第3話出会ってすぐ意気投合、勢いと乗りで探偵屋始める ③

 約束の日、前回の2次会で使った喫茶店で待ち合わせをした3人。皆楽しみにしていた為全員時間より早く集まった。飲み物を注文すると、最初に雪と香が花に店舗を貸してもらうお礼を言う。叔父さん達も喜んでいたし気にしないで大丈夫だと花は答えた。


 花は、本屋で買った探偵の為の本と店舗の写真を持ってきていた。付箋も貼り見やすく分かりやすくした。

 雪はネットで調べた、探偵事務所を始める為に必要そうな手続きを纏めた書類を持ってきた。

 香は事務所で使えそうな、家にある不要なソファや食器等に調味料をリストアップしたものを、写真付きで印刷して持ってきている。

 皆自分の持ってきた者と相手の持ってきたものを見比べて思う。私達、見事に役割分担が出来てる、なかなかいいチームじゃない。


 まず、香が話し始めた。

「まずは事務所を開くわけだから、一応代表者を決めないといけないと思うの。何かあった時の連絡先っていう感じで。でも私達会うのまだ2回目じゃない。だからいっそ3人でやるのはどうしようかしら。責任と報酬ももちろん3人とも同じになるし、共同経営って形ね。」

「賛成です。探偵も3人でやるんだし責任と報酬も同じ方が良いと思います。」

「私も同じです。後決めるのは、光熱費等の経費と何日間事務所を開くかとかよね。これは決めるのに時間がかかりそうだし、先に必要な手続きとかの話をしてから決めた方が良いと思う。

 後これから一緒にやるんだし、敬語とか気にしないでね。さん付けしなくて大丈夫だよ。」

「そうね、私もそれ言おうと思ってたの。」

「私もさん付けはいらないですけど、私は付けますよ。一番年下ですし。」

「分かった、花のやりやすいようにしてね。」

「はい。」

話が終わると3人は、探偵事務所を開くにあたり必要な手続きにが載っている雪の持ってきた資料を見る。それを参考にしてスマホで検索や確認をすると、やるべきリストと担当を決める。

 ついでに店舗の写真や間口を見て、香の持ってきてくれた家具のリストから必要そうなものをピックアップしていく。


 大まかな事を決め終わると、花が光熱費に関して話し出す。

「実は光熱費などの諸経費は、事務所の掃除代と管理代って事でいらないと叔父さん達から言われています。」

「それは駄目よ。お金の事はきちんとしておかないと、親しい中でも人間関係がおかしくなることがあるから。せっかくこれから一緒に始めて行くんだし、皆で割り勘にした方が良いわ。」

「香の言う通りだと思うな。でも、探偵依頼も来なくて諸経費を払ったら叔父様達にとっては気がかりになってしまうのかも。それなら、依頼が来たら依頼費の何%かを賃料として納めるのはどうかな。但し、0円か数百円になる気がするんだよね。そこが気になるよね。」

 雪の意見に、香も同意しながら唸っている。

「確かに、依頼料が沢山入るなら良いけれど。難しいわね。

依頼をどうやって受け取るかっていうのも問題よね。私達殆ど事務所にはいないと思うのよ。」

「依頼はホームページを作って、メールで送ってもらうのはどうでしょう。

 依頼がある場合はホームページを教えておけばメールが来るでしょうし、それなら事務所に毎日いなくても大丈夫です。店舗の扉にポスターみたいなものをはっておくとか。」

「ホームページなら私作れるよ。無料のサーバーで良さそうなのを使おっか。難しい機能はいらないだろうし、シンプルに探偵業の紹介とか注意事項なんかとメールでお仕事依頼受け付けます、っていう感じで良いかな。

 後で作ったら、アドレスを送るから確認してね。事務所に行くのは最低月1回と、依頼や相談事がある時に集合って感じでどうかな。」

「そうね、依頼も日数がかかるものは引き受けるのは厳しいかもしれないわ。いろいろ相談してから受けるかどうか決めたいわよね。依頼が来たらまずは相談するのはどうかな。依頼は、3人全員の賛成で受けるって事で良いかしら。」

「はい。後事務所で食料とか必要な備品を買う時も、皆で相談してからにしましょう。」

「賛成。私は後は費用の払い方だけかな。2人はどう思う。」

「私も同じよ。んー、どういうやり方が良いかしら。」

「私も賛成です。費用は本当に良いんですよ。

 だって、光熱費だってそんなにかかる訳じゃないですし、管理する人を雇ったらとっても高いんですから。もし気になるなら、雪さんが言った依頼料からいくらか渡すのが良いと思います。」

 しばらく悩んでいる感じだった雪と香。香が決断した。

「そうね、それじゃそうさせて貰おうかしら。

ありがとうございます、花さん。叔父様達にもお礼を伝えてください。

 それじゃあ、依頼料の10%でどうかしら。そうしたら残り90%を3人で割れてちょうど良いわ。」

「うん、それが良いと思う。ありがとうございます、花さん。私からのお礼も叔父さん達に伝えてください。」


 決定して嬉しそうに頷いている花。もう1つ大事な事を2人に伝える。

「はい、叔父に伝えておきます。後看板を店舗がある地域の自治体の会長夫婦が作ってくれるそうです。板にペンキで書くだけだって言ってましたけれど。」

「なんだか、嬉しいわね。【探偵屋】で良いかしら。」

「良いんじゃない、【探偵屋】良い響きだと思うよ。こういうのは分かりやすいのが一番。」

「じゃ【探偵屋】で送りますね。英語やオシャレな名前にしても浮いちゃいそうですよね。」

 そう言うと、花は【探偵屋】でお願いしますと書いてメールを送った。皆でそのメールを見ながら、盛り上がる。依頼が来るかどうかは重要ではないようだ、探偵の事務所を開ける事に、夢中になって話している3人。


 その後は、会議の内容を書き留めたものを纏めて、ホームページに載せる文言や料金等決めていく。

「料金って一番難しくない、想像もつかないんだけど。」

「他の所の探偵事務所のホームページの値段を参考にするしかないわね。

経験豊富な探偵よりも少し安めで、期限も決めて依頼を受けるようにするのが良いかも。」

「じゃ料金は応相談にしておきましょうか。店舗の近所の人か知り合いが依頼者でしょうし、話し合いで大丈夫じゃない。やっていくうちに大体決まっていくと思う」

「了解。後、私達の事は何も載せないから安心してね。知り合いや近所の人がターゲットだから自分達の個人情報を載せなくていいっていうのは良いよね。」

「本当にそう。今は職場紹介とかでホームページに従業員の顔と名前を載せる所が結構あるわよね。怖くないのかな。私の会社はプライバシーの配慮で載せてないけどね。」

 嫌そうに言う香に頷く2人。


 最後は、叔父さん達への【探偵屋】の説明内容を決める。叔父さん達に会うのは、雪がホームページを作成して皆が内容を検討して修正後完成してからにした。

 ホームページも見てほしいからね。という雪に2人が同意したのだ。

 大体決まったので、皆で花の持ってきてくれた本を読む。ちょっとした初心者の探偵講座が始まり、熱心に3人で話し合いながらも楽しく過ごして3人とも帰っていった。

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