セマンティックメモリーデストロイヤー オールインパッケージセット
3! 2! 1! 0!
ドゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「はい! どうですか大迫力のロケット打ち上げ! 本日の異世界テレパシーショッピング! 一味違うとナナ=ビンテージがお約束します!」
「え、ヤスダ君左遷の挨拶からじゃないの?」
「クーヘン君、彼は卒業と、下取り係に栄転と、そういう風に言うように約束したよね?」
「結局は厄介払いじゃんか。それより今回の商品って人工衛星でしょ? 今更世界地図欲しがる人なんていないだろうし、通信衛星とか、うちの客層って話し相手もいないでしょ?」
「いえいえ、これはもっと上等なものなのです。具体的な内容は〜見たほうがわかりやすいと思うので、こちらで実演してみましょう」
「わーい実演大好き! 自裁これ人気だよね」
「まぁヤスダ君のアイディアなんだけど。さぁやってまいりましたこちら、いわゆる賢者様です」
「初め増して賢者様! ほら、跪いて命乞いして!」
「…………君らは」
「お聞きになれましたでしょうか! こちらの賢者様! なんと! チート能力もないしになんと言葉を発せられるのです! 何という高知能! さぁこの賢者様に! こちら! 今回の商品の人工衛星衛星『セマンティックメモリーデストロイヤー』そのミニチュアバージョンを、こう向けて、発射!」
バビバビバビバビバビバビ!!!
「あああああミニチュアがぁあああ溶けちゃったあああああ!!!」
「はいこちらの人工衛星、高出力電波を発車するため、一度きり、使い捨てとなっております。ですが効果は抜群なんですよ」
「…………賢者平気そうだよ?」
「はい肉体的機能はそのままです。ですが頭に、大きくダメージを与えてるんですねぇ。それを証明するためにこちらで、ほい!」
ボオオオオオオオオオオオ!!!
「うぎゃああああああああ!!!」
「見てください! 言葉を理解するほどの知能を持ちながら、火炎放射受けるや火だるまになって無様に転げ回ってます!」
「本当だぁ! 頭良いならもっと良い対処法考えつきそうなのに! これじゃあただの獣じゃんか! なんで? どうして?」
「それがこのセマンティックメモリーデストロイヤーの力なのです! こちらから発射される電波は脳の記憶を司る部分、それも意味記憶のみを一瞬にして破壊します!」
「意味記憶?」
「文字や単語、計算式などの文字通り意味の記憶です。対して個人的な思い出などをエピソード記憶と呼びます。そしてエピソード記憶はそのままなのです」
「……どゆこと?」
「例えば料理! パンを焼いたり鍋で煮込んだりという行動、これまでやったことは覚えているので再現はできるのですが、なぜ小麦を練るのか、なぜ野菜の皮を剥くのかという原理の方を忘れてしまうのです!」
「…………どゆこと?」
「つまり! これを受けた人間はこれまでの生活をなんとなく惰性で続けることはできても! 何でそうするのか理屈がすっぽり抜け落ちるのです! それは文字! 呪文! さらにはスキルにまで影響を与え! 再現できても発展できない知性の暗黒時代が到来するのです!」
「わーそれって!」
「そうです! つまり! これ一つ打ち上げれれば! 誰でも簡単に! 生活レベルをさほど下げないままで! 知識チートが可能となるのです!」
「そんなぁ! そんなことってできるんですか!」
「できます! コーポレーションだからできました! それを可能にしたこのセマンティックメモリーデストロイヤーなのです!」
「すごいや!」
「この人工衛星は専用発射台より打ち上げられ衛星軌道上に、そこで太陽光をたっぷり浴びて四十時間、これで準備完了です! あとは全自動で砲身を地表へ。先程実演でお見せした電磁波を地表全てに余すことなく照射! 波長が強いので地下帝国のも逃げ場なしです!」
「でも使い捨てなんでしょ?」
「一度で十分なのですよクーヘン君! 地球サイズで約七週半、一週間と半日の時間は照射が続きますので確実に地上から知性というものを抹消できるのです!」
「一斉掃除だね!」
「あとはもう好き放題です! 文字を教え! 算数を教え! 残された書物を独占し! 好きなように文明を作り上げられるのです!」
「これなら大学をエロゲーで追い出された僕にでも賢者さまーってチヤホヤされちゃうぞ!」
「そう、明日の賢者はあなたです! ですが今回、人工衛星および発射用ロケット、その発射台、それら全ての搬入、組み立て、操作のスタッフ、全てを揃えたパッケージセットです。大きなお買い物になると思われます。ですのでまずは無料広告からご注文下さい」
「明日の賢者は君だよ! みんなから賢いって褒められようよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます