第11話 オレの隣の美少女に本をオススメする
日曜。気づくとオレは東公園にて待ち合わせをしていた。
前日は眠れなくて、なぜだか『異世オレハーレム』の良かった点をノートに書き出していたが、途中ですぐになくなって今度は逆に悪い点を書き出したら止まらなくなり朝になってしまった。正直、眠い。
完全に寝ぼけ眼になっている目をこすりながらオレはあくびをして、華流院さんを待つ。
というか本当に来るんだろうか? あの華流院さんが。
「お待たせ。待った?」
そう思った瞬間、ふと後ろから声がかかる。振り返るとそこには噴水の水を背景に立つ真っ白な天使がいた。
純白のワンピース。長い髪の毛を後ろでポニーテールに結び、華奢な腕に、それとは真逆にムチリとした程よい肉付きのふとももを見せ、大きな胸にリボンをつけた可愛らしくも色気があり、綺麗な美少女。
学園一のアイドルの異名は伊達ではないとオレに知らしめる華流院怜奈さんがそこに立っていた。
「え、えっと、誠一君。大丈夫? 目、真っ赤だけど?」
「……あ、ああ。昨日遅くまで『異世オレハーレム』読んでたから。うん、大丈夫大丈夫」
「へぇ、そうなの。ふふっ、もしかして誠一君って本当は『異世オレハーレム』好きなんじゃないの?」
「いや、嫌いです」
笑顔で問いかける華流院さんにオレはハッキリと答えた。
◇ ◇ ◇
「それで今日はどこに行くんですか?」
「言ってなかった。誠一君のオススメの小説を教えてよ」
そう言って華流院さんと歩くことしばらく、彼女は大手の書店にオレを連れて入り、早速小説のコーナーに向かい、オレに尋ねる。
「この中で誠一君がオススメするならどの本?」
「そうですねぇ……」
色々あるが、果たして華流院さんはどんな小説が好みなんだろうか?
小説と言っても種類はいっぱいあるわけでいわゆるライトノベルと呼ばれるものではジャンルはたくさんある。
オレの好みだけを言っていいものか。それとも華流院さんが好きそうなのをそれらしく勧めるべきなのか。果たしてどちらが正解なのだろう?
そんな風にオレが悩んでいると華流院さんが何かに気づいたように付け足す。
「あ、じゃあ。なろう系で誠一君がオススメするなら、どれ?」
「へ? なろう系?」
急なその単語に戸惑う。
な、なぜなろう系? いや、華流院さん前からなろう系に興味あるような発言していたしな……。
しかし、それはそれで逆にオススメに困る。
なろう系といっても、こっちも種類がたくさんある。
一般的になろう系と言えば主人公が異世界転生して、なんか都合のいいチートもらって、無双してハーレムして、そんな中学生の妄想と思われているが、そのジャンルもたくさんあるわけだ。
そもそも異世界転生も転移と転生とでは始まり方が違うわけで、主人公一人から複数、チートあり、なし、最初から最強に成り上がり形式、追放からの復讐、あるいはスローライフ。料理系に悪役令嬢ものと上げていけばキリがない。
それになろう系はよくクソと言われているし、オレもクソな作品もあるとは思うが、中には面白いものはちゃんとある。
それこそ見ずに批判せず、そうしたジャンルを一通り見てから批判するべし。
それを考えるならば、華流院さんにはなろう系の入門を進めるべきか?
だが、この場合の入門編とはなんだ。良作を知るにはクソを知ることも必要であり、クソを見たあとだからこそ「あ、これって良作だ」って分かることもある。
ならば逆説的に最初にクソな小説を見せることで、その後に良作ななろう小説をオススメし「なろうもクソばっかりじゃないんだ」と教えることが出来る。
となれば、オレの答えは一つ。
「じゃあ、最初はやっぱり『異世オレハーレム』こと『異世界転生したオレのハーレムが日本に侵略しに来た』だな。なんならオレん家に布教用があるから、それをあげようか?」
ドヤ顔で一巻を手に宣言するオレを見て、なぜだか華流院さんが微妙な笑みを浮かべる。
「ええと、誠一君って、やっぱり『異世オレハーレム』のこと好きなんじゃないの?」
「いえ、クソだと思ってます」
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