間なのです」
「あ、終わったみたい。で帰って、あ、僕だ」
「はい! それで現在に至るわけですね。完成した魔方陣がこちら! あと一本の線で完成です。ではクーヘン君」
「わかったよ。ここ?」
ピカー!
ギャアアアアアアアアアアア!!!
イタイ! イタイ! タスケテ! タスケテ!
オガアサアアアアアアアアアアン!!!
「魔方陣、完成です」
「すっごい光ってるよ!」
「魔力の奔流を感じていただけるでしょうか。膨大な魔力、これ全部元の町の住民から、彼らを生贄に捧げてなのです。だからご利用の際には一切魔力の消費がないんです」
「そうなの? 人通り全然ないし、静かだったから人生きてるとは思わなかったよ」
「それは生贄をおとなしくさせてたから。その秘密はこれ、スヤスヤクリスタルの効果なんです。これを一つを井戸や水源に入れておけば約二十時間後には飲んだ生物全員が麻痺に、それから一週間は足腰たちません! そうこう言っている間に完成です!」
「うっわ! この町見たことある!」
「そうなんです! この壁! 丸く囲った城壁に中を通る川! あの有名な転生者もあの著名な転移者も、みなさまこの本をご利用なんです!」
「なんだってー! じゃあなんでその有名人にコマーシャルやらせないのさー!」
「それは、なんというか、ギャラというか、大人の事情というか、とにかく! この本であのゴミ町が素敵町に大変身です! ですがここまで多がかるなものでは心配、という方もおられると思います。なので上巻最後に付録として百人程度でできるいつもの屋敷魔方陣で練習してから、もできます」
「あ、こっちも見たことある!」
「さぁ町ができたら次は人です。そのための下巻! 町民特化! 最近ジェネリックになりましたココロナクナールのレシピを始め! 町民の捕獲のコツや洗脳のアドバイス、イベント制作のテンプレート集、更にはオリジナリティを出すためのちょい足しアレンジも! すぐに使えるアドバイスが満載です! これ一冊だけでも国一つ落とせます!」
「ねぇねぇラーメンは?」
「ちゃんとあります! 単純にラーメンブームを起こしたり、あるいは物流や生産をラーメン極振りにして特化町にしたり、あなたの思うがまま!」
「すごいや! こんなすごいのにヤスダ君にすらできるなんて! だったら誰でもできちゃうじゃんか!」
「どうですか建物の上巻、町民の下巻、スヤスヤクリスタルも付録でついてお値段」「テメェこら社長! あれどういうこったおら!」
「あ、ヤスダ君」
「何にも聞いてなかったぞおい! 水飲みに川行ってなかったらあんなかだったぞおい!」
「あーー死ねばよかたのに」
「クーヘンてめ!」
「ご注文は今すぐ!」
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