悪道

街灯り

第1話  欲求不満

 午後4時半。集合時間より1時間半も早く着いてしまった私は、どこかへ行く気も起きないため、ひたすら待って時間を潰すことにした。ただでさえ暑いのに、大宮駅は人がごった返していて、余計に蒸していた。私の前を通った会社員から、強いタバコの匂いがして、思わず息を止めた。柱に寄りかかり、長めのタオルを風呂あがりのおやじのように首に巻いて周りを見渡すと、自分が立っているこの辺は、どうやら待ち合わせ場所としてよく使われるらしく、ほとんどの人が誰かを待っているようだった。

 会社の同僚や、友達ち合流する人が半分以上なのにもかかわらず、自然とカップルに目がいってしまう。ある1組のカップルが合流して、楽しそうにこの場を去っていったかと思えば、スマホに没頭している女子高生のもとへ、その子の彼氏だと思われる人が近づいて、デコピンをした。

 私は、あぁ、まったく。幸せそうで何よりだ。と思いつつ、深いため息をつき、音沙汰のない自分のスマホに目を落とす。少なからず、小学生時代はモテていた。昔のままだったら、今、左右共に男子がいてもおかしくはなかった。今や、彼氏とも、ましてや男友達と呼べる人すらいない。欲求不満だ、情けない。と思い、我に返る。

 自分は今、女友達を待っているのに、勝手に男をずっと待っている女になったような気になって、もしかしたら女友達すら来ないんじゃないかと、少女漫画のヒロイン的感情に溺れる。こうなったのは、早く来すぎた自分が原因だと分かっていた。友達は時刻通りに来て、目当ての夕食をとりにレストランへ向かった。

 

 あの日から約2ヶ月。私はまた同じ場所で、ある人を待っている。今日は違う。私は男を待っている。男友達でも、彼氏でもない男を。

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